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チボー家の人々12 [20世紀フランス文学]

 「チボー家の人々12」 マルタン・デュ・ガール作 山内義雄訳 (白水Uブックス)


 3人の青年たちが成長してい10年を、世界情勢を交じえながら描いた大河小説です。
 今回紹介するのは白水Uブックスの第12巻で、第八部「エピローグⅠ」です。


チボー家の人々 12 エピローグ (白水Uブックス 49)

チボー家の人々 12 エピローグ (白水Uブックス 49)

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 新書



 ジャックが死んでから4年後の1918年、アントワーヌはガス中毒療養所にいました。
 毒ガスにやられた唯一の軍医となった彼は、症状の詳細なメモをつけていました。

 療養所で、親戚のヴェーズ老嬢が死んだことを知り、葬儀のためパリに帰りました。
 アントワーヌは老嬢の埋葬を終えると、翌日メーゾン・ラフィットを訪れました。

 そこは、彼らの若き日の「美しい季節」の舞台ですが、変わり果てていました。
 別荘は病院に改造されて、今ではフォンタナン夫人が采配をふるっているのです。

 ジーゼルとニコルはその病院で働き、ジェンニーはジャックの遺児を育てています。
 片足を失ったダニエルは腑抜けのようになり、ジャックの遺児の世話をしています。

 アントワーヌは、ジーゼルと話し、ジェンニーと話し、ダニエルと話し・・・
 そしてアントワーヌは、久しぶりに穏やかで温かい時間を過ごして・・・

 「一九一四年夏」が出たとき、多くの人がこの小説は完結したのだと考えました。
 というのも、最後にジャックが死んでしまうからでしょう。

 解説によると、作者は慌てて「エピローグ」が続くことを知らせようとしました。
 「エピローグ」はアントワーヌの巻であり、真の主人公は彼なのだと言うのです。

 確かにこの長大な小説は、アントワーヌに始まってアントワーヌに終わっています。
 舞台は変わらず第一次世界大戦下ですが、物語はまたホームドラマに戻りました。

 もうひとり、この巻を象徴するのが、ジャックの遺児であるジャン・ポールです。
 そしてようやくここで、「チボー家の人々」というタイトルの意味が分かりました。

 私は最初、それはジャックとアントワーヌだけを指しているのだと思っていました。
 それなのに、なぜダニエルなどフォンタナン家を描くのかと、疑問に思ったのです。

 ジャン・ポールを含んで「チボー家の人々」だと理解したとき、疑問が解けました。
 フォンタナン家は、この子の母ジェンニーの家だからなのですね。(今さら!)

 つまりこの小説は、チボー家とフォンタナン家の血がひとつに交わる物語なのです。
 ある意味で、フォンタナン家の人々もまた「チボー家の人々(一員)」なのです。

 さて、次回はいよいよ最終回です。
 どのような終わり方をするのでしょうか。やはりアントワーヌは死ぬのでしょうか。

 さいごに。(奈良に行こう)

 娘が修学旅行で奈良に行きながら、東大寺も興福寺も見なかったと言うのです。
 ではいったい何をしていたのか? 奈良公園で鹿とずっとたわむれていたとのこと。

 怒れました。そこで、2月のどこかで「追修学旅行」を家族で行うことにしました。
 今度は、東大寺や興福寺しか見ないという、寺と仏像巡りをしたいと思っています。

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