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チボー家の人々11 [20世紀フランス文学]

 「チボー家の人々11」 マルタン・デュ・ガール作 山内義雄訳 (白水Uブックス)


 3人の青年たちが成長してい10年を、世界情勢を交じえながら描いた大河小説です。
 今回紹介するのは白水Uブックスの第11巻で、第七部「一九一四年」の最終巻です。


チボー家の人々 11 1914年夏 (白水Uブックス 48)

チボー家の人々 11 1914年夏 (白水Uブックス 48)

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 新書



 8月2日、パリで総動員令が発令され、ジャックはスイスに赴く決意をしました。
 ジュネーブの同志と活動するつもりです。ジェンニーも一緒に行くと言いました。

 ふたりは出発する前、ジェンニーの家で一夜を過ごし、初めて関係を持ちました。
 そして、まさにその夜、フォンタナン夫人はオーストリアから帰ってきたのです。

 翌日ジャックは、アントワーヌが軍医として連隊へ行くのを、見送りに行きました。
 ふたりとも、これが最後になるのではないか、という不吉な予感を持っていました。

 そのときジェンニーは、母フォンタナン夫人に、スイス行きを止められていました。
 ジェンニーは、ジャックとの待ち合わせ場所に行きますが、出発はしませんでした。

 総動員令発令後、パリは戦争ムード一色で、多くの社会主義者が転向していました。
 戦争反対を唱えていた人々が戦争に参加し、反戦運動は崩壊したように見えました。

 そういう状況下で、ミトエルクは銃殺されるためにオーストリアに帰国したのです。
 ジャックもまた、自分に何ができるのか、命を懸けて何をなすべきかを考えて・・・

 ジャックがしようとしたことは・・・私には、まるで夢物語のように思えました。
 というか、ジャックはそれを信じていません。自ら破滅に向かっているようなのです。

 「おれには、戦争をせきとめることなぞできやしまい・・・誰も助けることなんかで
 きやしまい。助かるのはおれだけなんだ・・・だが、おれだけは、なすべきことをや
 ってのけ、自分自身を助けるのだ!(中略)そして、死の中へ逃げ込むこと」(P232)

 そして、メネストレルもまた、ジャックの計画を信じていないようなのです。
 ではなぜ、ジャックの計画に参加するのか? そして、フライト中に取った行動は?

 いろんな謎を残しながらも、物語はいっきにクライマックスに向かっていきます。
 ところが、その結末はあまりにもあっけないのです。いったい、どうして?

 もし彼らが成功してしまうと、歴史的事実から逸脱してしまうからでしょうか。
 もしくは、作者の伝えたいことは、アジビラに充分に書かれているからでしょうか。

 「フランスにおいてもドイツにおいても、国家は、少数者のみを代表し、投機業者一
 派の代理公使にすぎない。それら一派にとっては、金銭だけが力であり、しかも、彼
 らは今日、銀行、大会社、運輸、新聞、軍備、計画、あらゆるものを掌握している!
 彼らこそは、大多数の犠牲において特定の人々の利益をはかろうとする封建的社会組
 織の絶対君主だ!」(P203)

 国家が少数の資本家に掌握されているという見方は、現代にも通じるものではないか。
 そして、こういう記述にこそ、ノーベル文学賞受賞の理由があるような気がします。

 世界大戦が、アントワーヌとジャックとダニエルとジェンニーを、離ればなれに・・・
 次の第12巻「エピローグⅠ」では、彼らのその後がどのように語られるのでしょうか。 

 さいごに。(エクシブ)

 縁があって、会員制の高級リゾートホテル「エクシブ」に泊まりました。
 ゴージャスでした。温泉が良かったです。私は4回入りました。

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