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オペラ座の怪人1 [20世紀フランス文学]

 「オペラ座の怪人」 ガストン・ルルー作 平岡敦訳 (光文社古典新訳文庫)


 オペラ座に住みつく怪人エリックと、オペラ座の歌手クリスティーヌの物語です。
 1910年の刊行以来、現在まで世界中で読まれ、舞台や映画にもなっています。


オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/09/26
  • メディア: Kindle版



 「オペラ座の怪人(ファントム)は実在した。」(冒頭)
 この小説は、作者が30年前の事件の全貌を読者に伝える、という形をとっています。

 その年のオペラ座では、骸骨のような顔の怪人が出たという噂で持ちきりでした。
 怪人は実在し、二人の支配人が辞任したのも、怪人の要求にうんざりしたからです。

 怪人は新支配人にも、報酬やボックス席、クリスティーヌの抜擢等を要求しました。
 二人の新支配人がそれを無視したため、オペラ座はある夜、大惨事に見舞われます。

 マルガレーテを歌うスター歌手の口から、突如ヒキガエルの声が出始めたのです。
 そして巨大なシャンデリアが、ホールの天井から一階席の真ん中に落下したのです。

 その直後、歌姫のクリスティーヌ・ダーエが、行方不明になりました。
 彼女の幼馴染で、彼女に恋する貴族ラウールは、心配でたまらず家を訪ねました。

 クリスティーヌと同居する夫人は、「彼女は音楽の天使と一緒だ」などと言います。
 ラウールは戸惑い、2週間後に彼女が無事に戻ってからは、疑心暗鬼になりました。

 ラウールが楽屋に忍び込んだとき、クリスティーヌは「エリック」とつぶやき・・・
 音楽の天使とは何者か? エリックとは何者か? 行方不明の間に何があったのか?

 「オペラ座の怪人」は、当時流行したゴシック・ホラー小説です。
 同時に推理小説であり、恋愛小説であり、冒険小説であって、まったく飽きません。

 前半を読んだ時点では、恋愛小説の要素が強かったです。
 この物語の前半のテーマは、「許されない愛」でしょうか。

 幼馴染のクリスティーヌとラウールは、身分の違いによって隔てられています。
 クリスティーヌと「オペラ座の怪人」は、その境遇によって隔てられています。

 主にラウールを中心に進行しますが、彼にとって怪人はただの恋敵ではありません。
 クリスティーヌにとっての恩人であるので、彼女は怪人に同情を寄せてもいます。

 その点が三人の関係を複雑にしています。特にクリスティーヌの気持ちは複雑です。
 怪人から逃れたいと思いながら、怪人を見捨てることはどうしてもできません。

 「見ろ! 思う存分、目を楽しませろ。わたしの呪われた醜さをたっぷり楽しめ。
 エリックの顔をとくと眺めるんだ。さあ、これが声の主の顔だ。(中略)この顔を
 見た女は、わたしのものだ。おまえのようにな。わたしを永遠に愛し続ける。わた
 しはドン・ジョヴァンニのような男なんだ」(P279)

 この自嘲の言葉は、恐ろしいというより、むしろ悲しいです。
 「勝ち誇ったドン・ジョヴァンニ」という曲を、作り続けている点などは・・・

 ところで、私が面白いと思ったのは、クリスティーヌが怪人の声を天使の声だと信
 じた理由について、彼女の子供時代をたどりながら丁寧に説明しているところです。

 「一生に一度、音楽の天使が現れる」という、父の教えと、その父の死・・・
 そして、その流れの中で、クリスティーヌとラウールの幼い恋が語られています。

 このエピソードは、これだけで一つの短編小説になりそうな魅力がありました。
 本筋とは外れていますが、こういう部分が、味わいを深くしていると思います。

 さて、本を読んでいる間「オペラ座の怪人」の曲が常に頭の中で回っていました。
 舞台や映画で使われてきたこの曲は、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。



 さいごに。(スマホにしたのに)

 スマホにしたので、LINE や QRコード ができるようになりました。
 しかし、ガラケーに比べて、「難しい感」がハンパ無いです。

 便利になったはずなのに、かえって持ち歩かないことが多くなりました。
 LINE の返事を二日後に送ったりして・・・

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