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ほら吹き男爵の冒険 [18世紀文学]

 「ほら吹き男爵の冒険」 G・A・ビュルガー作 酒寄進一訳 (古典新訳文庫)


 実在したミュンヒハウゼン男爵の、さまざまな冒険における奇想天外な物語です。
 1788年刊行。「ほら吹き男爵」物語群の完成版です。数々の楽しい挿し絵付きです。


ほら吹き男爵の冒険 (光文社古典新訳文庫)

ほら吹き男爵の冒険 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/09/14
  • メディア: Kindle版



 狩猟に出て、湖で数十羽の野ガモを見つけましたが、すでに弾はありませんでした。
 そこで男爵は、ベーコンの残りを長い長い紐に結んで、野ガモの群れに投げました。

 一羽の野ガモがそれを食べましたが、ベーコンは消化されずに尻から出てきました。
 そのベーコンをもう一羽が食べ、尻から出てきたベーコンをほかの一羽が食べ・・・

 という具合に、紐に通した真珠さながら、数十羽の野ガモがすべてつながれました。
 そして、野ガモが一斉に飛び立ったため、男爵は空中を飛んで楽々帰ってきました。

 トルコ軍と戦った折、愛馬に乗って要塞に駆け込んだ途端、格子が落とされました。
 そのため愛馬は前後で切断されましたが、男爵はそれを知らず敵を蹴散らしました。

 やがて馬は水を飲み始めましたが、後ろが無いので飲んだ水はそのまま流れました。
 馬の後ろ半分はすでに牧場に帰っていたため、鍛冶屋に胴をつなぎ止めさせました。

 また、味方の撃った大砲の玉に乗って、敵軍に向かっていったこともあります。
 途中で気が変わり、空中で相手の撃った玉に乗り移って、自軍に帰って来ました。

 話はどんどん大きくなります。あるときは、トルコ豆のつるを登って月に行きます。
 またあるときは、暴風に見舞われた船が空に投げ出され、風を受けて月に行きます。

 またあるときは、エトナ火山を真っ逆さまに落ちて、地球の反対側から出てきます。
 またあるときは、大鯨に船ごと飲み込まれ、その腹の中で1万人の人々に会い・・・

 という具合に、ほら話は止まりません。読んでいてとても愉快な気分になります。
 しかも、挿し絵が付いているのでとても楽しく読み進めることができました。

 中には、味わいのあるほら話もありました。それが、御者の鳴らなかった角笛です。
 なぜ角笛は鳴らなかったのか? それは、寒さで音が凍結したためだと言うのです。

 やがて寒さがゆるんだとき、角笛の中の音は溶けて、勝手に鳴り始めるのでした。
 そして言います。「もし疑う人がいたら、その方々の猜疑心を気の毒に思う」と。

 まじめな顔をして大法螺を吹くところは、「ガリバー旅行記」にそっくりです。
 実際「ガリバー旅行記」が引用されているので、影響を受けているのが分かります。

 さて、「ほら吹き男爵」は「ミュンヒハウゼン男爵」のことで、実在していました。
 物語にある通り、ロシア帝国に仕官して、トルコ戦争に従軍しているのだそうです。

 そして彼は自分の体験を、周りの者たちに生き生きと語って聞かせたのだそうです。
 しかし、まさか自分が「ほら吹き男爵」と呼ばれるなど想像できなかったでしょう。

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