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ブッデンブローク家の人びと2 [20世紀ドイツ文学]

 「ブッデンブローク家の人びと」 トーマス・マン作 望月市恵訳 (岩波文庫)


 前回の続きです。「ブッデンブローク家の人びと」は、岩波文庫から出ています。
 ブッデンブローク商会を経営する一族の没落を、四代にわたって描いた大作です。


ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1969/09/16
  • メディア: 文庫



 私にとってこの作品は、「男の物語」でした。
 つまり、ブッデンブローク商会を継いだ、ジャンとトーマスの父子の物語でした。

 偉大な父から商会を継いだジャンは、常に冷静に誠実に、商会を運営します。
 革命があっても、娘の不幸な結婚があっても、淡々と商会の維持に努めました。
 やがて、過労で倒れました。

 そのあとを継いだトーマスは、商会に新風を送り、自分流の運営をします。
 戦争があっても、取引先の倒産があっても、商会の建て直しに努めました。
 やがて、心労で倒れました。

 この二人は、それぞれのやり方で、商会の経営に人生を捧げました。
 しかし、時代の流れには逆らえません。一族の没落は宿命のようでした。

 ジャンとトーマスは、その宿命を感じていたのではないかと思います。
 翳りゆく運命を知りながら、それでも全力で、自分の使命を果たしていた。

 そこに、「滅びの美」を感じました。
 そして、この滅び行く男たちに、私はとても共感したのです。

 トーマスがどこかで言っていた言葉が、印象に残っています。
 次のような言葉です。

 人は上り坂を登っているつもりでも、実はすでに下り坂にさしかかっている。
 星は、最も明るく輝いているときに、すでにもう消えかかっている。

 本作品執筆時、トーマス・マンはショーペンハウアーに惹かれていたそうです。
 ショーペンハウアーの悲観主義が、上記の言葉に表れている気がします。

 この長大な物語は、トーマスの死で終わってもよかった。
 ラストの第11部で、一族が終焉を迎える様子は、読んでいてつらくてつらくて。

 余談ですが、ある意味、ジャンとトーマス以上に存在感があるのがトーニです。
 このおてんば娘が出てくると、その場が生き生きとします。

 父ジャンの勧める結婚相手に、公然と「ノー」と言うトーニ。
 世間体を気にする兄トーマスに、思いのたけをぶつけるトーニ。

 しかしそのトーニが、人生の重大事では、男の論理に縛られてしまう。
 1回目の結婚も、2回目の結婚も。さらに娘の結婚のときも。

 もしトーニが、アンナ・カレーニナのように、家を飛び出していたら?
 一族から離れて、勝手気ままに生きたとしたら?

 そうしたら、この小説は、「女の物語」になっていたでしょう。
 そういうトーニの冒険を、読んでみたい気もします。

 さて、北杜夫は、この作品に刺激されて、大作「楡家の人びと」を書きました。
 ユーモアがあって、面白い小説だそうです。読んでみたいです。


楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57)

楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫



 トーマス・マンの「ベニスに死す」「ファウスト博士」も読んでおきたい。


トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09/27
  • メディア: 文庫



ファウスト博士 上 (岩波文庫 赤 434-4)

ファウスト博士 上 (岩波文庫 赤 434-4)

  • 作者: トーマス・マン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/06/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ビリーブ)

 娘の小学校の「今月の歌」は、「ビリーブ」。
 我々が小学校の時(40年前)には、無かった歌です。

 娘が歌ってくれましたが、とても良い歌ですね。
 最近は毎日、お風呂で娘と一緒に歌っています。



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