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プールサイド小景・静物 [日本の近代文学]

 「プールサイド小景・静物」 庄野潤三 (新潮文庫)

                                      
 1950年代に刊行され、庄野潤三の代表作となっている7編を収録した短編集です。
 「静物」が、村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で紹介されています。


プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

  • 作者: 潤三, 庄野
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: 文庫



 恥ずかしながら私は、村上春樹の上掲の本を読んで、初めて庄野潤三を知りました。
 特に「静物」については詳しく解説されていたので興味を持ちました。

 「静物」は、ある5人家族の日常生活が、まるで静物画のように並べられています。
 子どもと釣りに行ったことや映画に行ったこと、ある新聞記事、新婚時の回想・・・

 18のエピソードをたどっていくうちに、しだいに家族の状況や雰囲気が分かります。
 そして、そこに見え隠れする何かが、我々読者の不安をかきたてるのです。

 エピソード2で、主人公の男は、妻の冷たくなった手足のことを思い出し・・・
 エピソード3で、死んで生き返った少女の話が、なぜか話題となっていて・・・

 エピソード5で、「あんなことがあった後では」と、何か事件をほのめかし・・・
 エピソード7で、「眠り続ける母を見ても・・・」と、イミシンな記述があり・・・

 どうやら妻に何かあったらしいのですが、何があったのかは全く書かれていません。
 だから推測するしかないのですが、それにしても材料不足だと思いました。

 村上春樹の本では、謎の部分がはっきり示されていたので、ありがたかったです。
 村上春樹の本を読んでいなかったら、「静物」を理解することができませんでした。

 この作品には、エピソードをそのまま並べて提示する、という特徴があるようです。
 この手法について村上春樹は、以下のような興味深い考察をしています。

 「『この作品はいちいち細部の説明・解説をしなくていいのだ」ということが最初か
 ら頭にあったはずです。『静物画を壁に並べるみたいに、ひとつひとつ丁寧に壁にか
 けていけばそれでいいのだ。それが意味と流れを自発的に作り出すのだから』という
 風に。』(「若い読者のための短編小説案内」P132)

 なお、最近になって読書仲間から、次のような有益な指摘をされました。
 「静物」とは、動かなくなった妻のことを言っているのである、と。なるほど。

 「プールサイド小景」もまた庄野潤三らしい作品ですが、ずっと分かりやすいです。
 会社のカネを使い込んでクビになった男と、その妻の心理を淡々と描いています。

 ある会社の課長代理の青木は、夕食前に家族でプールに泳ぎに来ていました。
 はたから、これぞ本当の生活だと思われていましたが、彼らには秘密があり・・・

 青木は、なぜ会社のカネを使い込むようになったのか?
 青木は、なぜ安っぽいバアに通うようになったのか?

 「男が毎朝背広に着換えて電車に乗って遠い勤め先まで出かけて行き、夜になると
 すっかり消耗して不機嫌な顔をして戻って来るという生活様式が、そもそも不幸の
 もとではないだろうか。」(P75)

 「舞踏」は職場で浮気している男と、夫に愛されたいと願う妻を描いた物語です。
 二人は結婚5年目。夫の不倫に気付きながら、妻は夫のことを思い続けています。

 男は、すすり泣く妻を叱ったり、説教したり・・・要するにサイテー野郎です。
 一方、妻はひたむきでいじらしい。こういう奥さんはめったにいませんよ!

 結末が描かれていないところが、庄野潤三らしい。ある意味、怖い終わり方です。
 「あとのことを?」と言って笑った妻・・・いったいどのような行動に出るのか?

 そして「静物」は、この物語の続編のようなのです。10年後ぐらいでしょうか。
 つまり、「舞踏」の妻はこのあと・・・

 「イタリア風」は、知り合ったイタリア出の男と再会する、少し悲しい物語です。
 ほか「相客」「五人の男」「蟹」は、いまひとつ面白さが分かりませんでした。

 庄野潤三の作品はほかに、「夕べの雲」(講談社文芸文庫)があります。
 郊外における日常生活をさらりと描いた、庄野潤三らしい作品なのだそうです。


夕べの雲 (講談社文芸文庫)

夕べの雲 (講談社文芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/04/04
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ケルヒャー大活躍)

 昨年の末に買ったケルヒャーの高圧洗浄機で、大掃除はとても楽になりました。
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ケルヒャー(KARCHER) 高圧洗浄機 K MINI 1.600-050.0

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  • 出版社/メーカー: ケルヒャー(Karcher)
  • メディア: Tools & Hardware



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