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インドへの道1 [20世紀イギリス文学]

 「インドへの道」 E・M・フォースター作 小野寺健訳 (河出文庫)


 イギリスとインド、異なる文化を持つ者たちに現れるさまざまな亀裂を描いています。
 1924年刊行。フォースターの最後にして最大の傑作です。分かりやすい小野寺訳です。


インドへの道 (河出文庫 フ 21-1)

インドへの道 (河出文庫 フ 21-1)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2022/10/06
  • メディア: 文庫



 主人公の外科医のアジズは、インドの上流階級に属する青年で、イスラム教徒です。
 普段から、「イギリス人と友達になるのは可能か」という問題を考えています。

 当時のインドはイギリスの支配下にあり、人種間に明らかな差別があったからです。
 イギリス人は、インド人はもちろん、インド人と交流する者さえ軽蔑していました。

 しかし、イギリス人の中にも、インドを好み、インドに理解を示す人物もいました。
 そのひとりが、官立大学の学長フィールディングで、この物語の第2の主人公です。

 フィールディングがアジズをお茶に招待したことで、ふたりに友情が芽生えました。
 そのお茶会には、イギリスの老婦人と若い娘もいて、和やかに時間が過ぎました。

 アジズはついその席上で、「マラバー洞窟に招待しますよ」と口走ってしまいます。
 うっかり言ったひとことが、やがてアジズ自身を縛り、悲劇へと導いていくのです。

 「誰一人乗り気な者はいなかった。ところが、それは実現してしまったのである。」
 そして、若い娘アデラは途中ではぐれて、なぜかひとり慌てて帰ってしまいました。

 アデラはいったいどうしたのか? なぜ何も言わずに帰ってしまったのか?
 マラバー洞窟で何があったのか? それとも、何もなかったのか?

 そして、帰ってきたアジズは、いきなり駅で逮捕されてしまい・・・
 もやもやしたままどんどん進みます。まるでミステリー小説です。

 舞台は、インドのチャンドラポワという架空の町です。
 冒頭におけるこの町の描写がすごい。最初から不吉なことが起こりそうなのです。

 「目に入るものすべてがあまりにも貧弱であまりにもつまらないものだから、ガンジ
 スが増水したときには、このおできのような余計者を洗いながして土に還してくれれ
 ばくらいの気持ちにはなった。家は倒れ、人は水に溺れて腐るにまかされていても、
 町全体の輪郭は、下等でも死ぬことはない生物のように、こっちが膨らめばあっちが
 縮んで一向に変わらないのだ。」(P9)

 これが、イギリス人側から見たチャンドラポワの姿だったのでしょう。
 イギリス人にとってインドは、「つまらないもの」「余計者」「下等」な生物です。

 そしてまたそれは、インド人が見た母国の惨めな姿だったのかもしれません。
 それは、イギリスの植民地となって、無力な自分たちの姿を写しているようです。

 最初からイギリス人には、インド人に対する蔑(さげす)みと侮りがありました。
 最初からインド人には、イギリス人に対する嫌悪と諦めがありました。

 そういった感情がぐじゃぐじゃと渦巻いていたのが、チャンドラポワの町なのです。
 インドにおけるそういった感情を、フォースターは書きたかったように思いました。

 現在、ようやく半分ほど読み終わったところです。しかし、まだ物語の発端です。
 このあと裁判に入りますが、絶望的な展開がありそうで、なかなか気が進みません。

 さいごに。(ifoneの値段にびっくり)

 これまで使っていたガラケーは、ラインができなくなるなど、不便になりました。
 infobar xv にはこだわりがありましたが、とうとうスマホに変える決意をしました。

 ifoneのSEにしました。最新機種は14万円(御冗談を!)もするので手が出ません。
 SEなら7万円台(それでも高いって!)でした。円安で値上げしたのでしょうか。

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