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果しなき流れの果に [日本の現代文学]

 「果しなき流れの果に」 小松左京 (ハヤカワ文庫)


 二つの組織が、果てしない時間の中で闘争する様子を描いた、日本SFの古典です。
 1965年に発表され、読者から小松左京の最高傑作とも言われている作品です。


果しなき流れの果に (角川文庫)

果しなき流れの果に (角川文庫)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/04/25
  • メディア: Kindle版



 野々村青年は、あるとき二人の大学教授から、不思議な砂時計を見せられました。
 上の砂はいくらこぼれても減らず、下の砂はいくらたまっても増えないのです。

 この砂時計の上部と下部は、四次元空間でつながっているとしか考えられません。
 しかもこれは、ある古墳の奥にある、白亜紀の地層から出土したと言うのです。

 野々村は、番匠谷(ばんしょうや)教授らの発掘作業を手伝うことになりました。
 彼は、古墳で小さなプラチナ片を拾い、しかも岩窟の中に人の気配を感じました。

 その夜、野々村の泊まっている部屋に、恋人の佐世子が突然やってきました。
 彼女は、野々村が急にどこかに行ってしまいそうな予感がすると言うのです。

 「あなたは、いずれかえってくるわ。ずーっと先になって・・・それでも、私の
 生きているうちに、かえってくる。すっかり年をとってーー長い長い、はてしな
 い旅につかれきって・・・」(P81)

 その夜中、東京で大泉教授が急死したと聞き、野々村は空港に向かいました。
 ところが、そのタクシーの中で、野々村は忽然と姿を消してしまったのです。

 翌日、番匠谷教授は、古墳に行ったところ、瀕死の重傷を負って・・・
 砂時計に関わった人々が、次々と謎の死を遂げたり、失踪したり・・・

 野々村はどこに行ったのか? あの砂時計は何なのか?
 これらの事件の裏にあるのは、いったい何なのか?

 第一部までが、めちゃくちゃ面白かったです。
 私は妄想しました。「これは人類誕生以前の、超古代文明の物語だろう」と。

 ところが第二部の展開は、私の想像をはるかに超えていました。
 あまりにも壮大で、スケールの大きい世界観でした。

 どうやら、いくつかの時間の流れと、いくつかの宇宙があるようです。
 すべての時空を超えたところに、「超越者」なるものがいるようです。

 また、第二部になると、時間も空間も次々に変わります。実に複雑で難解です。
 私は、恥ずかしながら、途中で物語について行けなくなりました。

 私には、なぜ野々村が「N」として活動することになるのか、分かりませんでした。
 タクシーで姿を消してから、野々村の身にいったい何があったのでしょうか。

 私的には、物語を野々村の周辺に絞って、単純で分かりやすくしてほしかったです。
 自分の理解力の無さを棚に置いて言うと、作品にも破綻があるように思いました。

 さて、小松左京にはほかに、「首都消失」や「虚無回廊」などの傑作があります。
 しかし私が気になるのは、短編の「ゴルディアスの結び目」です。


ゴルディアスの結び目 (角川文庫)

ゴルディアスの結び目 (角川文庫)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



 さいごに(2月発売の気になる文庫本)

 ・「一人称単数」 村上春樹 (文春文庫)
  2020年に刊行された、8作からなる短篇小説集。待望の文庫化です。

 ・ 「ギリシア・ローマの文学」 高津春繁 (講談社学術文庫)
  古代ギリシアとローマの傑作の数々を、その時代背景とともに解説した本です。

 ・「アンクル・トムの小屋」ハリエット・ビーチャー・ストウ(光文社古典新訳文庫)
  ずっと絶版だったため、文庫で読めなかった本の新訳です。ありがたいです。

 ・「うんこ文学」 頭木弘樹 (ちくま文庫)
  副題は「漏らす悲しみを知っている人のための17の物語」。とても気になります。


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