ロード・ジム [19世紀イギリス文学]
「ロード・ジム」 コンラッド作 鈴木健三訳 (講談社文芸文庫)
マライの奥地で、勇気と実直さによって伝説的存在となった、ジムの悲劇です。
「闇の奥」と同じく、マーロウが語ります。コンラッドの最高作と言われています。
しかし、長い間この名作が、講談社文芸文庫でしか読めませんでした。
しかも、この本の鈴木訳は古くて、非常に分かりにくいです。
何度読んでも理解できない文が、十ページに一箇所ぐらいの割合で出てきます。
それなのに、300ページほどのこの本が、一冊1470円!
数年前に、上下2冊買ったとき、レジで「2940円です」と言われ、耳を疑いました。
買う前に、ちゃんと値段を確かめなくてはいけませんね。
この本は、私の本棚には並べていません。
紹介しておきながら、こんな風に言うのはなんですが、オススメできません。
ところがつい最近、河出書房新社の「世界文学全集」から、新訳が出たのです。
「ロード・ジム」の新訳をもって、全30巻が堂々完結。おめでとうございます。
この全集は、池澤夏樹氏の編集に偏りがあることは、以前に書きました。
http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-25
しかし、このような隠れた名作の新訳を出してくれた所に、大きな意義があります。
どのような訳になっているか気になります。
数年のうちに、河出文庫から出されることを、期待しています。
「ロード・ジム」とは、「ジム王」というような意味でしょうか。
ジムは、かつてある不運な事故によって、船員の資格を剥奪されました。
その暗い過去を絶つために、各国を放浪しながら、マライの奥地へたどりつきます。
ここで生まれ変わったジムは、現地人から尊敬され、伝説的な存在となります。
しかし、平和な村に、悪漢ブラウンがやってきて…
特に、下巻でブラウンが登場するあたりからは、とても良いです。
男だったらどう行動するべきかを、考えさせられます。
これは、「本物の男」の物語です。
しかし、コンラッドの原作は、例によって非常に分かりにくいです。
しかも、文芸文庫版の鈴木訳が、更に分かりにくくしています。
たとえば、上巻P154「ジョーオーオージ、おおい、跳ぶんだ!」という言葉。
これは船員の言葉ですが、この言葉をジムが聞いてマーロウに伝え、
マーロウが語り手の作者に伝え、作者が我々読者に伝えているのです。
ばかばかしいほど複雑な構造によって、読者を無意味に疲れさせます。
この部分を、世界文学全集の柴田訳は、どのように処理しているでしょうか。
解説には、マーロウの語り口の分かりにくさを、次のように説明しています。
マーロウが、ジムに同情しながらも、苛立っているからだ、と。
この、ジムに対する相反する気持ちが、分かりにくさの原因のひとつ。
同情と苛立ち。なるほど。
私たち読者も、ジムに対して同じように、分かりにくい感情を持ちます。
このもやもや感が、文章にも影響しているのでしょうか。
さいごに。
数日前の、東京消防庁の会見には、とても感動しました。
わが身の危険をかえりみず、作業に当たる人たちを、尊敬します。
ほかにも、自衛隊やFukushima50の決死隊など、命がけの人たちがいます。
ぜひマスコミで、彼らのことをもっと伝えていただきたい。
Fukushima50については、http://ja.wikipedia.org/wiki/Fukushima_50で。
マライの奥地で、勇気と実直さによって伝説的存在となった、ジムの悲劇です。
「闇の奥」と同じく、マーロウが語ります。コンラッドの最高作と言われています。
しかし、長い間この名作が、講談社文芸文庫でしか読めませんでした。
しかも、この本の鈴木訳は古くて、非常に分かりにくいです。
何度読んでも理解できない文が、十ページに一箇所ぐらいの割合で出てきます。
それなのに、300ページほどのこの本が、一冊1470円!
数年前に、上下2冊買ったとき、レジで「2940円です」と言われ、耳を疑いました。
買う前に、ちゃんと値段を確かめなくてはいけませんね。
この本は、私の本棚には並べていません。
紹介しておきながら、こんな風に言うのはなんですが、オススメできません。
ところがつい最近、河出書房新社の「世界文学全集」から、新訳が出たのです。
「ロード・ジム」の新訳をもって、全30巻が堂々完結。おめでとうございます。
この全集は、池澤夏樹氏の編集に偏りがあることは、以前に書きました。
http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-25
しかし、このような隠れた名作の新訳を出してくれた所に、大きな意義があります。
どのような訳になっているか気になります。
数年のうちに、河出文庫から出されることを、期待しています。
「ロード・ジム」とは、「ジム王」というような意味でしょうか。
ジムは、かつてある不運な事故によって、船員の資格を剥奪されました。
その暗い過去を絶つために、各国を放浪しながら、マライの奥地へたどりつきます。
ここで生まれ変わったジムは、現地人から尊敬され、伝説的な存在となります。
しかし、平和な村に、悪漢ブラウンがやってきて…
特に、下巻でブラウンが登場するあたりからは、とても良いです。
男だったらどう行動するべきかを、考えさせられます。
これは、「本物の男」の物語です。
しかし、コンラッドの原作は、例によって非常に分かりにくいです。
しかも、文芸文庫版の鈴木訳が、更に分かりにくくしています。
たとえば、上巻P154「ジョーオーオージ、おおい、跳ぶんだ!」という言葉。
これは船員の言葉ですが、この言葉をジムが聞いてマーロウに伝え、
マーロウが語り手の作者に伝え、作者が我々読者に伝えているのです。
ばかばかしいほど複雑な構造によって、読者を無意味に疲れさせます。
この部分を、世界文学全集の柴田訳は、どのように処理しているでしょうか。
解説には、マーロウの語り口の分かりにくさを、次のように説明しています。
マーロウが、ジムに同情しながらも、苛立っているからだ、と。
この、ジムに対する相反する気持ちが、分かりにくさの原因のひとつ。
同情と苛立ち。なるほど。
私たち読者も、ジムに対して同じように、分かりにくい感情を持ちます。
このもやもや感が、文章にも影響しているのでしょうか。
さいごに。
数日前の、東京消防庁の会見には、とても感動しました。
わが身の危険をかえりみず、作業に当たる人たちを、尊敬します。
ほかにも、自衛隊やFukushima50の決死隊など、命がけの人たちがいます。
ぜひマスコミで、彼らのことをもっと伝えていただきたい。
Fukushima50については、http://ja.wikipedia.org/wiki/Fukushima_50で。
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