哀しい予感 [日本の現代文学]
「哀しい予感」 吉本ばなな (角川文庫)
幼いころの記憶のない19歳の弥生が、おばと過ごすうちに過去を取り戻す物語です。
ばななブームに沸く1989年に、ベストセラー7位となりました。
19歳の弥生は、優しい両親と気の合う弟の哲生と4人で幸せに暮らしていました。
なぜか幼いころの記憶が無くて、たまにそれが思い出せそうなときがあるのです。
「ふいに胸の内側がざわざわする感じ。何かが、わかりそうな気配。そして何かを見
つけることができそうな予感・・・自分の何もかもをくつがえすような出来事がやっ
てくるような、少し恐ろしくて奇妙にわくわくして、どこかもの哀しい気持ち・・・」
(P34)
ある日曜日に突然現れたヴィジョンは、自分に姉がいることを暗示していて・・・
私は、歳が近いおばのゆきのの家に行き、しばらく一緒に過ごしているうちに・・・
父と母は、本当に父と母なのか? 弟の哲生は、本当に弟なのか?
おばのゆきのは、本当におばなのか? そして「哀しい予感」とは何だったか?
この小説は、大学4年の頃に出ました。学生協の書店部で買って、すぐに読みました。
当時吉本ばななの作品は「一般教養」であり、読んでいないと恥ずかったほどです。
さてこの作品も、「よくも悪くも少女マンガのよう」と言われていたように思います。
マンガのように面白くて読みやすい反面、マンガのように軽くてあとに残らない・・・
そんな批評もありましたが、吉本ばななが独自の感性を持っていたことは確かです。
時々不意に表れる、繊細で印象的な表現に、ハッとさせられます。
「私は目を閉じ、耳を傾け、みどりの海底にいるようだと思った。世界中が明るいみ
どりに光って見えた。水流はゆるやかに透け、どんなにつらいことも、その中では肌
をかすめてゆく魚の群れくらいに思えた。行きくれてそのままひとり、遠くの潮流に
迷い込んでしまいそうな、哀しい予感がした。」(P20)
ところでこの作品は、文庫化されるときに加筆訂正され、だいぶ変わったそうです。
昔読んだのは単行本でした。今回読み直しても、まったく違いが分かりませんでした。
ちなみに、吉本ばななの最大のヒット作は「つぐみ」でしょう。1989年第一位です。
しかし、最高傑作は短編の「デッドエンドの思い出」だと、私は思っています。
「つぐみ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-14
「デッドエンドの思い出」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-11
さいごに。(民主党を思い出す)
私は、かつて枝野さんを応援していた時期があったし、優れた政治家だと思っている。
しかし、今はなかなか支持できない。2009年の「だまされた感」が強烈だったので。
高速道路は無料になったか? 我々は1回でも子ども手当を26000円もらえたか?
最低賃金は1000円に近づいたか? ああ、民主党政権時代の印象はあまりにも強烈で。
幼いころの記憶のない19歳の弥生が、おばと過ごすうちに過去を取り戻す物語です。
ばななブームに沸く1989年に、ベストセラー7位となりました。
19歳の弥生は、優しい両親と気の合う弟の哲生と4人で幸せに暮らしていました。
なぜか幼いころの記憶が無くて、たまにそれが思い出せそうなときがあるのです。
「ふいに胸の内側がざわざわする感じ。何かが、わかりそうな気配。そして何かを見
つけることができそうな予感・・・自分の何もかもをくつがえすような出来事がやっ
てくるような、少し恐ろしくて奇妙にわくわくして、どこかもの哀しい気持ち・・・」
(P34)
ある日曜日に突然現れたヴィジョンは、自分に姉がいることを暗示していて・・・
私は、歳が近いおばのゆきのの家に行き、しばらく一緒に過ごしているうちに・・・
父と母は、本当に父と母なのか? 弟の哲生は、本当に弟なのか?
おばのゆきのは、本当におばなのか? そして「哀しい予感」とは何だったか?
この小説は、大学4年の頃に出ました。学生協の書店部で買って、すぐに読みました。
当時吉本ばななの作品は「一般教養」であり、読んでいないと恥ずかったほどです。
さてこの作品も、「よくも悪くも少女マンガのよう」と言われていたように思います。
マンガのように面白くて読みやすい反面、マンガのように軽くてあとに残らない・・・
そんな批評もありましたが、吉本ばななが独自の感性を持っていたことは確かです。
時々不意に表れる、繊細で印象的な表現に、ハッとさせられます。
「私は目を閉じ、耳を傾け、みどりの海底にいるようだと思った。世界中が明るいみ
どりに光って見えた。水流はゆるやかに透け、どんなにつらいことも、その中では肌
をかすめてゆく魚の群れくらいに思えた。行きくれてそのままひとり、遠くの潮流に
迷い込んでしまいそうな、哀しい予感がした。」(P20)
ところでこの作品は、文庫化されるときに加筆訂正され、だいぶ変わったそうです。
昔読んだのは単行本でした。今回読み直しても、まったく違いが分かりませんでした。
ちなみに、吉本ばななの最大のヒット作は「つぐみ」でしょう。1989年第一位です。
しかし、最高傑作は短編の「デッドエンドの思い出」だと、私は思っています。
「つぐみ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-14
「デッドエンドの思い出」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-11
さいごに。(民主党を思い出す)
私は、かつて枝野さんを応援していた時期があったし、優れた政治家だと思っている。
しかし、今はなかなか支持できない。2009年の「だまされた感」が強烈だったので。
高速道路は無料になったか? 我々は1回でも子ども手当を26000円もらえたか?
最低賃金は1000円に近づいたか? ああ、民主党政権時代の印象はあまりにも強烈で。
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