SSブログ

ロード・ジム [19世紀イギリス文学]

 「ロード・ジム」 コンラッド作 鈴木健三訳 (講談社文芸文庫)


 マライの奥地で、勇気と実直さによって伝説的存在となった、ジムの悲劇です。
 「闇の奥」と同じく、マーロウが語ります。コンラッドの最高作と言われています。

 しかし、長い間この名作が、講談社文芸文庫でしか読めませんでした。
 しかも、この本の鈴木訳は古くて、非常に分かりにくいです。
 何度読んでも理解できない文が、十ページに一箇所ぐらいの割合で出てきます。

 それなのに、300ページほどのこの本が、一冊1470円!
 数年前に、上下2冊買ったとき、レジで「2940円です」と言われ、耳を疑いました。
 買う前に、ちゃんと値段を確かめなくてはいけませんね。

 この本は、私の本棚には並べていません。
 紹介しておきながら、こんな風に言うのはなんですが、オススメできません。


ロード・ジム(上) (講談社文芸文庫)

ロード・ジム(上) (講談社文芸文庫)

  • 作者: ジョゼフ・コンラッド
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/09/08
  • メディア: 文庫



 ところがつい最近、河出書房新社の「世界文学全集」から、新訳が出たのです。
 「ロード・ジム」の新訳をもって、全30巻が堂々完結。おめでとうございます。

 この全集は、池澤夏樹氏の編集に偏りがあることは、以前に書きました。
 http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-25
 しかし、このような隠れた名作の新訳を出してくれた所に、大きな意義があります。

 どのような訳になっているか気になります。
 数年のうちに、河出文庫から出されることを、期待しています。


ロード・ジム (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

ロード・ジム (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

  • 作者: ジョゼフ・コンラッド
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/03/11
  • メディア: 単行本



 「ロード・ジム」とは、「ジム王」というような意味でしょうか。
 ジムは、かつてある不運な事故によって、船員の資格を剥奪されました。

 その暗い過去を絶つために、各国を放浪しながら、マライの奥地へたどりつきます。
 ここで生まれ変わったジムは、現地人から尊敬され、伝説的な存在となります。
 しかし、平和な村に、悪漢ブラウンがやってきて…

 特に、下巻でブラウンが登場するあたりからは、とても良いです。
 男だったらどう行動するべきかを、考えさせられます。
 これは、「本物の男」の物語です。

 しかし、コンラッドの原作は、例によって非常に分かりにくいです。
 しかも、文芸文庫版の鈴木訳が、更に分かりにくくしています。

 たとえば、上巻P154「ジョーオーオージ、おおい、跳ぶんだ!」という言葉。
 これは船員の言葉ですが、この言葉をジムが聞いてマーロウに伝え、
 マーロウが語り手の作者に伝え、作者が我々読者に伝えているのです。

 ばかばかしいほど複雑な構造によって、読者を無意味に疲れさせます。
 この部分を、世界文学全集の柴田訳は、どのように処理しているでしょうか。

 解説には、マーロウの語り口の分かりにくさを、次のように説明しています。
 マーロウが、ジムに同情しながらも、苛立っているからだ、と。
 この、ジムに対する相反する気持ちが、分かりにくさの原因のひとつ。

 同情と苛立ち。なるほど。
 私たち読者も、ジムに対して同じように、分かりにくい感情を持ちます。
 このもやもや感が、文章にも影響しているのでしょうか。

 さいごに。

 数日前の、東京消防庁の会見には、とても感動しました。
 わが身の危険をかえりみず、作業に当たる人たちを、尊敬します。

 ほかにも、自衛隊やFukushima50の決死隊など、命がけの人たちがいます。 
 ぜひマスコミで、彼らのことをもっと伝えていただきたい。
 Fukushima50については、http://ja.wikipedia.org/wiki/Fukushima_50で。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。