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痴愚神礼讃 [中世文学]

 「痴愚神礼讃」 エラスムス作 沓掛良彦訳 (中公文庫)


 痴愚こそ幸福の源泉である、と自賛する痴愚女神を描き、当時大流行した名著です。
 1509年に書かれた風刺文学の傑作で、宗教改革に大きな影響を与えました。

 2013年に中公文庫からラテン語原典訳が出ました。新しくて分かりやすい訳文です。
 段落分け等、読みやすい工夫がされています。が、3分の1が注釈、読まないって。


痴愚神礼讃 - ラテン語原典訳 (中公文庫)

痴愚神礼讃 - ラテン語原典訳 (中公文庫)

  • 作者: エラスムス
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/01/23
  • メディア: 文庫



 自分に帰依する人々を「大馬鹿者」と呼び、聴衆に向かって語ることはというと、
 痴愚でいることは素晴らしく、痴愚な者は幸せである、ということばかり・・・

 時にギリシア神話を引用し、時にローマの古典を引用し、時に聖書から引用します。
 非常に手の込んだ、知的なたわごとだと思いました。

 ところが時として、ドキッとさせられる表現と出会います。
 舞台監督と人生の例は、なかなかいけています。

 「舞台監督はしばしば同じ訳者を、違った扮装で舞台に出させますから、つい先ほど
 まで緋の衣をまとって王様を演じていた者が、今度はボロにくるまった奴隷として姿
 を見せたりするのです。要するにすべてが見せかけの仮装なのですが、人生という芝
 居も、その演じられ方は、これと変わるところがありません。」(P73)

 ちなみにこの作品は、前半が圧倒的に面白いです。
 後半になると妙に理屈っぽくなって、読んでいて疲れるようになります。

 さて、この名著(迷著)を、エラスムスはトマス・モアに宛てて一気に書きました。
 まさかその時は、この作品が歴史的名著となるは、考えてもみなかったでしょう。

 作品中で、王や修道士はもちろん、教皇までが笑いの対象となっています。
 1511年に刊行されると、教会から大顰蹙を買い、発禁処分となりました。

 また、1517年にルターが「95ヶ条の論題」を出し、宗教改革が始まりますが、
 この流れに「痴愚神礼讃」が大きな役割を果たしたとも、言われています。

 また、この笑いの伝統は、ラブレーの「ガルガンチュワ物語」に受け継がれ、
 「痴愚神礼讃」といえば、ルネサンス文学の名著ということになっています。


ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫)

ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫)

  • 作者: フランソワ ラブレー
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/01/01
  • メディア: 文庫



 エラスムスの親友モアの「ユートピア」もまた、ルネサンス文学の名著です。
 モアの「ユートピア」以後、さまざまな人々のユートピア論が出されました。


ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

  • 作者: トマス・モア
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1957/10/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ゴキブリごっこ)

 娘がどこからか、非常にリアルなゴキブリのおもちゃをもらってきました。
 それを色々な場所に隠して、相手を驚かすのが、わが家のマイブームです。

 いつだったか、私のペンケースに入っていて、とてもびっくりしました。
 ところが、あのゴキちゃんを1週間見かけません。いつどこから出てくるか?


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