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デ・トゥーシュの騎士 [19世紀フランス文学]

 「デ・トゥーシュの騎士」 ドールヴィイ作 中条省平訳 (ちくま文庫)


 幽閉された騎士デ・トゥーシュを救出する、ふくろう党の活躍を描いた物語です。
 1799年に起こったふくろう党の事件を題材に、波乱万丈の物語に仕立てました。


デ・トゥーシュの騎士 (ちくま文庫)

デ・トゥーシュの騎士 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/06/01
  • メディア: 文庫



 王政復古時代のある日、ベルシー神父はトゥフドリス姉妹の家を訪れました。
 途中、神父は幽霊に遭遇したのです。「あれは・・・デ・トゥーシュの騎士だ」

 この言葉をきっかけに、神父の妹ペルシー老嬢による、昔語りが始まりました。
 それは、ふくろう党の決死の12人による、デ・トゥーシュ奪回計画の顛末です。

 アヴランシュ監獄における奇襲と脱出、クタンス監獄における奪回・・・
 エメとジャックの悲劇・・・最後まで読むとエメが隠れた主役だと分かります。

 「この地上で絶対的に美しいものがたどる運命を、彼女もたどることになる!
 彼女の物語は消えてしまうのだよ・・・彼女を愛した十一人の男の物語が消えて
 しまうように。」(P86)

 訳者解説によると、作者はデ・トゥーシュが死んでいると思っていたそうです。
 ところが狂人として施設に幽閉されていることを知り、会いに行ったと言う。

 そのときの経験によって、結末部分の後日譚が生まれました。
 ただ、デ・トゥーシュとジャック氏とエメの関係を、もっと知りたかったです。

 ところでこの小説、最初の30ページほどは、なかなか物語が始まりませでした。
 そして、ベルシー兄妹の醜さが、これでもかと描かれます。しかも華麗な文体で。

 「神父の妹は不愉快な罪悪のように醜かったが、神父は妹ほど醜くはないものの、
 愉快な罪悪のように醜かった。」(P28)

 「愉快な罪悪のよう」、こんな表現、読んだことがありません。クセになります。
 時々まどろっこしく感じるものの、とても味わい深い表現が、次々と登場します。

 「反時代的ダンディズム」「世紀末デカダンスの美学」などと言われた名文です。
 今では失われた文章です。そういう意味で、ドールヴィイの作品は貴重です。

 さて、ドールヴィイといったら、短編集「悪魔のような女たち」なのだそうです。
 ぜひ読んでみたいのですが、現在は出版社にも在庫なし。重版してほしいです。


悪魔のような女たち (ちくま文庫)

悪魔のような女たち (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: 文庫



 さいごに。(私のお菓子を奪う)

 娘の持っているお菓子を、うっかり間違って食べてしまうのは、私の得意技でした。
 ところが、娘は最近食べ盛りなので、私の買ってきたお菓子を奪おうとするのです。

 意地汚いと思いつつも、少し感心します。
 幼稚園の頃、食べるのが遅くてやきもきしていたことを思えば・・・

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