この世の王国 [20世紀ラテンアメリカ文学]
「この世の王国」 カルペンティエール作 木村榮一訳 (サンリオ文庫)
ハイチにおける権力者の移り変わりを、魔術的リアリズムで描いた幻想小説です。
黒人のブードゥー教の文化や、ハイチの驚異的世界を描き、注目を集めました。
事故で片腕となった、黒人奴隷のマッカンダルは、ある日、農場から消えました。
彼は逃亡した後、多くの農場をまわって、奴隷たちと連絡を取るようになりました。
彼は苦行してブードゥーの祭司となり、人並み優れた能力を持つに至ったのです。
そして白人たちを毒殺し、黒人奴隷による一大帝国を築くために行動を始めました。
「双蹄動物、鳥、魚、あるいは昆虫に変身する能力を授けられたマッカンダルは、姿
を変えて平原に点在する農場を訪れ、信者の動きに目を光らせ、(中略)こうして彼
は島全体を支配下に収めていた。」(P41)
マッカンダルが捕らえられて、火刑に処せられるとき、火刑台から飛翔して・・・
その数十年後、ブックマンは、ブードゥーの儀式をしたのち反乱を起こして・・・
ハイチでは、長きにわたって反乱が続き、何度も権力者が変わってきました。
しかし、底辺にいる者たちの暮らしは、常に変わることがありませんでした。
「さまざまな悲しみと義務に苦しめられ、貧困にあえぎながらも気高さを保ち、逆境
にあっても人を愛することのできる人間だけが、この世の王国においてこのうえもな
く偉大なものを、至高のものを見出すことができるのだ。」(P149)
ところで、この小説で最も有名なのは、「序」における次のような宣言かもしれない。
「アメリカ大陸の歴史とは一切が、現実の驚異的なものの記録ではないだろうか?」
そして実際、ハイチの歴史物語の随所に、驚異的エピソードを盛り込んでいます。
作者が、「魔術的リアリズムの創始者のひとり」と言われたゆえんがここにあります。
ただし私は、エピソードがもっと有機的につながっていると良かった、と思いました。
あるいは、マッカンダルに関わる事件だけで完結させてしまうとか・・・
さて、この本には、「亡命者庇護権」という作品も、同時に収録されています。
こちらは、「この世の王国」より20年以上後の、1972年に書かれています。
マビリャン将軍が反乱を起こし、官房長官の主人公はある国の大使館に亡命し・・・
魔術的リアリズムとは、少し違うようですが、短いながら味わい深い作品でした。
さて、サンリオ文庫のこの本は、現在絶版で手に入りにくい状況です。
当時380円だったこの本を、1000円+送料で手に入れました。日焼けで真っ黒でした。
中古の文庫本を買うとき、私の場合は、1冊1000円までが許容範囲です。
2冊4000円で出ている「石蹴り遊び」は、予算オーバーで買えません。どうしよう?
カルペンティエールの、絶対的な代表作は、何と言っても「失われた足跡」でしょう。
以前集英社文庫で絶版となったものの、現在は岩波文庫に入っています。ありがたい。
さいごに。(マスク安売り合戦か)
4月の初旬、50枚入り3800円だったマスクが、今では2000円を切っています。
yahooショッピングでは送料込み1200円というのも。昔の金額で3箱買える!
ハイチにおける権力者の移り変わりを、魔術的リアリズムで描いた幻想小説です。
黒人のブードゥー教の文化や、ハイチの驚異的世界を描き、注目を集めました。
事故で片腕となった、黒人奴隷のマッカンダルは、ある日、農場から消えました。
彼は逃亡した後、多くの農場をまわって、奴隷たちと連絡を取るようになりました。
彼は苦行してブードゥーの祭司となり、人並み優れた能力を持つに至ったのです。
そして白人たちを毒殺し、黒人奴隷による一大帝国を築くために行動を始めました。
「双蹄動物、鳥、魚、あるいは昆虫に変身する能力を授けられたマッカンダルは、姿
を変えて平原に点在する農場を訪れ、信者の動きに目を光らせ、(中略)こうして彼
は島全体を支配下に収めていた。」(P41)
マッカンダルが捕らえられて、火刑に処せられるとき、火刑台から飛翔して・・・
その数十年後、ブックマンは、ブードゥーの儀式をしたのち反乱を起こして・・・
ハイチでは、長きにわたって反乱が続き、何度も権力者が変わってきました。
しかし、底辺にいる者たちの暮らしは、常に変わることがありませんでした。
「さまざまな悲しみと義務に苦しめられ、貧困にあえぎながらも気高さを保ち、逆境
にあっても人を愛することのできる人間だけが、この世の王国においてこのうえもな
く偉大なものを、至高のものを見出すことができるのだ。」(P149)
ところで、この小説で最も有名なのは、「序」における次のような宣言かもしれない。
「アメリカ大陸の歴史とは一切が、現実の驚異的なものの記録ではないだろうか?」
そして実際、ハイチの歴史物語の随所に、驚異的エピソードを盛り込んでいます。
作者が、「魔術的リアリズムの創始者のひとり」と言われたゆえんがここにあります。
ただし私は、エピソードがもっと有機的につながっていると良かった、と思いました。
あるいは、マッカンダルに関わる事件だけで完結させてしまうとか・・・
さて、この本には、「亡命者庇護権」という作品も、同時に収録されています。
こちらは、「この世の王国」より20年以上後の、1972年に書かれています。
マビリャン将軍が反乱を起こし、官房長官の主人公はある国の大使館に亡命し・・・
魔術的リアリズムとは、少し違うようですが、短いながら味わい深い作品でした。
さて、サンリオ文庫のこの本は、現在絶版で手に入りにくい状況です。
当時380円だったこの本を、1000円+送料で手に入れました。日焼けで真っ黒でした。
中古の文庫本を買うとき、私の場合は、1冊1000円までが許容範囲です。
2冊4000円で出ている「石蹴り遊び」は、予算オーバーで買えません。どうしよう?
カルペンティエールの、絶対的な代表作は、何と言っても「失われた足跡」でしょう。
以前集英社文庫で絶版となったものの、現在は岩波文庫に入っています。ありがたい。
さいごに。(マスク安売り合戦か)
4月の初旬、50枚入り3800円だったマスクが、今では2000円を切っています。
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