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半身 [20世紀イギリス文学]

 「半身」 サラ・ウォーターズ作 中村有希訳 (創元推理文庫)


 ヴィクトリア朝のミルバンク監獄を舞台にした、貴婦人と女囚の謎めいた物語です。
 1999年に出てモーム賞を受賞し、日本でも「このミス」海外部門1位となりました。


半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2003/05/24
  • メディア: 文庫



 1874年9月、老嬢のマーガレット・ブライアは、ミルバンク監獄を慰問しました。
 怪物にたとえられる堅牢な建物の中、さまざまな女囚たちが監禁されていました。

 マーガレットはそこで、不思議な雰囲気を持つ19歳の美しい女囚と出会いました。
 彼女の名はシライナ。彼女は霊媒で、1年前に貴婦人を怪我させたのだそうです。

 「霊はいつでもわたしたちのまわりにいる」
 シライナと言葉を交わしたことで、彼女のことが急に気になり始めました。

 やがて不思議なことが起こり、マーガレットはシライナの能力を信じ始め・・・
 交流するうちに知らず知らず惹かれ合い、やがてふたりの関係は・・・

 この物語の大きな魅力は、ミルバンク監獄のおどろおどろしい雰囲気です。
 我々読者もまた、どこに連れて行かれるのか分からない恐怖があります。

 そしてもうひとつの魅力が、妖しい魅力を持ったシライナです。
 霊媒としての彼女の言葉が、ますます我々読者を迷わせます。

 そう、霊は誰かのもとに飛んでいく。わたしたちはみんな誰かのもとに飛んでいって、
 ふたりでひとつの光り輝く魂に戻る。裂かれた魂のかたわれと、ふたりでひとつ。魂
 の半身と。」(P287)

 「わたしはあなたを探すために生まれてきた、あなたはわたしを探すために生まれて
 きた。あなたはわたしを求めていたの、あなたの半身を。」(P374)

 シライナが監獄にいるなら、マーガレットもまた家庭という監獄にいました。
 ふたりが求めたのは自由。シライナは自由を手にするか? マーガレットはどうか?

 そして、終盤の怒涛の展開と、おどろくべきラスト。
 本当によくできたミステリー小説だと思いました。

 作者サラ・ウォーターズは、ヴィクトリア朝を描いた作品で知られています。
 と同時に、レズビアン小説でも知られています。本作もそのひとつです。

 彼女の作品で、「半身」以上に評価が高いのが次作「荊(いばら)の城」です。
 「このミス」海外部門で、二作連続で一位となりました。いつか読みたいです。


 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2004/04/22
  • メディア: 文庫



 さいごに。(見てくれる人は?)

 高校生になって、娘の朝の準備時間が長くなりました。
 髪の毛をやたらといじくって・・・お前、見てくれる人がそんなにいるのか?

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