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ブルーもしくはブルー [日本の現代文学]

 「ブルーもしくはブルー」 山本文緖 (角川文庫)


 自分とまったく違う生活をしている自分の分身と、1ヶ月だけ入れ替わる物語です。
 1992年刊行。初期の頃のファンタジー&ホラー作品で、NHKドラマになりました。


ブルーもしくはブルー (角川文庫)

ブルーもしくはブルー (角川文庫)

  • 作者: 山本 文緒
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/05/21
  • メディア: Kindle版



 佐々木蒼子は、偶然訪れた福岡の街で、かつて恋人だった河見を見かけました。
 追いかけると、河見が自分とそっくりな女性と一緒だったので、興味を持ちました。

 彼女の名前は、河見蒼子。佐々木蒼子と、名前も生年月日も、記憶も同じなのです。
 河見蒼子(蒼子B)は、佐々木蒼子(蒼子A)の分身なのではないでしょうか。

 いわゆるドッペルゲンガーです。では、蒼子はいつ自分から分離したのでしょう?
 それは以前、佐々木と河見のどちらと結婚するか、死ぬほど悩んだときではないか。

 のちに、けんか別れしていた父と再会したとき、父には蒼子Bが見えませんでした。
 どうやら蒼子Aが本体であり、蒼子Bが影のようです。蒼子Bは落ち込みました。 

 ところで、蒼子Aは6年前に佐々木と結婚し、東京でぜいたくに暮らしています。
 しかし現在、佐々木には恋人がいて、蒼子Aは満たされない毎日を過ごしています。

 蒼子Bは、河見と結婚して、福岡で質素に暮らしながらも、河見に愛されています。
 しかし、河見は酔っぱらうと乱暴になり、蒼子Bはたびたび殴られているのです。

 蒼子Aは、河見と結婚した蒼子Bを羨み、1か月間入れ替わることを提案しました。
 蒼子Bは、河見との結婚を後悔していたので、すんなりその提案を受け入れました。

 「余るほどの自由があれば心の拠り所が欲しくなり、強く愛されればそれは束縛に感
 じる。」(P129)

 蒼子Aと蒼子Bは、周到な準備の末、入れ替わって生活を始め・・・
 蒼子Aは、まさかこの試みで窮地に追い込まれるとは、考えもせず・・・

 「彼女は私のドッペルゲンガーなのだ。影が本体に勝てるわけがない。」(P178 )
 蒼子Aは高をくくっていましたが・・・思いもよらぬ展開で、立場が逆転し・・・

 私は最初、本体と影が力を合わせて、クズ男をやっつける物語かと思いました。
 ところが、物語は意外な展開をします。これは、想定外でした。

 物語は軽快で、読み始めたら止まりません。終盤のどんでん返しもすばらしい。
 ただ、結末は少し寂しすぎます。ふたりとも、もっと変わってほしかったです。

 タイトルは、「ブルー(蒼)もしくはブルー(蒼)」です。
 「結局は同じ」というニュアンスが込められていることに、最後に気づきました。

 さて、この作品は作者が一般の作品に転向してから2作目にあたります。
 だから、これまで書いてきたジュニア作品っぽさが、ちらほら見え隠れします。

 ちなみに、もっともジュニア作品っぽい部分は、文庫のカバーイラストでしょう。
 でも、私はこのイラストが、案外好きだったりします。

 これで、山本文緒の代表作をだいたい制覇しました。
 「ブルーもしくはブルー」を入れて全五作、すべて面白かったです。

 「自転しながら公転する」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-11
               https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-14
 「恋愛中毒」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-06-30
 「絶対泣かない」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-05-05
 「プラナリア」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2024-01-08

 さいごに。(それは、誰?)

 私は先日仕事の仲間に、「あなたにそっくりな人を見たよ」と言われました。
 もちろん、それは私ではありません。しかし、名字も私と同じだったそうです!

 近くの場所なので、確かめることはたやすいのですが、どうしてもできません。
 ちょっと怖いですね。もし、私がドッペルゲンガーだったら、と思うと・・・

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