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失われた時を求めて14 [20世紀フランス文学]

 「失われた時を求めて7」 マルセル・プルースト作 吉川一義訳 (岩波文庫)


 記憶の中から失われた時を紡ぎ出して、人生の本質を考察する長大な小説です。
 20世紀を代表する作品であり、世界一長い小説としてギネスに登録されています。

 第三篇「ゲルマントのほう」は、1920年から21年にかけて刊行されました。
 前回は岩波文庫版の第7巻の前半を紹介しました。今回はその後半を紹介します。


失われた時を求めて(7)――ゲルマントのほうIII (岩波文庫)

失われた時を求めて(7)――ゲルマントのほうIII (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: 文庫



 「私」は、憧れだったゲルマント公爵邸の晩餐に、とうとうやってきました。
 公爵邸のサロンは、フォーブール・サン=ジェルマン第一の地位を保っていました。

 特に公爵夫人(オリヤーヌ)は社交界の花形で、その言動は注目の的でした。
 ロシア大公に「トルストイを暗殺させるお考えですね」と言ったことさえあります。

 「私」は晩餐会の間、さまざまなおしゃべりを耳にして、幻滅を味わっていました。
 くだらない話題しか出ないのは、私が参加しているからではないのか、と考えます。

 このあと「私」はシュルリュス邸を訪問しましたが、なぜか男爵は不機嫌でした。
 「私はあなたを買いかぶっていた。われわれの関係もこれで終わりだ」と言います。

 以前男爵の届けてくれた本の装丁には、忘れなぐさの飾りがついていたそうです。
 そして、それは「私をお忘れなく」というメッセージであり、告白であったのです。

 「私はあなたのために、口に出すことこそ控えはしたが、それこそ誰もが垂涎の的と
 するような厚遇を授けようと考えていた。そんなことも知らずに拒絶する道を選んだ
 のは、あなたの勝手です。」(P470)

 わめき散らす男爵に対して怒った「私」は、彼のシルクハットを踏みつけて壊し・・・
 男爵は「私」との関係は終わりだと言いながら、なぜかいつまでも引き留めて・・・

 第7巻「ゲルマントのほうⅢ」の半分以上がゲルマント公爵邸の晩餐会の場面です。
 P163からP448の約300ページほどが占められているのです。わずか数時間のために。

 しかし、えんえんと続くこの場面は、ただただ退屈なだけです。
 おそらく、晩餐会の長く退屈な時間を、読者にも味わわせようとしたのでしょう。

 むしろ面白いのは、それが終わってから立ち寄ったシュルリュス邸訪問の場面です。
 やっぱりシュルリュス男爵ですよ。この男の謎めいた変人ぶりは魅力的です。

 わめきながら「私」を非難するかと思えば、「あなたを愛するがゆえ」と言ったり、 
 ふたりの仲は終わりだと言っておきながら、「泊まっていくように」と言ったり。

 この矛盾する言動の裏には、男爵が高慢でしかも〇〇であるという事実があります。
 小説でそれが充分暗示されているのに、「私」がまるで気づかない点が面白いです。

 この場面では、「私」という存在感の無い男が、珍しく思い切った行動に出ます。
 なんと、わいわいわめく男爵の、シルクハットを踏みつけて壊してしまうのです。

 意志薄弱で頼りない「私」が、これほど大胆な行動に出たことはありませんでした。
 そういう意味で、実に興味深い場面です。

 さて、シャルリュス男爵の本領発揮は、次の「ソドムとゴモラ」でしょう。
 しかしその前に、この巻の末尾で語られる、スワンの凋落した姿に注目です。

 ゲルマント侯爵夫人がスワンに言います。「一緒にイタリアにいきませんか」と。
 10か月も前のことなのに、スワンは行けそうにないと答えます。その理由は・・・

 「その何ヵ月も前に死んでいるからです。」スワンは死の病におかされています。
 やがて訪れるスワンの死を暗示して、「ゲルマントのほう」は終わるのです。

 さいごに。(おいしかったラーメン)

 先日、県内にある某ラーメン店に行きました。めちゃおいしかったです。
 チャーシューめんを食べましたが、チャーシューの量が半端なくてたいへんでした。

ラーメン.png

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