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杜子春・南京の基督(芥川龍之介) [日本の近代文学]

 「杜子春 南京の基督」 芥川龍之介 (角川文庫)


 タイトル作の「杜子春」など、大正9年に書かれた作品17作を収録しています。
 以前は天野喜孝の妖艶なカバーでしたが、現在はお洒落なデザインになっています。


杜子春・南京の基督 (角川文庫)

杜子春・南京の基督 (角川文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1968/10
  • メディア: 文庫



杜子春 (角川文庫)

杜子春 (角川文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 文庫



 「杜子春」は、仙人を目指したひとりの青年の物語です。舞台は中国の洛陽です。
 一文無しとなった杜子春の前に、不思議な老人が現れ、彼を大金持ちにしました。

 しかし彼は、与えられた財産を二度まで蕩尽し、人の世の虚しさを知りました。
 そして、老人が仙人であることを見破ると、老人の弟子になることを望みました。

 老人は、峨眉山に住んでいる鉄冠子という仙人でした。老人は言いました。
 「たといどんなことが起ころうとも、決して声を出すのではないぞ。」・・・

 杜子春の前にどのような幻影が現れるのか? 杜子春は約束を守れるのだろうか?
 よく知られた物語です。私は子供の頃に、絵本で読んだ記憶があります。

 「何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」印象的な言葉です。
 本当の幸せとは何かを、改めて考えさせてくれる作品です。

 「南京の基督」も中国が舞台。キリスト教徒の少女の身に起こる、奇跡の物語です。
 宋金花という15歳の少女は、貧しい家計を助けるために、毎夜部屋に客を迎えます。

 ところがあるとき梅毒にかかってしまい、商売を続けることができなくなりました。
 他の客に移せば病気は治ると言われましたが、そんなことはとてもできません。

 しかし、急にやってきた客は、誰かに似ているようで・・・彼と寝た後は・・・
 皮肉の利いた、芥川らしい作品だと思います。この本における、マイ・ベストです。

 「黒衣聖母」も「南京の基督」と似たエキゾティックな雰囲気があります。
 黒い服をまとった美しい聖母像は、福を転じて禍とする、縁起の悪い聖母で・・・

 「沼」はわずか3ページですが、不気味な美しさをたたえた、忘れがたい作品です。
 「おれ」は昔から葦の茂みの向こうに、不思議な世界があることを知っていて・・・

 「素戔嗚尊」と「老いたる素戔嗚尊」は、「古事記」に取材した力作です。
 しかし、私は作品の世界観が好きになれません。素戔嗚は英雄として描いてほしい。

 「秋」や「お律と子等と」も、非常に苦心して書かれた作品だろうと思います。
 しかしこういう「普通の作品」は、芥川がわざわざ書かなくてもいいのではないか?

 さて、芥川龍之介の作品は、この本を最後に、ほとんど制覇することができました。
 以下に、角川文庫版で読んだ8冊を、振り返ってみたいと思います。

 1 「羅生門・鼻・芋粥」 大正3年~大正5年
 2 「河童・戯作三昧」  大正6年~昭和2年
 3 「蜘蛛の糸・地獄変」 大正7年
 4 「舞踏会・蜜柑」 大正8年
 5 「杜子春・南京の基督」 大正9年
 6 「藪の中・将軍」 大正10年
 7 「トロッコ・一塊の土」 大正11年~大正12年
 8 「或阿呆の一生・侏儒の言葉」 昭和2年・遺稿

 近いうちに、「芥川マイ・ベスト」の特集をやらなければ。
 数ある傑作から、1位に何を選ぶか。考えただけでワクワクしてしまいます。

 さいごに。(時々拍手が聞こえる)

 私が夜、2階の部屋で本を読んでいると、時々下から拍手が聞こえてきます。
 そういうときは、たいていママさんと娘が一緒に、TVの録画を見ています。

 ジャニーズのメンバーで、お気に入りが登場すると、二人は拍手をしています。
 Hey! Say! JUMP の山田君が出ているドラマでは、娘のテンションが高いです。

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