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シルヴェストル・ボナールの罪 [19世紀フランス文学]

 「シルヴェストル・ボナールの罪」 A・フランス作 伊吹武彦訳 (岩波文庫)


 本に囲まれてひっそりと暮らす老学者の日常が、日記体でつづられていく物語です。
 アナトール・フランス37歳の時の小説で、彼の出世作です。

 岩波文庫から出ています。A・フランスの作品中、現在唯一文庫で出ている本です。
 訳はだいぶ古いようですが、読みやすくて、しみじみとした味わいのある文章です。


シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

  • 作者: アナトール フランス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975/07/16
  • メディア: 文庫



 主人公は、学士院会員のシルベストル・ボナール老人です。
 パリの本に囲まれた部屋で、中世の修道院の研究を続けています。

 1861年12月、54歳のとき、研究資料としてたいへん貴重な写本が発見されました。
 8年後、62歳のボナールは、写本を求めてイタリアへ旅立ちましたが・・・

 写本はどこへ行ったのか? 競売で値をつり上げるのは誰か?
 そして、ナポリで出会ったトレポフ夫人とは、いったい誰なのか?

 ・・・私は正直に言って、最初はこの小説に、たいして期待していませんでした。
 しかし、読んでみるととても面白くて美しい作品で、想像以上に良かったです。

 この小説は二部構成です。第一部は、自分にとって大切な本にまつわる物語です。
 第二部は、自分がかつて愛した女性の孫娘にまつわる物語です。

 どちらも心温まるエピソードが、穏やかで品のある口調で語られています。
 この小説の魅力は、愛すべき主人公老ボナールの、語り口と人間性にあります。

 ところでタイトルの「罪」とは何か? 最後の最後にようやく分かりますが・・・
 それが罪と呼べるものなのかどうか・・・

 さて、他の登場人物では、第二部に登場するプレフェール女史が傑作でした。
 悪い女ですが、滑稽で笑えます。ボナールとは違う意味で、愛すべき人物でした。

 この作品の随所から、そこはかとない哀愁が漂ってきました。
 例えば、部屋の本をみんな読んだのかと尋ねられたボナールは、こう答えます。

 「悲しいことにみんな読みました。だからこそ何も知らないのです。
 何しろどの本もほかの本と矛盾しないものは一冊もない、」(P185)

 アナトール・フランスの小説集が、白水社から単行本で出ています。
 新訳ではありませんが、いろんな作品があるので、文庫化を期待したいです。


アナトール・フランス小説集〈1〉シルヴェストル・ボナールの罪

アナトール・フランス小説集〈1〉シルヴェストル・ボナールの罪

  • 作者: アナトール フランス
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 単行本



 さいごに。(あった! シュガーラスク味)

 甘い味の「うまい棒」があることを、妻と娘は長い間信じてくれませんでした。
 しかし3人で100円ショップに行った時、シュガーラスク味を見つけました。

 「ほらね。パパの言ったとおりだろ!」と言ったら、
 「もっとマシなことで自慢してよ。」と、2人に言われてしまいました。


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