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新トロイア物語 [日本の現代文学]

 「新トロイア物語」 阿刀田高 (講談社文庫)

 (今回もネタバレが多めです)

 アイネイアスを中心に、トロイア戦争から新トロイア建国までを描く歴史物語です。
 古代の叙事詩に、作者独自の味付けを施しています。吉川栄治文学賞受賞作です。

 講談社文庫から出ていましたが品切れです。アマゾンで、現在なんと1円。
 700ページ近くあるぶ厚い本で、税込みで1000円ほどでした。


新トロイア物語 (講談社文庫)

新トロイア物語 (講談社文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 文庫



 トロイアの王家につながるアイネイアスは、6歳の時に神託を授けられました。
 「その母は美と愛の女神。類なき勇者となり、西国に赴いて一城の主となる。」

 たくましく育ったアイネイアスは、パリス王子とともにスパルティに来ました。
 そこで、パリスによるヘレネ誘拐に立ち合ってしまいました。

 この事件をきっかけに、アガメムノン率いるギリシア軍が攻め寄せて・・・
 トロイアは、ヘクトルが中心となって守るが・・・

 ホメロスの「イリアス」、クイントゥスの「トロイア戦記」、ヴェルギリウスの
 「アイネイアス」など、多くの古代の叙事詩をつなぎ合わせて語られていきます。

 それだけでなく、時に作者独自の解釈が入り、作者独自の味付けがなされます。
 例えば、あの有名な「トロイの木馬」は、兵士を忍ばせる作戦ではなく・・・

 ほかにも、アイネイアスの本当の母親は誰かとか、ヘクトルがヘレネに優しかっ
 た理由だとかが、作品の中に盛り込まれていて、読んでいて楽しいです。

 ところで、主人公がアイネイアスであることに、私は最初戸惑いました。
 彼は、アキレウスやヘクトルの陰に隠れて、地味な印象しかない武将なので。

 そして後半、アイネイアス西進の物語が続くことに、私はまた戸惑いました。
 この作品は、トロイア戦争だけを、取り扱っていると思っていたので。

 しかし違いました。「新トロイア」とは、西方で再建したトロイア国のことです。
 この小説は、アイネイアスが「新トロイア」を建国するまでの物語なのです。

 だから、前半はアイネイアスの成長と、トロイアの陥落までが描かれていて、
 後半はアイネイアスが西に進み、新トロイアを建国するまでが描かれています。

 実に壮大な物語です。古代史マニアにはたまらない作品です。
 「阿刀田高『新トロイア物語』を読む」という解説書(未読)も出ています。


阿刀田高『新トロイア物語』を読む (トロイア叢書)

阿刀田高『新トロイア物語』を読む (トロイア叢書)

  • 作者: 岡 三郎
  • 出版社/メーカー: 国文社
  • 発売日: 2011/11
  • メディア: 単行本



 同じ阿刀田高による作品では、「獅子王アレクサンドロス」が気になります。
 アレクサンドロス大王の物語です。ただしこちらも品切れ。復刊を期待。


獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)

獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫



 ローマ詩人ヴェルギリウスの「アイネイアス」は、絶対読みたいのですが・・・
 文庫では出ていない。復刊の気配が無い。古本は高い。解決策を模索中です。


アエネーイス (上) (岩波文庫)

アエネーイス (上) (岩波文庫)

  • 作者: ウェルギリウス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 文庫



 さいごに。(木登り)

 娘は、ひとつ上の仲の良い従妹と会うと、たちまち木登りを始めました。
 普段は木登りなんてしません。やはり子供は、子供同士で遊ぶのが一番ですね。

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