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哀しい予感 [日本の現代文学]

 「哀しい予感」 吉本ばなな (角川文庫)


 幼いころの記憶のない19歳の弥生が、おばと過ごすうちに過去を取り戻す物語です。
 ばななブームに沸く1989年に、ベストセラー7位となりました。


哀しい予感 (幻冬舎文庫)

哀しい予感 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 吉本 ばなな
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: 文庫



 19歳の弥生は、優しい両親と気の合う弟の哲生と4人で幸せに暮らしていました。
 なぜか幼いころの記憶が無くて、たまにそれが思い出せそうなときがあるのです。

 「ふいに胸の内側がざわざわする感じ。何かが、わかりそうな気配。そして何かを見
 つけることができそうな予感・・・自分の何もかもをくつがえすような出来事がやっ
 てくるような、少し恐ろしくて奇妙にわくわくして、どこかもの哀しい気持ち・・・」
 (P34)

 ある日曜日に突然現れたヴィジョンは、自分に姉がいることを暗示していて・・・
 私は、歳が近いおばのゆきのの家に行き、しばらく一緒に過ごしているうちに・・・

 父と母は、本当に父と母なのか? 弟の哲生は、本当に弟なのか?
 おばのゆきのは、本当におばなのか? そして「哀しい予感」とは何だったか?

 この小説は、大学4年の頃に出ました。学生協の書店部で買って、すぐに読みました。
 当時吉本ばななの作品は「一般教養」であり、読んでいないと恥ずかったほどです。

 さてこの作品も、「よくも悪くも少女マンガのよう」と言われていたように思います。
 マンガのように面白くて読みやすい反面、マンガのように軽くてあとに残らない・・・

 そんな批評もありましたが、吉本ばななが独自の感性を持っていたことは確かです。
 時々不意に表れる、繊細で印象的な表現に、ハッとさせられます。

 「私は目を閉じ、耳を傾け、みどりの海底にいるようだと思った。世界中が明るいみ
 どりに光って見えた。水流はゆるやかに透け、どんなにつらいことも、その中では肌
 をかすめてゆく魚の群れくらいに思えた。行きくれてそのままひとり、遠くの潮流に
 迷い込んでしまいそうな、哀しい予感がした。」(P20)

 ところでこの作品は、文庫化されるときに加筆訂正され、だいぶ変わったそうです。
 昔読んだのは単行本でした。今回読み直しても、まったく違いが分かりませんでした。

 ちなみに、吉本ばななの最大のヒット作は「つぐみ」でしょう。1989年第一位です。
 しかし、最高傑作は短編の「デッドエンドの思い出」だと、私は思っています。
 「つぐみ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-14
 「デッドエンドの思い出」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-11

 さいごに。(民主党を思い出す)

 私は、かつて枝野さんを応援していた時期があったし、優れた政治家だと思っている。
 しかし、今はなかなか支持できない。2009年の「だまされた感」が強烈だったので。

 高速道路は無料になったか? 我々は1回でも子ども手当を26000円もらえたか?
 最低賃金は1000円に近づいたか? ああ、民主党政権時代の印象はあまりにも強烈で。

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