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老いぼれグリンゴ [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「老いぼれグリンゴ」 フエンテス作 安藤哲行訳 (集英社文庫)


 死地を求めてメキシコ革命に参加したグリンゴ爺さんが、亡くなるまでの物語です。
 アメリカ文学史上最大の謎であるビアス失踪事件を描き、映画にもなりました。
 ビアス → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-04-13


老いぼれグリンゴ (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

老いぼれグリンゴ (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1994/08/19
  • メディア: 文庫



 「わたしは死にに来た。わたしは作家だ。みてくれのいい死体になりたい。」
 「鉄砲の弾丸は怖くない。死ぬまえに『ドン・キホーテ』を読みたい。メキシコで
 グリンゴであること、それがわたしの死に方」(P92)

 そう言ってメキシコの革命軍に身を投じた老グリンゴ(「アメ公」みたいな蔑称)。
 彼には、何があったのか? そして、彼は誰なのか?

 家庭教師として、ワシントンからやって来た、美しいハリエット・ウインズロー。
 雇い主はすでにパリに逃れ、ひとり呆然とする中、彼女は革命軍と出会いました。

 その土地で革命軍を指揮していたのは、トマス・アローヨ将軍です。
 グリンゴ、ハリエット、アローヨ、三者にはそれぞれのつらい半生があり・・・

 集英社文庫のカバーの紹介欄に、ビアスの最後の謎が描かれているとありました。
 ビアスの失踪事件は気になっていたので、私はとても期待して読みました。

 ところが、推理小説のつもりで読むと、失望を味わうかもしれません。
 誰がビアスで、最期はどうなるのか、しょっぱなですっかり示唆されています。

 この作品は映画にもなりましたが、ドラマティックな展開を期待してはいけない。
 登場人物それぞれが、自己の心理をぐじゃぐじゃ述べている部分が多かったです。

 フエンテスのいちばん描きたかったのは、グリンゴやグリンガのことではなく、
 メキシコ革命に身を投じたメキシコ人や、メキシコ革命そのものだったのでは?

 訳者による解説には、本書について、次のように書かれていました。
 「アメリカとメキシコを熟知するフエンテスが両国を見すえて批判した作品」と。

 最後の、ハリエットの言葉はイミシンでした。「わたしはメキシコとともに
 生きることを学びたいんです。メキシコを救うというのは嫌です」(P258)

 さて、集英社文庫版「老いぼれグリンゴ」は、現在絶版です。
 私はアマゾンで、送料込み980円で手に入れました。1994年の初版本でした。

 視点が次々と移り、話があちこち飛ぶので、正直に言って読みにくかったです。
 2009年の池澤夏樹「世界文学全集版」も、同じ訳者でした。新訳は出ないのか。

 さいごに。(遠近両用)

 5年ぐらい前から、手元が見えにくくなって、老眼が進行し始めました。
 最近、文庫本を読むときは、完全に眼鏡を外してしまうことが多くなりました。

 特に、仕事中に困るので、とりあえず仕事用の眼鏡だけ、遠近両用にしました。
 書類の細かい字を読むときに、いちいち眼鏡を外さなくていいので、便利です。

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