回想のブライズヘッド2 [20世紀イギリス文学]
「回想のブライズヘッド(下)」イーヴリン・ウォー作 小野寺健訳(岩波文庫)
ブライズヘッドにおける愛と友情の日々を、情緒豊かに描いた傑作長編小説です。
ウォーがカトリックへの改宗後初めて書いた作品で、彼の代表作となりました。
ブライズヘッドで久々に会ったセバスチアンは、完全なアル中になっていました。
やがてライダーはそこを去るとき、彼ら一族との縁は切れたものと思いました。
その後、セバスチアンはあるドイツ人の男と一緒に、モロッコに渡って行きました。
ライダーは結婚したあと、建築物専門の画家として成功し、外国を巡っていました。
妻と故国に帰る船の中で、ライダーはセバスチアンの妹ジューリアと再会し・・・
お互いを理解した二人は急速に接近し、禁断の愛に向かって進んでいき・・・
上巻は「ライダーとセバスチアンの物語」でした。
下巻は「ライダーとジューリアの物語」です。
ライダーはジューリアに言っています。「セバスチアンは前兆だった」と。
セバスチアンを愛したのは、ジューリアを愛する前触れだったということらしい。
セバスチアンとジューリアの兄妹は、ライダーにとって一心同体だったようです。
この兄妹は外見が似ていましたが、その生きざまもまた似ているように思いました。
兄のセバスチアンは外国を放浪した末、まるで殉教者のように死んでいきます。
妹のジューリアもまた、最終的には殉教者の道をたどることになります。
私には、セバスチアンの苦悩が分かりませんでした。充分説明されてなかったので。
ところがジューリアの決断の理由は、説明されればされるほど分からなくなります。
「神を相手に、神と対抗できるほどの幸せを選ぶということ」が、できないって?
私には、「神」を持ち出した瞬間、彼女が思考停止になったように思えるのです。
第一、結婚したいと言い出したのは、ジューリア自身ではなかったか?
お互いの配偶者を捨てて、真実の愛を取る。それこそ人間らしい決断なのでは?
二人が引き返すことができないところまで来た末、すべてを投げ出してしまった!
罪? いいじゃないか。彼女には、最後まで神に対抗する女であってほしかった!
さて、下巻ではジューリアの魅力に、ぐいぐい引きつけられました。
魅力的なセリフは、だいたいジューリアが言っています。
「『わたしはときどき』とジューリアは言った。『過去と未来に両側から挟まれて、
現在がまったくなくなってしまったような気のすることがあるの。」(P255)
「月が上がって沈むまでの人生なのだわ。そのあとは闇なのね」(P285)
ジューリアが突如つぶやく切ない言葉が、彼女の美しさを際立たせています。
そして、物語全体に漂う悲哀が、この作品をより魅力的にしています。
「時として二人を襲うこの悲しみは、それぞれが相手を通してその向こうにときど
きちらと見えていて、いつも一歩か二歩先に角を曲がってしまうその影を必死に追
い求めているのに見つけることができない、その失望に根ざしているのではないか」
(P301)
この小説は、「情愛と友情」という題で映画になっています。日本未公開ですが。
レンタルには置いてなかったので、私はツタヤディスカスの動画で見ました。
とても美しい映像でした。ブライズヘッド邸、オックスフォード、ベニス・・・
そして、物語が面白くなるよう、ジューリア中心のアレンジがしてありました。
ただし、客船での再会の場面から、バタバタと駆け足だったのが少し残念でした。
映画でも、ジューリアがなぜあのような決断をしたのか、納得できませんでした。
さいごに。(最近妻が優しい理由)
妻が好きなジャニーズWESTは、いつもコミカルな曲ばかり歌っています。
ところが、昨年6月に出た「証拠」は、珍しくかっこよくて、しかも歌詞がいい。
私がこの曲を気に入って口ずさんでいたら、妻はとても喜んでくれました。
このあいだのクリスマスには、ハンカチをくれました。(私は何もあげてないのに)
ブライズヘッドにおける愛と友情の日々を、情緒豊かに描いた傑作長編小説です。
ウォーがカトリックへの改宗後初めて書いた作品で、彼の代表作となりました。
ブライズヘッドで久々に会ったセバスチアンは、完全なアル中になっていました。
やがてライダーはそこを去るとき、彼ら一族との縁は切れたものと思いました。
その後、セバスチアンはあるドイツ人の男と一緒に、モロッコに渡って行きました。
ライダーは結婚したあと、建築物専門の画家として成功し、外国を巡っていました。
妻と故国に帰る船の中で、ライダーはセバスチアンの妹ジューリアと再会し・・・
お互いを理解した二人は急速に接近し、禁断の愛に向かって進んでいき・・・
上巻は「ライダーとセバスチアンの物語」でした。
下巻は「ライダーとジューリアの物語」です。
ライダーはジューリアに言っています。「セバスチアンは前兆だった」と。
セバスチアンを愛したのは、ジューリアを愛する前触れだったということらしい。
セバスチアンとジューリアの兄妹は、ライダーにとって一心同体だったようです。
この兄妹は外見が似ていましたが、その生きざまもまた似ているように思いました。
兄のセバスチアンは外国を放浪した末、まるで殉教者のように死んでいきます。
妹のジューリアもまた、最終的には殉教者の道をたどることになります。
私には、セバスチアンの苦悩が分かりませんでした。充分説明されてなかったので。
ところがジューリアの決断の理由は、説明されればされるほど分からなくなります。
「神を相手に、神と対抗できるほどの幸せを選ぶということ」が、できないって?
私には、「神」を持ち出した瞬間、彼女が思考停止になったように思えるのです。
第一、結婚したいと言い出したのは、ジューリア自身ではなかったか?
お互いの配偶者を捨てて、真実の愛を取る。それこそ人間らしい決断なのでは?
二人が引き返すことができないところまで来た末、すべてを投げ出してしまった!
罪? いいじゃないか。彼女には、最後まで神に対抗する女であってほしかった!
さて、下巻ではジューリアの魅力に、ぐいぐい引きつけられました。
魅力的なセリフは、だいたいジューリアが言っています。
「『わたしはときどき』とジューリアは言った。『過去と未来に両側から挟まれて、
現在がまったくなくなってしまったような気のすることがあるの。」(P255)
「月が上がって沈むまでの人生なのだわ。そのあとは闇なのね」(P285)
ジューリアが突如つぶやく切ない言葉が、彼女の美しさを際立たせています。
そして、物語全体に漂う悲哀が、この作品をより魅力的にしています。
「時として二人を襲うこの悲しみは、それぞれが相手を通してその向こうにときど
きちらと見えていて、いつも一歩か二歩先に角を曲がってしまうその影を必死に追
い求めているのに見つけることができない、その失望に根ざしているのではないか」
(P301)
この小説は、「情愛と友情」という題で映画になっています。日本未公開ですが。
レンタルには置いてなかったので、私はツタヤディスカスの動画で見ました。
とても美しい映像でした。ブライズヘッド邸、オックスフォード、ベニス・・・
そして、物語が面白くなるよう、ジューリア中心のアレンジがしてありました。
ただし、客船での再会の場面から、バタバタと駆け足だったのが少し残念でした。
映画でも、ジューリアがなぜあのような決断をしたのか、納得できませんでした。
さいごに。(最近妻が優しい理由)
妻が好きなジャニーズWESTは、いつもコミカルな曲ばかり歌っています。
ところが、昨年6月に出た「証拠」は、珍しくかっこよくて、しかも歌詞がいい。
私がこの曲を気に入って口ずさんでいたら、妻はとても喜んでくれました。
このあいだのクリスマスには、ハンカチをくれました。(私は何もあげてないのに)
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