失われた足跡 [20世紀ラテンアメリカ文学]
「失われた足跡」 カルペンティエル作 牛島信明訳 (岩波文庫)
音楽家の男が、幻の楽器を求めてジャングルを旅した、6週間の冒険の物語です。
1953年に刊行された代表作。オリノコ川上流を旅した経験をもとに書かれました。
音楽家の「わたし」は、恩師である器官楽博物館の館長に、2年ぶりに会いました。
わたしは館長から、ある原始的な楽器をジャングルで探求するよう頼まれました。
わたしは、女優の妻とすれ違いの生活で、ムーシュという恋人を持っていました。
ムーシュを連れて南米に飛んだわたしは、目的を果たすためバスで川を目指します。
途中、ロサリオという混血女や、「先行者」という男などが、一向に加わりました。
川を遡行する旅は、時間を遡行する旅であり、彼らの前に驚異の世界が広がります。
奥へ進めば進むほど、ムーシュには嫌気がさし、ロサリオは輝き出して・・・
楽器を手に入れたわたしは、さらに「先行者」と共に大高地の秘密の集落へ・・・
もう戻らないと決心したあちらの世界に、戻ることになったのはなぜか?!
もう一度戻ろうとしたこちらの世界に、戻ることができなかったのはなぜか?!
冒険小説と神話的な要素が盛り込まれているため、ワクワクしながら読めました。
語り手の「わたし」に導かれ、ジャングルのめくるめき世界が体験できました。
作者は、ジャングルにおける原始的な自然や生活を、随所で賛美しています。
インディオの集落において、語り手の「わたし」の見方も180度変わりました。
「わたしのまわりにいた人々はすべて、それぞれの仕事にいそしんでおり、のどか
な調和のうちに、自然のリズムにしたがった生活がいとなまれていた。インディオ
を現実的な人間生活の周辺的な存在とみなす、思い上がった、多かれ少なかれ空想
的な報告を通して、わたしは彼らに対するイメージを形成していた。ところが実際
には、彼らは自分たちの領域において、独自の文化の完璧な所有者だったのだ。」
(P280)
インディオの営む世界と、「わたし」が属する世界は、時間の流れ方が違います。
わずか距離に、永遠の隔たりがあります。だから、「足跡」は「失われた」・・・
「例外的な道、新しい道を歩くことは無意識的な行為であり、それが現実におこな
われているときには、その驚異に気付くことはない。その道ははるかな地点、日常
性を遠く越えた、復帰不可能な地点にまで達しているのである・・・」(P435)
結末は皮肉でした。しかしそこにこそ、作者の言いたかったことがあるようです。
「失われた足跡」は、とても興味深い物語でした。いつかまた再読したいです。
岩波文庫版のカバーは、私の好きなアンリ・ルソーの「蛇使いの女」です。
ロサリオやジャングルのイメージが、よく表されています。まさに、絶妙です。
さて、カルペンティエルには、もう一つの代表作「この世の王国」があります。
ハイチを舞台にした驚異の世界が描かれています。サンリオ文庫版は絶版です。
さいごに。(レザークラフト作品完成)
4年前に取り掛かった後、転勤で多忙となり、放置していた作品を完成しました。
コロナウィルスの影響で、GW中の仕事が無くなり、時間ができたので。
「どうせ作るのなら、絶対に店で売ってないようなものを」と思い、作りました。
三つのホックで、包みをひらくように開ける、唯一無二のシステム手帳です。
音楽家の男が、幻の楽器を求めてジャングルを旅した、6週間の冒険の物語です。
1953年に刊行された代表作。オリノコ川上流を旅した経験をもとに書かれました。
音楽家の「わたし」は、恩師である器官楽博物館の館長に、2年ぶりに会いました。
わたしは館長から、ある原始的な楽器をジャングルで探求するよう頼まれました。
わたしは、女優の妻とすれ違いの生活で、ムーシュという恋人を持っていました。
ムーシュを連れて南米に飛んだわたしは、目的を果たすためバスで川を目指します。
途中、ロサリオという混血女や、「先行者」という男などが、一向に加わりました。
川を遡行する旅は、時間を遡行する旅であり、彼らの前に驚異の世界が広がります。
奥へ進めば進むほど、ムーシュには嫌気がさし、ロサリオは輝き出して・・・
楽器を手に入れたわたしは、さらに「先行者」と共に大高地の秘密の集落へ・・・
もう戻らないと決心したあちらの世界に、戻ることになったのはなぜか?!
もう一度戻ろうとしたこちらの世界に、戻ることができなかったのはなぜか?!
冒険小説と神話的な要素が盛り込まれているため、ワクワクしながら読めました。
語り手の「わたし」に導かれ、ジャングルのめくるめき世界が体験できました。
作者は、ジャングルにおける原始的な自然や生活を、随所で賛美しています。
インディオの集落において、語り手の「わたし」の見方も180度変わりました。
「わたしのまわりにいた人々はすべて、それぞれの仕事にいそしんでおり、のどか
な調和のうちに、自然のリズムにしたがった生活がいとなまれていた。インディオ
を現実的な人間生活の周辺的な存在とみなす、思い上がった、多かれ少なかれ空想
的な報告を通して、わたしは彼らに対するイメージを形成していた。ところが実際
には、彼らは自分たちの領域において、独自の文化の完璧な所有者だったのだ。」
(P280)
インディオの営む世界と、「わたし」が属する世界は、時間の流れ方が違います。
わずか距離に、永遠の隔たりがあります。だから、「足跡」は「失われた」・・・
「例外的な道、新しい道を歩くことは無意識的な行為であり、それが現実におこな
われているときには、その驚異に気付くことはない。その道ははるかな地点、日常
性を遠く越えた、復帰不可能な地点にまで達しているのである・・・」(P435)
結末は皮肉でした。しかしそこにこそ、作者の言いたかったことがあるようです。
「失われた足跡」は、とても興味深い物語でした。いつかまた再読したいです。
岩波文庫版のカバーは、私の好きなアンリ・ルソーの「蛇使いの女」です。
ロサリオやジャングルのイメージが、よく表されています。まさに、絶妙です。
さて、カルペンティエルには、もう一つの代表作「この世の王国」があります。
ハイチを舞台にした驚異の世界が描かれています。サンリオ文庫版は絶版です。
さいごに。(レザークラフト作品完成)
4年前に取り掛かった後、転勤で多忙となり、放置していた作品を完成しました。
コロナウィルスの影響で、GW中の仕事が無くなり、時間ができたので。
「どうせ作るのなら、絶対に店で売ってないようなものを」と思い、作りました。
三つのホックで、包みをひらくように開ける、唯一無二のシステム手帳です。
2020-05-10 04:00
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