日の名残り [20世紀イギリス文学]
「日の名残り」 カズオ・イシグロ作 土屋政雄訳 (ハヤカワepi文庫)
執事を極めた男が、短い旅をしながら、人生と古き良き時代を振り返る物語です。
作者は長崎生まれの英国人。2017年にノーベル文学賞を受賞し、一躍時の人に。
カズオ・イシグロの代表的な作品は、ハヤカワepi文庫からすべて出ています。
土屋訳は、執事の品のある話し方をみごとに表現していて、とても良かったです。
1956年7月執事のスティーブンスは、主人のフォードを借りて短い旅に出ました。
ひとり西へ向かう道すがら、彼の胸にさまざまな思い出がよみがえってきました。
華やかなりし頃のダーリントン・ホール。そこで開催された数々の国際会議・・・
完璧な紳士だった主人のダーリントン卿。その執事として働いた懐かしい日々・・・
「みずからの執事人生を振り返り、『私は偉大な紳士に仕え、そのことによって人
類に奉仕した』と断言できる執事こそ、真に『偉大な』執事であるに違いあります
まい。」(P167)
しかし、偉大な紳士として行動し続けたダーリントン卿が、誤ったのはなぜか?
過去を振り返るうちに、スティーブンスの中で、さまざまな気づきがありました。
「『転機』とは、たしかにあるものかもしれません。しかし、振り返ってみて初め
て、それとわかるもののようでもあります。いま思い返してみれば、あの瞬間もこ
の瞬間も、たしかに人生を決定づける重大な一瞬だったように見えます。」(P255)
自分にとって大切な存在だった父親。しかし、その最後の日々は・・・
自分にとって大切な存在だった女中頭のミス・ケントン。しかし、彼女とは・・・
「わたしを離さないで」の後味がひどかったので、ずっと読むのを躊躇してました。
「わたしを離さないで」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-11-07
しかし、冒頭を少し読んでみたところ、その語り口調にすぐに引きつけられました。
スティーブンスが、執事人生をかけて追い求めてきたこと。それは「品格」です。
この物語全体が、スティーブンスの品格に包まれていて、大変心地よく読めました。
特に、ダーリントン・ホールでの、国際会議の回想場面はすばらしいです。
父が「自分はいい父親だったか」と尋ねる場面は、涙なしには読めません。
また最終章の、ミス・ケントンとの歓談のあとの場面は、とても感動的でした。
スティーブンスの日の名残りであり、古きヨーロッパの日の名残りでもあります。
読後、深い余韻に包まれました。評判通りのすばらしい本でした。
今年読んだ本のベスト5に確実に入ります。ぜひ、皆にオススメしたいです。
さいごに。(パンの缶詰)
娘は夏休みの間に、「世界を救うパンの缶詰」で読書感想文と感想画をかきました。
パンの缶詰は、アマゾンでも取り扱っていて、ネットで注文したら翌日届きました。
缶を開けたら確かにふわふわで、できたてのようなパンでした。
ただし1缶500円ほどと高い。もっと普及して200円ぐらいになればいいのだけど。
執事を極めた男が、短い旅をしながら、人生と古き良き時代を振り返る物語です。
作者は長崎生まれの英国人。2017年にノーベル文学賞を受賞し、一躍時の人に。
カズオ・イシグロの代表的な作品は、ハヤカワepi文庫からすべて出ています。
土屋訳は、執事の品のある話し方をみごとに表現していて、とても良かったです。
1956年7月執事のスティーブンスは、主人のフォードを借りて短い旅に出ました。
ひとり西へ向かう道すがら、彼の胸にさまざまな思い出がよみがえってきました。
華やかなりし頃のダーリントン・ホール。そこで開催された数々の国際会議・・・
完璧な紳士だった主人のダーリントン卿。その執事として働いた懐かしい日々・・・
「みずからの執事人生を振り返り、『私は偉大な紳士に仕え、そのことによって人
類に奉仕した』と断言できる執事こそ、真に『偉大な』執事であるに違いあります
まい。」(P167)
しかし、偉大な紳士として行動し続けたダーリントン卿が、誤ったのはなぜか?
過去を振り返るうちに、スティーブンスの中で、さまざまな気づきがありました。
「『転機』とは、たしかにあるものかもしれません。しかし、振り返ってみて初め
て、それとわかるもののようでもあります。いま思い返してみれば、あの瞬間もこ
の瞬間も、たしかに人生を決定づける重大な一瞬だったように見えます。」(P255)
自分にとって大切な存在だった父親。しかし、その最後の日々は・・・
自分にとって大切な存在だった女中頭のミス・ケントン。しかし、彼女とは・・・
「わたしを離さないで」の後味がひどかったので、ずっと読むのを躊躇してました。
「わたしを離さないで」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-11-07
しかし、冒頭を少し読んでみたところ、その語り口調にすぐに引きつけられました。
スティーブンスが、執事人生をかけて追い求めてきたこと。それは「品格」です。
この物語全体が、スティーブンスの品格に包まれていて、大変心地よく読めました。
特に、ダーリントン・ホールでの、国際会議の回想場面はすばらしいです。
父が「自分はいい父親だったか」と尋ねる場面は、涙なしには読めません。
また最終章の、ミス・ケントンとの歓談のあとの場面は、とても感動的でした。
スティーブンスの日の名残りであり、古きヨーロッパの日の名残りでもあります。
読後、深い余韻に包まれました。評判通りのすばらしい本でした。
今年読んだ本のベスト5に確実に入ります。ぜひ、皆にオススメしたいです。
さいごに。(パンの缶詰)
娘は夏休みの間に、「世界を救うパンの缶詰」で読書感想文と感想画をかきました。
パンの缶詰は、アマゾンでも取り扱っていて、ネットで注文したら翌日届きました。
缶を開けたら確かにふわふわで、できたてのようなパンでした。
ただし1缶500円ほどと高い。もっと普及して200円ぐらいになればいいのだけど。
カズオ・イシグロの父である石黒鎮雄博士に関する本が出版されていないのが残念ですねぇ....
by サンフランシスコ人 (2018-08-22 02:45)
サンフランシスコ人さん、いつもありがとうございます。
カズオ・イシグロの父石黒鎮雄は、有名な海洋学者だったんですね。
by ike-pyon (2018-08-23 17:08)
「カズオ・イシグロの父石黒鎮雄は、有名な海洋学者...」
http://beta.sciencemuseum.org.uk/stories/2016/11/4/modelling-the-oceans
by サンフランシスコ人 (2018-08-24 03:39)