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世界文学の流れをざっくりとつかむ10(第2章ー4) [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

 ≪第2章≫ ギリシアとローマ

4 ローマ文学の黄金時代(ウェルギリウス)

 アテナイが繁栄を謳歌していたころ、ローマは辺鄙な場所にある小国にすぎませんでした。ローマにとって、先進国のギリシアは憧れであり、ギリシア神話をローマ神話に読み替えるなどして、ギリシア文化を積極的に取り入れてきました。このころからすでに、古代文学の伝統を重んじるというラテン文学の特徴が表れています。

 アレクサンドロス大王が東征した結果、ギリシア文化はオリエントに伝わりました。その後継の三帝国の時代、ローマは着々と実力を蓄え、のちに三帝国を次々と滅ぼしていきました。前30年にローマはクレオパトラを自殺に追い込み、プトレマイオス朝を滅ぼすと、全ギリシアの遺産を継承することになったのです。

 帝政ローマが始まる直前、ローマは一世紀に及ぶ内乱を経験しました。しかしこの内乱の一世紀に、多くの雄弁家が登場してラテン語が発展したのです。中でもカエサルとキケロは政治上で対立しながらも、お互いにすばらしい弁論を繰り広げました。特にキケロは、政治家らしい修辞法を駆使した弁論集を残し、これはラテン語の模範とされています。一方カエサルは、軍人らしい簡潔な文体で「ガリア戦記」を書きました。二人はともにラテン語の完成者とみなされています。

 前27年にアウグストゥスによって帝政ローマが始まりました。この治世は、ローマが大帝国になる礎を築いた時期であり、民族精神はたいへん高揚しました。そういう風潮の中、ホメロスの叙事詩のように民族の精神的な支柱となる作品が、人びとによって求められました。そして、その期待に応えたのが、ウェルギリウスでした。

 ウェルギリウスは、ローマ建国神話をもとにした大叙事詩「アエネイアス」を書きました。この作品を委嘱したのはアウグストゥス帝だったとも言われています。その前半は「オデュッセイア」を下敷きにし、後半は「イリアス」を下敷きにしています。こうして、ホメロスに匹敵する叙事詩を創り上げたため、ウェルギリウスはローマ最大の詩人と呼ばれ、後世の詩人たちから尊敬され続けています。のちにダンテが、ウェルギリウスを自分の詩の根源とし、「神曲」の中で彼を案内役にしていることはよく知られています。

 ウェルギリウスと同じころ、リウィウスは「ローマ建国史」142巻を書きました。ギリシアの歴史書の影響を受け、年代記と物語を合わせたようなスタイルをとっています。「ローマ建国史」は、散文で書かれたローマ建国叙事詩であり、ウェルギリウスの「アエネイアス」と対になるものと言えます。ただし、現存するのはその四分の一ほどにすぎません。また、オウィディウスは「変身物語」を書きましたが、これはギリシア・ローマ神話の集大成です。

 これらの作品は、ローマ人の心のふるさととなり、ローマという国をまとめる働きを担っていたため、のちのちまで重んじられました。そのためこの時代を、ローマ文学の黄金期と言います。しかしこれらの作品はみな、ギリシア文学をローマ流にアレンジしたものであり、芯にはギリシアの伝統がしっかりと保たれています。よく言われるように、ギリシアはローマに支配されましたが、その文化はかえってローマを支配したのかもしれません。

 次回は、ローマの白銀時代について書いていきたいと思います。

 さいごに。(ドラマ見すぎでしょう)

 娘は現在、週に5つほどドラマを見ています。いずれもジャニーズが出ています。
 どうやらドラマが見たいのではなく、出ているジャニーズを見たいようです。

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