忘却の河 [日本の現代文学]
「忘却の河」 福永武彦 (新潮文庫)
愛する女を死に追いやった過去を持つ男と、家族それぞれの思いを描いた物語です。
人間の深層心理を描いた名作で、「草の花」と並ぶ代表作です。
男は、ある看護師と結婚を約束しながら、家柄の違いによって果たせませんでした。
絶望した女は、男の知らぬ間に、お腹の中の子供と一緒に自ら命を絶ったのでした。
男は、その記憶を長い間引きずって生きていました。家族の誰にも打ち明けずに。
彼はほかにも秘密を抱えています。時々会っている若い女、自分の出生のこと・・・
長女の美佐子にも秘密があります。美術評論家で、妻子ある三木という男と・・・
また美佐子は、ある疑念にとらわれています。自分は本当はうちの子ではなく・・・
次女の香代子は、大学の演劇の先輩である、下山という男との関係が進んで・・・
香代子もまた、ある疑念にとらわれています。自分こそ本当は父の子ではなく・・・
病気で寝たきりとなっている妻は、死を前にして、秘密を抱えたままでいました。
習字のお師匠さんの家で会った、ある青年とのことを・・・
七章から成る物語は、独立した形式をとりながら、しだいに接点を持ち始めます。
家族それぞれの思いが、しだいに寄り添っていくところが、すがすがしいです。
「己たちはみんな寂しいのに、どうして心を通わせることが出来ないのだろうか」
「己の心が硝子を隔てて見ているだけで、その向こうに出て行こうとしないから」
これは、脇役的な存在である三木の言葉ですが、とても重要なことだと思います。
そのガラスをぶち破って、相手に生で接したときに、初めて通じることがある!
さて、この物語にはミステリーっぽい要素もあり、最後まで飽きずに読めました。
美佐子が幼いころ聞いた子守歌は、誰が歌っていたのか? どこの歌だったのか?
非常によく練られた小説で、無駄な部分はなく、完璧な構成を持っています。
また、所々で印象的なフレーズが現れ、作品を印象深くしています。
「ひとは愛する時に、くるしむことさえも心のよりどころになっているのだ。」
「ただこの行為が一切の忘却につながるが故にこの女を愛していた。」・・・
ところで、新潮文庫版の巻末には、池澤夏樹による解説が付けられていました。
恥ずかしながら、福永武彦が池澤の父であることを知ったのは、最近のことです。
さいごに。(今年はGWあり)
明日から5日間休みとなります。久々にGWが休みとなりました。
年間計画では、5日間のうち4日間が、一日中(12時間)の仕事でした。
(昨年のGWの10連休では、9日間が仕事だった!)
大きな仕事ができなくなり、残念だと思う反面、ちょっぴり嬉しい気もします。
娘と一緒に、たまっていたテレビ録画を見る時間もできそうで、楽しみです。
愛する女を死に追いやった過去を持つ男と、家族それぞれの思いを描いた物語です。
人間の深層心理を描いた名作で、「草の花」と並ぶ代表作です。
男は、ある看護師と結婚を約束しながら、家柄の違いによって果たせませんでした。
絶望した女は、男の知らぬ間に、お腹の中の子供と一緒に自ら命を絶ったのでした。
男は、その記憶を長い間引きずって生きていました。家族の誰にも打ち明けずに。
彼はほかにも秘密を抱えています。時々会っている若い女、自分の出生のこと・・・
長女の美佐子にも秘密があります。美術評論家で、妻子ある三木という男と・・・
また美佐子は、ある疑念にとらわれています。自分は本当はうちの子ではなく・・・
次女の香代子は、大学の演劇の先輩である、下山という男との関係が進んで・・・
香代子もまた、ある疑念にとらわれています。自分こそ本当は父の子ではなく・・・
病気で寝たきりとなっている妻は、死を前にして、秘密を抱えたままでいました。
習字のお師匠さんの家で会った、ある青年とのことを・・・
七章から成る物語は、独立した形式をとりながら、しだいに接点を持ち始めます。
家族それぞれの思いが、しだいに寄り添っていくところが、すがすがしいです。
「己たちはみんな寂しいのに、どうして心を通わせることが出来ないのだろうか」
「己の心が硝子を隔てて見ているだけで、その向こうに出て行こうとしないから」
これは、脇役的な存在である三木の言葉ですが、とても重要なことだと思います。
そのガラスをぶち破って、相手に生で接したときに、初めて通じることがある!
さて、この物語にはミステリーっぽい要素もあり、最後まで飽きずに読めました。
美佐子が幼いころ聞いた子守歌は、誰が歌っていたのか? どこの歌だったのか?
非常によく練られた小説で、無駄な部分はなく、完璧な構成を持っています。
また、所々で印象的なフレーズが現れ、作品を印象深くしています。
「ひとは愛する時に、くるしむことさえも心のよりどころになっているのだ。」
「ただこの行為が一切の忘却につながるが故にこの女を愛していた。」・・・
ところで、新潮文庫版の巻末には、池澤夏樹による解説が付けられていました。
恥ずかしながら、福永武彦が池澤の父であることを知ったのは、最近のことです。
さいごに。(今年はGWあり)
明日から5日間休みとなります。久々にGWが休みとなりました。
年間計画では、5日間のうち4日間が、一日中(12時間)の仕事でした。
(昨年のGWの10連休では、9日間が仕事だった!)
大きな仕事ができなくなり、残念だと思う反面、ちょっぴり嬉しい気もします。
娘と一緒に、たまっていたテレビ録画を見る時間もできそうで、楽しみです。
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