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チボー家の人々4 美しい季節Ⅱ [20世紀フランス文学]

 「チボー家の人々」 マルタン・デュ・ガール作 山内義雄訳 (白水Uブックス)


 3人の少年たちが成長していく約10年を、世界情勢を交えながら描いた大河小説です。
 全8部(新書で13巻)。第3部「美しい季節」は1923年刊行。最終巻は1940年刊行。


チボー家の人々 4 美しい季節 (白水Uブックス 41)

チボー家の人々 4 美しい季節 (白水Uブックス 41)

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1984/03/01
  • メディア: 新書



 巻のタイトル「美しい季節」とは、彼らの青春と恋の季節を象徴しています。
 アントワーヌとラシェルの恋は? ジャックとジェンニーの交流も気になります。

 しかし、第4巻「美しい季節Ⅱ」で、一番強烈な印象を残すのは、ジェロームです。
 ジェロームはダニエルの父で、この6年間家を放って愛人ノエミと暮らしています。

 ところが、ノエミが危篤となってカネを使い果たすと、妻に泣きついてくるのです。
 妻を電報で呼び出して、借金を払わせて・・・しかも、これだけで終わりません。

 かつての恋人リネットを見つけ出すと、手に入ったカネを渡し年金の約束もします。
 しかも送金は、妻にさせようと考えているのです。クズ男、ここに極まれり!

 しかも本人は、リネットを救ったことで、良いことをしている気でいるのです。
 クズ男も、ここまでくるとかえって立派です。ある意味、愛すべき存在ですよ。

 「みんなはおれを悪い人間だと言っている。みんなは知らないんだ。おれは、自分
 の行いにあらわれているのより、ずっとずっとよい人間なんだ」(P162)

 ああ、フォンタナン夫人。クズ男ジェロームを甘やかしている夫人も夫人ですよ。
 そういうところを見て育ったら、長男ダニエルだって、そりゃぐれるでしょうよ。

 さて、この巻にはもうひとりの強烈なクズ男が登場します。それはイルシュです。
 イルシュは、ラシェルのかつての情夫ですが、これがとんでもない悪党なのです。

 ラシェルにはかつてクララという友人がいて、その父親(?)がイルシュでした。
 ところがイルシュは、クララと・・・ラシェルの兄アーロンの死もまた・・・

 イルシュは怪物です。イルシュに比べたら、ジェロームがかわいく見えてきます。
 それなのに、ラシェルはイルシュから離れられません。こういう奴が一番ヤバい。

 一方、ジャックとジェンニーの恋は、あまりにも純真で、なかなか進展しません。
 この2人が物語の本道なのに、悪党二人に挟まれて、あまり存在感がありません。

 さて、美しい季節は短い。この巻のラストで、アントワーヌは失恋しています。
 しかし次巻「診察」では、仕事に没頭することで完全復活するそうです。えらい。


チボー家の人々 5 診察 (白水Uブックス 42)

チボー家の人々 5 診察 (白水Uブックス 42)

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1984/03/01
  • メディア: 新書



 さいごに。(メガネを外せば)

 「増税メガネ」がすっかり世に浸透しました。今年の流行語大賞の最有力候補だとか。
 それにしても、「レーシックにすればいいのか」という首相の切り返しはうまかった!

 レーシックにして、メガネを外せばイケメンだということを、我々に気付かせたので。
 「増税は首相のせいではなくメガネのせいだ」と言う人まで出てくる始末です。(笑)

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