デ・トゥーシュの騎士 [19世紀フランス文学]
「デ・トゥーシュの騎士」 ドールヴィイ作 中条省平訳 (ちくま文庫)
幽閉された騎士デ・トゥーシュを救出する、ふくろう党の活躍を描いた物語です。
1799年に起こったふくろう党の事件を題材に、波乱万丈の物語に仕立てました。
王政復古時代のある日、ベルシー神父はトゥフドリス姉妹の家を訪れました。
途中、神父は幽霊に遭遇したのです。「あれは・・・デ・トゥーシュの騎士だ」
この言葉をきっかけに、神父の妹ペルシー老嬢による、昔語りが始まりました。
それは、ふくろう党の決死の12人による、デ・トゥーシュ奪回計画の顛末です。
アヴランシュ監獄における奇襲と脱出、クタンス監獄における奪回・・・
エメとジャックの悲劇・・・最後まで読むとエメが隠れた主役だと分かります。
「この地上で絶対的に美しいものがたどる運命を、彼女もたどることになる!
彼女の物語は消えてしまうのだよ・・・彼女を愛した十一人の男の物語が消えて
しまうように。」(P86)
訳者解説によると、作者はデ・トゥーシュが死んでいると思っていたそうです。
ところが狂人として施設に幽閉されていることを知り、会いに行ったと言う。
そのときの経験によって、結末部分の後日譚が生まれました。
ただ、デ・トゥーシュとジャック氏とエメの関係を、もっと知りたかったです。
ところでこの小説、最初の30ページほどは、なかなか物語が始まりませでした。
そして、ベルシー兄妹の醜さが、これでもかと描かれます。しかも華麗な文体で。
「神父の妹は不愉快な罪悪のように醜かったが、神父は妹ほど醜くはないものの、
愉快な罪悪のように醜かった。」(P28)
「愉快な罪悪のよう」、こんな表現、読んだことがありません。クセになります。
時々まどろっこしく感じるものの、とても味わい深い表現が、次々と登場します。
「反時代的ダンディズム」「世紀末デカダンスの美学」などと言われた名文です。
今では失われた文章です。そういう意味で、ドールヴィイの作品は貴重です。
さて、ドールヴィイといったら、短編集「悪魔のような女たち」なのだそうです。
ぜひ読んでみたいのですが、現在は出版社にも在庫なし。重版してほしいです。
さいごに。(私のお菓子を奪う)
娘の持っているお菓子を、うっかり間違って食べてしまうのは、私の得意技でした。
ところが、娘は最近食べ盛りなので、私の買ってきたお菓子を奪おうとするのです。
意地汚いと思いつつも、少し感心します。
幼稚園の頃、食べるのが遅くてやきもきしていたことを思えば・・・
幽閉された騎士デ・トゥーシュを救出する、ふくろう党の活躍を描いた物語です。
1799年に起こったふくろう党の事件を題材に、波乱万丈の物語に仕立てました。
王政復古時代のある日、ベルシー神父はトゥフドリス姉妹の家を訪れました。
途中、神父は幽霊に遭遇したのです。「あれは・・・デ・トゥーシュの騎士だ」
この言葉をきっかけに、神父の妹ペルシー老嬢による、昔語りが始まりました。
それは、ふくろう党の決死の12人による、デ・トゥーシュ奪回計画の顛末です。
アヴランシュ監獄における奇襲と脱出、クタンス監獄における奪回・・・
エメとジャックの悲劇・・・最後まで読むとエメが隠れた主役だと分かります。
「この地上で絶対的に美しいものがたどる運命を、彼女もたどることになる!
彼女の物語は消えてしまうのだよ・・・彼女を愛した十一人の男の物語が消えて
しまうように。」(P86)
訳者解説によると、作者はデ・トゥーシュが死んでいると思っていたそうです。
ところが狂人として施設に幽閉されていることを知り、会いに行ったと言う。
そのときの経験によって、結末部分の後日譚が生まれました。
ただ、デ・トゥーシュとジャック氏とエメの関係を、もっと知りたかったです。
ところでこの小説、最初の30ページほどは、なかなか物語が始まりませでした。
そして、ベルシー兄妹の醜さが、これでもかと描かれます。しかも華麗な文体で。
「神父の妹は不愉快な罪悪のように醜かったが、神父は妹ほど醜くはないものの、
愉快な罪悪のように醜かった。」(P28)
「愉快な罪悪のよう」、こんな表現、読んだことがありません。クセになります。
時々まどろっこしく感じるものの、とても味わい深い表現が、次々と登場します。
「反時代的ダンディズム」「世紀末デカダンスの美学」などと言われた名文です。
今では失われた文章です。そういう意味で、ドールヴィイの作品は貴重です。
さて、ドールヴィイといったら、短編集「悪魔のような女たち」なのだそうです。
ぜひ読んでみたいのですが、現在は出版社にも在庫なし。重版してほしいです。
さいごに。(私のお菓子を奪う)
娘の持っているお菓子を、うっかり間違って食べてしまうのは、私の得意技でした。
ところが、娘は最近食べ盛りなので、私の買ってきたお菓子を奪おうとするのです。
意地汚いと思いつつも、少し感心します。
幼稚園の頃、食べるのが遅くてやきもきしていたことを思えば・・・
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