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精霊たちの家1 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「精霊たちの家 上」 イサベル・アジェンデ作 木村榮一訳 (河出文庫)


 クラーラ、ブランカ、アルバと続く、デル・バージェ家の三代にわたる年代記です。
 マルケスの「百年の孤独」と並び称せられる、ラテンアメリカ文学の名作です。


精霊たちの家 上 (河出文庫)

精霊たちの家 上 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/07/06
  • メディア: 文庫



 デル・バージェ家の末娘クラーラには、生まれつき超能力が備わっていました。
 精霊たちを呼び出して会話をしたり、未来に起こることを予知したりしました。

 あるとき彼女が言いました。「今度はまちがえてべつの人が死ぬことになるわ」と。
 その後、人魚のように美しい姉のローサが、父の身代わりとなって死んだのです。

 クラーラは、二度と口をきくまいとして、沈黙の中に閉じこもり・・・
 その間彼女は、大気や水や大地の精と一緒に、空想の世界に生き・・・

 「そこでは、物体はそれ自身に生命が備わり、亡霊はテーブルについて人間と会話
 し、過去と未来はひとつに溶け合い、今現在の現実は乱雑に鏡を並べた万華鏡のよ
 うに変幻きわまりないもので、なにが起ころうとも少しも不思議ではなかった。」
 (P142)

 一方、ローサの婚約者だったエステーバンは、農場の経営に乗り出して成功し・・・
 9年間の沈黙を破って、クラーラが言った言葉は・・・そしてエステーバンは・・・

 面白くて、先が気になって、どんどん読み進められます。
 物語前半の推進力になっているのが、クラーラの周りで起こる不思議な出来事です。

 驚くべきことに、クラーラにはモデルがいて、それが作者の祖母なのだそうです。
 作者の祖母は、屋敷に霊術師を集めて、手を触れずに銀のベルを動かしたとか。

 ちなみに作者の叔父は、1970年にチリ大統領となったサルバドール・アジェンデ。
 しかし、1973年のクーデターによって、政権を軍部に奪われてしまい・・・

 激動の時代を体験したアジェンデは、悪魔払いのつもりで物語を書いたそうです。
 確かに、故国チリの100年の歴史の中に、アジェンデの怨念を見た気がしました。

 さて、「精霊の家」は、当時「百年の孤独」の再来などと言われました。
 しかも、「百年の孤独」よりも面白くて、また、それ以上によく売れました。

 そのため、難解な小説が読めない人のための手軽な娯楽だと言われたりもします。
 中にはこの小説を、ラテンアメリカ文学の邪道のように言う人もいるようです。

 しかし私は「精霊の家」こそ文学の正道をいくものだと、声を大にして言いたい!
 つまり、この作品によって、ラテンアメリカ文学は、本流に還ったのです。

 文学作品で最も根本的で大事な点は、分かりやすくて面白いことだと思います。
 「精霊の家」は、そのような基本路線を大切にした、文学の本来あるべき姿です。

 むしろ、ほかのヘンに小難しい小説群こそ、ひとりよがりで邪道な作品ですよ。
 特に、読んで意味の分からない小説には、文学的な価値があるとは思えません。

 現在、上巻を読み終わったところです。
 下巻では、時代が変わり、さまざまな波乱があるようです。楽しみです。

 さいごに。(本日は県大会)

 娘は1m30が跳べるようになって、陸上教室が嫌でなくなってきたのだそうです。
 レベル的にはまだまだですが、これまで本当によくがんばってきました。

 本日の県大会は、選手1人につき保護者が1人の観戦が。可能になりました。
 私はこっそり見に行って、心の中で応援したいと思っています。

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