秘密の武器 [20世紀ラテンアメリカ文学]
「秘密の武器」 コルタサル作 木村榮一訳 (岩波文庫)
「悪魔の涎」「追い求める男」等、作家として最も充実していた時期の短編集です。
1959年刊。短編集の代表作です。4年後に、代表作「石蹴り遊び」が刊行されます。
「悪魔の涎」は、アマチュア・カメラマンの身に起こった恐怖体験を描いています。
ある日曜日ミシェルは、カメラを持ってパリのサン・ルイ島を散歩していました。
15歳くらいの少年に、年上の女がからみつく場面を見て、シャッターを切りました。
家に帰って写真を現像してみると・・・あの場面の恐ろしい続きが・・・
「悪魔の涎」は、コルタサルの短編を代表する作品です。
アントニオーニの1967年映画「欲望」のネタとなったことで、広く知られています。
タイトル作「秘密の武器」は、しだいにじわじわと恐怖が湧きおこる心理小説です。
語り口が曖昧で、もやもやしながら読んでいくと、突然彼らの心の闇を垣間見ます。
ピエールの心には何かが入り込んだのか? それともただの思い込みなのか?
ミシェルは何に怯えていたのか? すべては彼女の深層心理が作り出したのでは?
そして、結末はどうなったのか? あの終わり方はないだろう(いい意味で)。
読み終わった後まで、読者に闇を抱え続けさせるような、実に稀有な作品です。
冒頭の「母の手紙」もまた、同じような味わいがありました。死んだ兄が・・・
「女中勤め」という作品は、正直に言って、私には意味が分かりませんでした。
さて「秘密の武器」全5作中、私が最も衝撃を受けたのは「追い求める男」です。
伝記作家であるブルーノから見た、サックス奏者ジョニーの姿が描かれています。
そして、作中のジョニーは、チャーリー・パーカーの晩年の姿を写しています。
麻薬におぼれ、意識は朦朧とし、カネも失って、パトロンの元に転がり込み・・・
しかし、そういう破滅的な生き方をしながら、なおジョニーは追い求めています。
その追い求めているものとは何か、その点に迫った物語です。
「これはもう明日吹いた曲だぜ、なんてこった、これはもう明日吹いた曲だ」
「うまく言えないが、音楽はおれを時間の外へ連れ出してくれたんだ」
「地下鉄に乗るのは時計の中に閉じ込められるようなものだ。つまりあれは、お前
たちの時間、今の、この時間なんだ。だが、おれにはまた別の時間があるってこと
が分かっているんだ」
「ニューヨークで演奏した時、自分の音楽でドアを開けたような気がしたんだ。だ
が、演奏をやめなければならなかった。とたんに、あのいまいましい神様は、おれ
の目の前でドアをぴしゃりと閉めてしまった」
ジョニーの言う「別の時間」とは何か? 「ドア」の向こうには何があるのか?
ジョニーが追いかけていたものは、どのようなものだったのか?
パーカーの現実的な生涯をなぞりながら、ある意味幻想的な作品となっています。
おそらくパーカーもまた、演奏を通して異界を感じとっていたように思います。
改めて、チャーリー・パーカーのCDを聴き直したくなる作品でした。
特に、「チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアルvol.1」を聴きたい。
古くて音が悪いので、「マニア向け」として紹介されることが多いアルバムです。
しかし音源の悪さに懐かしい味わいがあり、どの曲も短いので意外と聴きやすい。
19歳のマイルスを起用して吹き込んだ「チュニジアの夜」はサイコーです。
また、ヘロヘロ状態で吹いた「ラヴァー・マン」など、興味深い演奏もあります。
ちなみに、このラヴァーマン・セッションのあと、ボヤ騒ぎを起こして病院へ。
「追い求める男」でも、この辺りのことが書かれていました。
さてJazzの魅力は、曲が今生まれたばかりの生々しさを、味わえる点にあります。
Jazzを聴き始めてかれこれ30年。どこかで、Jazzについても書いてみたいです。
さいごに。(お盆の仕事も中止)
コロナのせいで(コロナのおかげで?)、GWの大きな仕事が無くなりました。
そして、夏のお盆に予定されていた全国規模の仕事も、中止が決定しました。
この仕事、私は役員になっていて、今年はお盆休みは無いと覚悟していたのです。
正直、ほっとしました。それでなくても、休業分を取り戻すため忙しくなるので。
「悪魔の涎」「追い求める男」等、作家として最も充実していた時期の短編集です。
1959年刊。短編集の代表作です。4年後に、代表作「石蹴り遊び」が刊行されます。
「悪魔の涎」は、アマチュア・カメラマンの身に起こった恐怖体験を描いています。
ある日曜日ミシェルは、カメラを持ってパリのサン・ルイ島を散歩していました。
15歳くらいの少年に、年上の女がからみつく場面を見て、シャッターを切りました。
家に帰って写真を現像してみると・・・あの場面の恐ろしい続きが・・・
「悪魔の涎」は、コルタサルの短編を代表する作品です。
アントニオーニの1967年映画「欲望」のネタとなったことで、広く知られています。
タイトル作「秘密の武器」は、しだいにじわじわと恐怖が湧きおこる心理小説です。
語り口が曖昧で、もやもやしながら読んでいくと、突然彼らの心の闇を垣間見ます。
ピエールの心には何かが入り込んだのか? それともただの思い込みなのか?
ミシェルは何に怯えていたのか? すべては彼女の深層心理が作り出したのでは?
そして、結末はどうなったのか? あの終わり方はないだろう(いい意味で)。
読み終わった後まで、読者に闇を抱え続けさせるような、実に稀有な作品です。
冒頭の「母の手紙」もまた、同じような味わいがありました。死んだ兄が・・・
「女中勤め」という作品は、正直に言って、私には意味が分かりませんでした。
さて「秘密の武器」全5作中、私が最も衝撃を受けたのは「追い求める男」です。
伝記作家であるブルーノから見た、サックス奏者ジョニーの姿が描かれています。
そして、作中のジョニーは、チャーリー・パーカーの晩年の姿を写しています。
麻薬におぼれ、意識は朦朧とし、カネも失って、パトロンの元に転がり込み・・・
しかし、そういう破滅的な生き方をしながら、なおジョニーは追い求めています。
その追い求めているものとは何か、その点に迫った物語です。
「これはもう明日吹いた曲だぜ、なんてこった、これはもう明日吹いた曲だ」
「うまく言えないが、音楽はおれを時間の外へ連れ出してくれたんだ」
「地下鉄に乗るのは時計の中に閉じ込められるようなものだ。つまりあれは、お前
たちの時間、今の、この時間なんだ。だが、おれにはまた別の時間があるってこと
が分かっているんだ」
「ニューヨークで演奏した時、自分の音楽でドアを開けたような気がしたんだ。だ
が、演奏をやめなければならなかった。とたんに、あのいまいましい神様は、おれ
の目の前でドアをぴしゃりと閉めてしまった」
ジョニーの言う「別の時間」とは何か? 「ドア」の向こうには何があるのか?
ジョニーが追いかけていたものは、どのようなものだったのか?
パーカーの現実的な生涯をなぞりながら、ある意味幻想的な作品となっています。
おそらくパーカーもまた、演奏を通して異界を感じとっていたように思います。
改めて、チャーリー・パーカーのCDを聴き直したくなる作品でした。
特に、「チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアルvol.1」を聴きたい。
古くて音が悪いので、「マニア向け」として紹介されることが多いアルバムです。
しかし音源の悪さに懐かしい味わいがあり、どの曲も短いので意外と聴きやすい。
19歳のマイルスを起用して吹き込んだ「チュニジアの夜」はサイコーです。
また、ヘロヘロ状態で吹いた「ラヴァー・マン」など、興味深い演奏もあります。
ちなみに、このラヴァーマン・セッションのあと、ボヤ騒ぎを起こして病院へ。
「追い求める男」でも、この辺りのことが書かれていました。
さてJazzの魅力は、曲が今生まれたばかりの生々しさを、味わえる点にあります。
Jazzを聴き始めてかれこれ30年。どこかで、Jazzについても書いてみたいです。
さいごに。(お盆の仕事も中止)
コロナのせいで(コロナのおかげで?)、GWの大きな仕事が無くなりました。
そして、夏のお盆に予定されていた全国規模の仕事も、中止が決定しました。
この仕事、私は役員になっていて、今年はお盆休みは無いと覚悟していたのです。
正直、ほっとしました。それでなくても、休業分を取り戻すため忙しくなるので。
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