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消しゴム [20世紀フランス文学]

 「消しゴム」 ロブ=グリエ作 中条省平訳 (光文社古典新訳文庫)


 殺人事件を解決するためにやってきた若き捜査官の、24時間を描いた物語です。
 新しい小説(ヌーヴォー・ロマン)の文学運動は、この作品から始まりました。

 長い間入手困難の作品でしたが、2013年に古典新訳文庫から出ました。
 1378円しますが、その価値はあります。また、解説がすばらしいです。


消しゴム (光文社古典新訳文庫)

消しゴム (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: アラン ロブ=グリエ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫



 特別捜査官ヴァラスは、殺人事件の解決のため、この街にやって来ました。
 殺されたのはデュポンという大学教授で、大富豪の中年男性です。

 しかし、肝心の死体は誰かによって、どこかへ持ち去られていました。
 おまけに、他殺なのか自殺なのかも、よくわかりません。

 ヴァラスは自分で推理を組み立て、街を歩き回って糸口を探しますが・・・
 曖昧な証言や偶然の出来事に翻弄され、やがて皮肉な結末に導かれ・・・

 私はこの作品を、探偵小説だと思っていました。
 だから、「序幕」を読んだ時点で仰天しました。

 始まってすぐ、主人公が動き出さないうちに、犯人が明かされているのです。
 犯人はガリナティ。ああ、終幕まであと400ページ近くあるというのに!

 特別捜査官として派遣されてきたのは、ヴァラスという若い男です。
 ヴァラスが町をさまよう姿は、人生をさまよう姿に似ています。

 街のあちこちを巡りながら、時間も前へ後へと行き来します。
 街の細部ははっきり見えるのに、全体像は靄がかかったように曖昧です。

 事件の全体像も、なかなかはっきり見えてきません。
 歩き回れば歩き回るほど、迷路に迷い込んでいくような感じがします。

 そして驚いたことに、最後まで真相はよく分からないのです。
 最後まで読んで、私もヴァラスと同じように途方にくれました。

 ヴァラスもこの物語も、まるで消しゴムのように擦り切れていくだけです。
 さんざん苦労した末に、待っていた結末は・・・

 この結末を、解説では「オイディプス王」と対比して、説明していました。
 どちらも「人間の自由意志に対する皮肉な運命の復讐のドラマ」だという。

 ところでヌーヴォー・ロマン作家の中には、ベケットやデュラスもいます。
 「ゴドーを待ちながら」や「愛人」などは、舞台や映画で知られています。


ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

  • 作者: サミュエル ベケット
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2013/06/18
  • メディア: 新書



愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/02/05
  • メディア: 文庫



 さいごに。(インフルさらに流行)

 とうとう娘のクラスでもインフルエンザが流行し始め、5人が休んでいます。
 今のところうちの娘は大丈夫のようですが、心配は絶えません。


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