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そばかすの少年 [20世紀アメリカ文学]

 「そばかすの少年」 ジーン・ポーター作 鹿田昌美訳 (光文社古典新訳文庫)


 孤児で右手の無い少年「そばかす」が、逆境に打ち勝って成長していく物語です。
 ポーターが移り住んだリンバロストの森を舞台に、自然の美しさを描いています。


そばかすの少年 (光文社古典新訳文庫)

そばかすの少年 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版



 「そばかす」は右腕の先が無く、名前も無く、孤児院で育てられてきた少年です。
 引き取られた家での虐待から逃れ、仕事を求めて、材木会社にやってきました。

 支配人のマクリーンは、丈夫な男を求めていたので、最初はそばかすを断りました。
 しかし、その賢明な様子に打たれて、リンバロストの森番をさせることにしました。

 リンバロストの森は恐ろしく、森を巡回する仕事はつらくて厳しいものでした。
 しかしそばかすは少しずつ、自然の生き生きとした美しさに気付いていきます。

 「母なる自然というものは、自分の懐のなかで毎日ひとりぼっちで景色を眺め、まわ
 りの音に耳を澄まし、静寂に浸る人間の心に、奇跡を起こしてくれるのかもしれない。」
 (P32)

 だが、森の木を狙うブラック・ジャックたちは、策略をめぐらして・・・
 ようやく平和が戻ったかと思われたとき、そばかすの身に突然の悲劇が・・・

 とにかくそばかすの純真さに心が洗われます。その誠実さ、その忠誠心、その勇気!
 周りの人間は皆、そばかすが大好きになります。森の動物たちまでなついてきます。

 悪役のブラック・ジャックでさえ、そばかすを認めています。
 次のような言葉を吐くのだから、ブラック・ジャックもそれほど悪人ではないのでは?

 「俺もお前みたいなまっとうな心になれたらなあ。そのためだったらなんだってくれて
 やるのに」(P290)

 それにしても、ブラック・ジャックの最期は哀れでした。自業自得ではありますが。
 ブラック・ジャックが心を入れ替える、という結末を期待していたので少し残念でした。

 結末といえば、エンジェルが活躍する終盤は、取って付けたような感じがしました。
 物語は劇的な展開をしてクライマックスを迎えますが、とてもご都合主義で不自然です。

 というのも、最初のバージョンから、結末が変えられたからのようです。
 もともとは、そばかすが倒木の下敷きとなって死ぬという結末だったようなのです。

 むしろそのような悲劇的な結末の方が、よかったような気がしないでもない。
 そうすれば、そばかすは人生のピークで死に、私たちの心の中で永遠に生きるので。

 とはいえ、結末を変えたことによって、この作品はベストセラーになったのだそうです。
 しかし私には、そばかすがどこか遠くに行ってしまったような感じがしました。

 ところで、私がこの物語で最も好ましく感じたのは、随所からにじみ出る信頼感です。
 そばかす、マクリーン、ダンカン夫妻、バードレディ、そしてエンジェル・・・

 信頼する方も信頼される方も、どちらもとてもすばらしい。皆あたたかくて優しい。
 そして、そばかすの類いまれな人間性を一瞬で見抜き、愛情をそそぐようになります。

 サローヤンの「ヒューマン・コメディ」に似た、ほんわかした味わいがありました。
 心がほっこりするような、読んでいて癒やされる小説でした。
 「ヒューマン・コメディ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-04-08

 さいごに。(フルーツミックスシロップ)

 父の日に、アフタヌーンティーのフルーツミックスシロップをもらいました。
 アイスティーに混ぜて、フルーツティーにして飲んでいます。おいしいです。

 ただし、200ccのフルーツティーを3回作ったら、終わってしまいました。
 自分では買えないなー。





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