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どん底 [19世紀ロシア文学]

 「どん底」 ゴーリキイ作 中村白葉訳 (岩波文庫)


 安宿の地下室で、人生のどん底生活を送る人々を描いた戯曲です。
 ゴーリキイの代表作で、チェーホフの戯曲に並ぶ傑作です。

 現在岩波文庫から出ている中村訳は、1936年のもの。
 訳は、わりと分かりやすかったのですが…
 いくらなんでも、古すぎでしょう。活字は小さくて読みにくかったです。


どん底 (岩波文庫)

どん底 (岩波文庫)

  • 作者: ゴーリキイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1961/01
  • メディア: 文庫



 舞台は安宿、ほら穴のような地下室。
 ここに集う人々は…

 ドロボウ、売春婦、受刑者、巡査、暴力男と死にかけたその妻、
 落ちぶれた男爵、アル中の役者、安宿の老いた亭主とその悪妻…

 各人各様、人生のどん底を味わっています。
 それは、ある意味、人間以下の生活です。

 クレーシテ 「じゃあなにをすりゃいいんだい?」
 ペーペル  「なんにもしねえのよ…」
 クレーシテ 「じゃ、どうして食っていくんだい?」
 ペーペル  「だって人間は、みんな生きてるじゃねえか…」
 クレーシテ 「ここのやつらかい? あいつらが人間といえるかね?」

 そんな彼らのもとに、巡礼者のルカが紛れ込みます。
 ルカの言葉は彼らに、いっときの安らぎを与えますが…

 主人公らしい人はいません。
 強いて言えば、どん底の住人全員が、主人公でしょうか。

 その中で、巡礼者ルカは、何かを悟っているようで、少し異質です。
 彼が語る「真実の国を信じている人」の話は、なかなか傑作です。
 真実の国がどこにもないと知った、その男は…(P105)

 さて、作者はゴーリキーです。岩波文庫の表示は、ゴーリキイ。
 よく、ゴーゴリと、混同されます。私も混同していました。

 ゴーリキーは、社会活動家でもありました。
 のちにレーニンと知り合い、革命のために巨額の援助をしました。 

 そういう意味で、ロシアの歴史に、大きな影響を与えた人です。
 しかし、ロシア文学の歴史に、今でも輝いているのは「どん底」一編か。

 さいごに。(ランドセル)

 お店で取り置いてもらっていたランドセルを、とうとう購入しました。
 娘は大喜びです。さっそく背負って、家の中を歩き回っていました。
 ランドセルばかりが目立って、まるでランドセルが歩いているみたいです。

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チェーホフ短編集 [19世紀ロシア文学]

 「チェーホフ短篇集」 チェーホフ作 松下裕編訳 (ちくま文庫)


 男女の恋をテーマにした短編集で、12編の作品を収録しています。
 名作「犬をつれた奥さん」「かわいいひと」などが、入っています。

 現在、ちくま文庫のほか、新潮文庫、岩波文庫などから出ています。
 私が一番読みやすかったのは、ちくま文庫の松下訳です。


チェーホフ短篇集 (ちくま文庫)

チェーホフ短篇集 (ちくま文庫)

  • 作者: アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/08/10
  • メディア: 文庫



 例によって、神西訳は名訳と言われています。岩波文庫から出ています。
 新潮文庫の小笠原訳も分かりやすい。名作「谷間」も収録されています。


可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: 文庫



かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫)

かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/11
  • メディア: 文庫



 ちくま文庫版の12編中で、私が一番気に入ったのは、「犬をつれた奥さん」。
 妻子ある中年男と、美しい人妻との、恋の物語です。

 こう言うと、単なる不倫の話だろ、と思われそうですが、そうではありません。
 テーマは、「本当の愛」・「本当の生活」です。

 二重生活を送りながら、グーロフは不思議に思うのです。
 愛人とひそかに営まれる生活にこそ、自分の生活の核心があるのだ。
 そして、妻と公然と営む生活は、その隠れみのにしか過ぎないと…

 甘く切ない物語の中で、人生というものの不思議さを、描き出しています。
 実に、チェーホフらしい作品です。

 また、「かわいいひと」も、「犬をつれた奥さん」同様、作者の代表的短編です。
 常に誰かしらを愛せずにはいられない女性、オーレニカの物語です。

 悪女を描いた「アリアードナ」は、娼婦マノンを連想させる作品で面白い。
 ほか、希望と幻滅を描いた「くちづけ」と「国語の教師」も、捨てがたい作品です。
 と、なかなか読みごたえのある作品集でした。

 さいごに。(うちの生意気な娘)

 「いつまで、こうやって、お前はパパを、相手にしてくれるのかな」
 と、先日ぽろりと、娘の前で言ってしまいました。

 それからというもの、娘は大いばりです。
 「パパ、遊んで!」それから「遊んでくれなかったら、もう遊んであげないよ!」
 ああ、憎らしい、憎らしい。

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六号病棟 [19世紀ロシア文学]

 「六号病棟・退屈な話」 チェーホフ作 松下裕訳 (岩波文庫)


 狂人と語り合ううちに、狂人扱いされるようになる院長の物語です。
 実際に医師として活動したチェーホフの、中篇小説の傑作です。

 現在、岩波文庫から出ています。
 活字は読みやすく、松下訳は比較的新しくて、分かりやすいです。


六号病棟・退屈な話(他5篇) (岩波文庫)

六号病棟・退屈な話(他5篇) (岩波文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/11/13
  • メディア: 文庫



 「六号病棟」とは、ある田舎町の病院の隔離病棟で、狂人たちが収容されています。
 その病院の院長ラーギンは、仕事にも人間関係にも飽きて、読書ばかりしています。

 ところが院長が、隔離病棟に通い始めたのです。そして人々が驚いたことに、
 院長は、発狂した元貴族の青年と、哲学を論じ合っているのでした。

 院長は思う、この狂人こそ、世の中で、唯一語るに足る人間だと。
 しかし周りの人間は思う、この院長にこそ、治療が必要ではないかと…

 院長ラーギンの、「人生は忌々しい罠ですよ。」(P173)という言葉が、象徴的でした。
 この言葉の後に展開される彼の運命は、まさに人生の罠にはまったようなもの。

 おかしいのは、ラーギンが、罠と知りながら、進んではまっているように見えること。
 この悲しい結末を招いた原因が、彼自身の中に存在しているようです。

 さて、岩波文庫のこの本には、「退屈な話」も、収録されています。
 多くの勲章を持つ老教授が、現在の退屈な日常を、手記に綴った物語です。

 また、さらにほかにも、五編が収録されています。
 オススメは、ドラマチックな喜劇の「敵」と、怪奇小説とも読める「黒衣の僧」。
 二編とも、小品ながら印象に残ります。一読の価値あり、です。

 さいごに。(近所のお父さん)

 Tさんは数年前まで、お嬢さんと手をつないで、よく町内を散歩していました。
 しかし、そのお嬢さんも、今は中学生。

 「寂しいもんですよ、もう娘は、私に口もきいてくれない」と、Tさんは言います。
 …そうか。娘がうるさくまとわりついてくる今が、人生の華なのかもしれません。

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ワーニャ伯父さん [19世紀ロシア文学]

 「ワーニャ伯父さん・三人姉妹」 チェーホフ作 浦雅春訳 (古典新訳文庫)


 「ワーニャ伯父さん」は、薄幸の人生に耐えて、働き続けるワーニャの物語です。
 「三人姉妹は」は、田舎暮らしを送る三姉妹の、恋と失望の物語です。
 どちらも、チェーホフの四台戯曲の一つです。

 現在二作とも、古典新訳文庫と、新潮文庫で、読むことができます。
 古典新訳文庫の浦訳は、新訳で分かりやすかったです。
 カバーイラストも、古典新訳文庫にしては、いい感じです。


ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)

ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/07/09
  • メディア: 文庫



 新潮文庫の神西訳は、少し古さを感じました。
 しかし、その言葉使いに、時代を超えた美しさがあり、根強いファンが多い。


かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09
  • メディア: 文庫



 「ワーニャ伯父さん」は、ワーニャが、客にうんざりする場面から始まっています。
 客というのは、ワーニャの死んだ妹の夫で、退職した大学教授セレブリャコフ。

 定年で帰郷した元教授は、独創性のかけらもない、凡俗な男でした。
 このニセ学者に、ワーニャは、領地での儲けを全て仕送ってきたのです。

 彼に期待をかけて、馬車馬のように働いてきた自分は、いったい何だったのか。
 ワーニャは、自分の青春が、むなしく過ぎ去っていったことを、痛切に感じました。

 しかし、そのワーニャの前で、老教授が出した提案は…
 そして、それに続くワーニャの狂乱…

 なんともやりきれない結末です。
 しかし、優しいソーニャの存在が、唯一の救いです。

 もうひとつの「三人姉妹」も、むなしく過ぎ去る青春をテーマにしています。
 故郷モスクワへ帰ることを夢見ながら、三姉妹は一地方都市に埋もれてしまう。

 それを決定的にしたのが、優柔不断な長男のアンドレイ。
 彼は、その土地の軽薄な娘ナターシャと、結婚してしまったのです。

 あとになって、アンドレイは嘆きます。
 「現在と未来が希望にかがやいていたあの過去はどこに消えたんだ?」(P291)
 私は言ってやりたい。ばかだね、あんたが自分で放り出したんじゃないか!

 そして姉妹も、三者三様に希望を失っていき…
 これまた、じつに哀切な結末です。

 しかし、「ワーニャ伯父さん」も「三人姉妹」も、「それでも生きて行かなくては」
 という言葉で締めくくられています。ここに、チェーホフの主張がありそうです。

 さいごに。(タツノオトシゴ)

 ちょっと前のことですが、しらすを食べていると、娘が「エビ!」と言いました。
 よく見てみると、体が巻いていて、エビらしくはありません。
 どうも、タツノオトシゴの赤ちゃんのようなのです。
 
 しらすにエビが混じっていることは、よくあるけど、タツノオトシゴは初めてです。
 タツのように娘の運気も上がってほしい。しかし辰年も、もう終わりですね。

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桜の園 [19世紀ロシア文学]

 「桜の園」 チェーホフ作 浦雅春訳 (古典新訳文庫)


 無為に過ごす古い世代が、美しい桜の園を手放すまでの物語です。
 チェーホフが死ぬ前年に書いた、四大戯曲の最後の作品です。

 現在、古典新訳文庫、岩波文庫、新潮文庫などから出ています。
 私にとって最も分かりやすかったのは、古典新訳文庫版です。

 浦訳の会話は、とても自然な感じです。ほか二編もすばらしい。
 いつもまぬけな古典新訳のカバーも、この本のイラストはかわいらしい。


桜の園/プロポーズ/熊 (光文社古典新訳文庫)

桜の園/プロポーズ/熊 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/11/13
  • メディア: 文庫



 岩波文庫版の小野訳も、新しくて分かりやすかったです。
 新潮文庫版の神西訳は、古いけど名訳として知られています。


桜の園 (岩波文庫)

桜の園 (岩波文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1998/03/16
  • メディア: 文庫



桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/08
  • メディア: 文庫



 ラネフスカヤ夫人が、5年ぶりに、パリから帰り、歓迎を受けます。
 しかし、彼女は借金によって、破産寸前。
 美しい領地の「桜の園」は、近く競売にかけられることになっていました。

 別荘地として売り出したらどうか。商人のロパーヒンはそう提案します。
 彼はこの地の農奴の子だったので、かつての主人を助けようとします。

 しかし、肝心のラネフスカヤ夫人やその兄は、ちっとも決断できません。
 別荘地を売るために、美しい桜を切るなんて、考えられない。
 現実に目を伏せて、いつまでも過去の追憶に浸っています。

 そうして手をこまねいている間に、とうとう競売の日がやってきて…
 領地を高値で競り落としたのは、なんと…

 ラネフスカヤ夫人とその兄は、破滅から逃げるすべを知りません。
 それどころか、自分から進んで破滅に向かっているようにも見えます。

 「これは私の首に吊された重石(おもし)なの。私は重石もろとも地獄に
 真っ逆さまに堕ちていくんだけれど、私、この石が好きなの、それなし
 では生きて行けないの。」(P100)

 ラネフスカヤ夫人が、かつての恋人を重石にたとえている言葉です。
 しかし、重石には、もっと多くの意味が込められていそうです。

 さて、この作品の結末は、「かもめ」同様に悲しいです。
 しかし、「かもめ」同様、作者から喜劇として扱われています。
 チェーホフの喜劇の定義は、普通と少し違っていたようです。

 さいごに。(知られざる)

 娘(6歳)が、またしても、とっぴょうしもない質問をしました。
 「知られざる」って、どういう「サル」?という質問。

 笑いをこらえながら、真顔で教えるのが、たいへんでした。
 笑うと落ち込むので。

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かもめ [19世紀ロシア文学]

 「かもめ」 チェーホフ作 沼野充義訳 (集英社文庫)


 作家志望の青年と、女優志望の少女の、愛の悲喜劇です。
 チェーホフの四大戯曲の最初の作品で、古典的名作です。

 現在、集英社文庫版のほか、岩波文庫、新潮文庫などから出ています。
 私は、集英社文庫の沼野訳が、一番分かりやすく感じました。


かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: 文庫



 岩波文庫版の浦訳も、とても分かりやすかったです。
 新潮文庫版は、プーシキンの名訳で知られる神西訳。根強いファンが多い。


かもめ (岩波文庫)

かもめ (岩波文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/01/16
  • メディア: 文庫



かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/09
  • メディア: 文庫



 女優アルカージナは、作家トリゴーリンと恋仲。
 アルカージナの息子トレープレフは、女優の卵ニーナと恋仲。
 と思ったら、ニーナはトリゴーリンと恋仲になり、トレープレフから離れていきます。

 一方、トレープレフのことを、マーシャという娘が片思い。
 そのマーシャを、メドヴェジェンコという教師が片思いしています。

 人間関係を整理しようとしたのに、かえってなんだか、ごちゃごちゃしてきました。
 いったい誰が主人公なのか、いつまでたっても、見えてきません。
 ただ、人間関係の中心に、作家志望のトレープレフがいるらしい。

 さて、この戯曲の魅力は、会話の妙にあります。
 一見、かみ合ってないようで、かみ合っている。
 また、かみ合っているようで、かみ合っていない。

 それは、そのまま登場人物の、人間関係にも言えることです。
 そして、この劇全体に、不思議な雰囲気を与えています。

 特に、最後の場面の、「私はかもめ」というニーナの言葉。
 単純ですが、意味深なセリフです。そして、有名です。

 チェーホフを読んだことのなかった私も、このセリフを知っていました。
 ただし、ロシア宇宙飛行士の言葉として、知っていたのですが。

 結末は、どう見ても悲劇。
 しかし、作者チェーホフは、この作品を喜劇として扱っています。

 ところで、今年9月の「100分de名著」で、「かもめ」を取り上げていました。
 このうすっぺらい本に、100分もかけて何を論じるのかと思い、見なかった。

 でも、この作品を読んだ今なら、分かります。
 ちょっとした言葉に、語りつくせないほどの、深い意味が感じられます。
 番組では、限られた時間で何を論じたのか、今更ながら気になります。

 さいごに。(昇仙峡へもみじ狩り)

 日曜日に、家族3人で、山梨県の昇仙峡へ行ってきました。
 紅葉は見ごろを過ぎたと聞いていましたが、とてもきれいでした。

 ロープウェイで、山頂のパワースポットへ行くと、予想以上の人ごみ。
 私も、絶景「浮き富士」から、パワーをもらいました。
 しかし、帰りの運転でパワーを使い果たしました。道を間違えてしまって。

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断崖 [19世紀ロシア文学]

 「断崖」 ゴンチャロフ作 井上満訳 (岩波文庫)


 青年地主ライスキーの、領地における恋の物語です。
 ゴンチャロフにとって、最後で最大の長編小説です。

 現在、岩波文庫から出ています。全5冊の復刊が、2011年に完結したばかり。
 初版は1949年! 所々に分かりにくい表現があるのは、仕方がないか。

 
断崖(一) (岩波文庫)

断崖(一) (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/09/17
  • メディア: 文庫



 ライスキーは、35歳ぐらいの地主で、いわゆる失敗者。
 軍隊は続かず、官吏も続かず、どこにも勤めずにぶらぶらしています。

 絵や文学の才能があるために、画家を志したり、小説家を志したりしますが、
 「きっといつかは」と言うばかりで、いつまでたっても、何事も成し遂げません。

 こういう人います。中途半端に能力があるために、何をやっても長続きしない人。
 芸術家肌といえばカッコイイけど、要するに、単なるなまけ者ですよ。

 そんなライスキーも、いっちょまえに恋をします。
 中でも、領地に住む従妹のヴェーラにはご執心。

 相手に拒絶されているのに、しつこく追い回して、みっともない、みっともない。
 35で、これでは、モテないでしょう。(でも、そこが、かわいかったりする。)

 美しくて聡明なヴェーラは、ほとんどライスキーを馬鹿にしています。
 ライスキーを、「私の奴隷さん」と呼んだりなんかして。
 それに、ヴェーラは実は、ある人と恋に落ちていて…

 さて、ライスキー以上に存在感があるのが、65歳の祖母、タチヤーナです。
 頼りになるおばあちゃんで、とてもカッコイイ。

 タチヤーナは、ダメ男のライスキーに代わって、領地を一手に管理しています。
 そして、言うべきことは言い、やるべきことはやる。
 実力者で悪人のニールをやり込める場面(第3部2章)は、名場面です。

 ほかにも、つまはじき者の無頼漢マルク、旧友の教師で本の虫のレオンチーなど、
 個性的な脇役がいて、彼らとの生き生きした会話が、この小説の最大の魅力です。

 ただし、20年にわたって書き継がれた結果、一貫性が欠けています。
 ヴェーラの性格が、失恋後に変わってしまう所は、当時から批判がありました。
 また、面白い章と、つまらない章が、はっきり分かれています。

 しかしそれでも、この作品には引き付けられます。日本でも、もっと読まれていい。
 そのためには、ぜひ改版を出してほしいものです。

 例えば、「ちんと言えば、かん」(2巻P141、3巻P375)なんて言葉がありました。
 「ああ言えばこう言う」という意味でしょうか。調べても分かりません。

 また、第4巻に、あとがきみたいな付録が付いているのも、違和感があります。
 そこで読んでも、意味が分かりません。ただのページ調整なら、ないほうがいい。

 さいごに。(パンダの顔をした人)

 少し前のことですが、娘の夢に、パンダの顔をした人が、出てきたのだそうです。
 怖かったので、娘が逃げると、パンダ人間は、追っかけて来ました。
 ママが助けに来て、おんぶしてくれて、逃げることができたのだそうです。

 それ以降、娘の夢に、時々パンダ人間が現れると言います。
 「今度はパパが助けに来てよ」と言っていますが、どうしたらよいのやら。

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紅い花 [19世紀ロシア文学]

 「紅い花 他四篇」 ガルシン作 神西(じんざい)清訳 (岩波文庫)


 「紅い花」は、悪の象徴であるケシの花を摘み取り、滅んでゆく狂人の物語です。
 精神を病み、三十三歳で自殺したガルシンの、代表作です。

 現在、岩波文庫で読むことができます。
 初版は1937年と古いのですが、神西氏の訳は、とても分かりやすかったです。


紅い花 他四篇 (岩波文庫)

紅い花 他四篇 (岩波文庫)

  • 作者: ガルシン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/11/16
  • メディア: 文庫



 精神病院に収容された「彼」は、看視人の目を盗んで、ケシの花を摘み取ります。
 「彼」にとって、紅いケシの花は、悪の象徴だったのです。
 「彼」は、命を賭けて、悪とのひそかな戦いをおこなっているのでした…

 作者ガルシン自身も、若い頃から精神疾患の発作に見舞われました。
 そして、精神病院入院中の体験をもとに描かれたのが、「紅い花」です。

 わずか30ページほどの短編ですが、強烈な印象を残す作品です。
 私は、頭がかき乱されるような感じがしました。

 同時収録されている「四日間」もまた、小品ながら強烈な作品です。
 戦争で重傷を負った男が、生死の間をさまよう四日間が、描かれています。
 「戦争と平和」で、アンドレイが倒れた場面と、イメージが重なりました。

 ほか、「信号」は、主人公セミョーンの生きざまに、心打たれました。
 童話風の「アッタレーア・プリンケプス」は、意味深な内容でした。

 「紅い花」を読んだら、次は「青い花」を読まなければ。
 こちらは、ドイツロマン派の詩人、ノヴァーリスの残した傑作です。


青い花 (岩波文庫)

青い花 (岩波文庫)

  • 作者: ノヴァーリス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/08/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(市の運動会)

 日曜日に、市の運動会がありました。学区の対抗戦です。
 私は、3年前から毎年、リレーに出ています。ほかに出る人がいないので。

 結果は、予選落ち。6チーム中4位でした。
 しかし、万年ビリのチームなので、「今年は速かった」と、ほめられました。

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平凡物語 [19世紀ロシア文学]

 「平凡物語」 ゴンチャロフ作 井上満訳 (岩波文庫)


 田舎育ちの青年の希望が、都会生活の中で、徐々に打ち砕かれていく物語です。
 ドストエフスキーとほぼ同時期に活躍した作家、ゴンチャロフの出世作です。

 2010年に、岩波文庫から出ています。
 1952年に出た翻訳ですが、少しも古さを感じません。読みやすかったです。


平凡物語(上) (岩波文庫)

平凡物語(上) (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/06/17
  • メディア: 文庫



 都会生活に憧れる青年アレクサンドルは、叔父を頼ってペテルブルクに出てきます。
 叔父ピョートルは、甥のアレクサンドルに、さまざまなことを教えます。

 叔父ピョートルは、経験豊富な実際家。甥ピョートルは、ロマンチックな空想家。
 この二人の会話がかみ合わなくて、面白い面白い。

 夢や希望を語る甥に対して、叔父は「田舎に帰った方がいい」と、平気で言います。
 叔父に悪気はありません。それどころか、その忠告の正しさは徐々に証明されます。

 当初、自分の才能の豊かさと、精神の高潔さを信じていたアレクサンドルでしたが、
 都会生活の8年の間に、少しずつ叔父に影響され、周りに染まっていき…

 そして、とうとう … ああ、平凡物語!
 エピローグでの、アレクサンドルの変わりようには、力が抜けてしまいます。

 さて、この小説は二部構成になっていますが、前半「第一部」の方が断然面白い。
 特に、第2章と第3章が読みどころ。叔父と甥の会話は、まるで漫才です。

 作者ゴンチャロフは、出世作「平凡物語」を書いたとき、まだ20代の初めでした。
 代表作「オブローモフ」を書いたのは、それから25年後で40代後半のこと。

 「オブローモフ」は、ロシア文学の伝統「余計者」を描いた典型的な作品です。
 この傑作を、どうしても読みたいのですが、岩波文庫版は絶版で品切れ状態。

 「オブローモフ」から更に10年後、最後の傑作「断崖」が書かれました。
 「断崖」は、岩波文庫から、改版の全5冊が、最近完結したばかりです。


オブローモフ〈上〉 (岩波文庫)

オブローモフ〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1976/02/16
  • メディア: 文庫




断崖(一) (岩波文庫)

断崖(一) (岩波文庫)

  • 作者: ゴンチャロフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/09/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(妻のカゼが治ったとたんに)

 妻が1週間ほどカゼをひいていました。
 その間、娘はとても良い子で、進んでお手伝いをしたりしていました。

 しかし、妻のカゼが治ったとたん、わがままになり、いばるようになりました。
 それまで、娘なりにいろいろと、我慢していたのでしょうね。

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現代の英雄 [19世紀ロシア文学]

 「現代の英雄」 レールモントフ作 中村融訳 (岩波文庫)


 自分の才能を持て余し、気まぐれな人生を歩む男「ペチョーリン」の物語です。
 主人公ペチョーリンは、プーシキンのオネーギンと並び、余計者の典型です。

 1981年に、岩波文庫から出ましたが、現在は絶版です。
 私の本棚にある本は、1990年版です。
 訳は分かりやすいのですが、活字が小さくて読みにくいです。


現代の英雄 (岩波文庫 赤 607-1)

現代の英雄 (岩波文庫 赤 607-1)

  • 作者: ミハイル・ユーリエヴィチ・レールモントフ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/04/16
  • メディア: 文庫



 「私」は、旅で出会った老大尉から、ペチョーリンという男の話を聞きました。
 老大尉によると、その男は…

 「いろいろと異様な事件をおこすように生まれながらに運命づけられている
 ような人」なのだそうです。
 その一例として、領主の娘略奪事件が語られました。

 その男に興味を持った「私」は、老大尉からペチョーリンの手記を譲り受けます。
 そこには以前の彼の行動と心情が、ありのままに書かれていました。

 この手記を読むと、心が寒くなります。
 彼は、すべての物事に退屈し、すべて人々を冷笑しています。

 グルシニツキイに対して、親友を装いながら、心の中では嘲弄していたり。
 令嬢メリーに対して、何の愛情も湧かないのに、熱心に口説いてみせたり。

 自分に才があると信じながら、何をなすべきか知らないのです。
 だから、やることはすべて、軽薄で気まぐれな行動ばかり。

 最後には、無意味な決闘沙汰。(お決まりのパターン!)
 このむなしさは、「オネーギン」に通じます。
 しかし、このむなしさが、なんとも言えない魅力となっています。

 何をやっても圧迫された反動期、「英雄」はこういう形しか取れなかったのか。
 もし革命の時代に生きていたら、本当の英雄になれたかもしれなかったのだが。

 さて、作者レールモントフについて。
 20代前半で、「詩人の死」でプーシキンの死を描き、一躍有名になりました。
 と同時に、この詩で宮廷の高官を批判したため、監視されるようになりました。

 のちに、同僚の士官と決闘し、27歳の若さで非業の死を遂げました。
 レールモントフがわざと脇へ外したのに、相手は狙い撃ちしたのだとか。

 例によって、この決闘は陰謀だったと言われています。
 どこかプーシキンと似てます。二人とも当時、「現代の英雄」でした。

 さいごに。(幼稚園の運動会)

 昨日の午前中、娘の幼稚園の運動会に行きました。
 娘は、鼓笛隊と、組体操と、親子競技と、リレーに出ました。

 これが、幼稚園で最後の運動会。
 とてもはりきって、一生懸命やっている姿が、良かったです。

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