SSブログ

不如帰 [日本の近代文学]

 「不如帰」 徳富蘆花(ろか) (岩波文庫)


 夫と愛し合いながらも、病のために離縁させられた妻、浪子の物語です。
 1900年に出版され、空前のブームを引き起こした名作です。

 2012年7月に、岩波文庫から改版が出て、とても読みやすくなりました。
 しかも、カバーは黒田清輝の有名な絵です。新聞連載当時の口絵です。
 さすが岩波さん。これが出た機会に、私は約15年ぶりに再読しました。


不如帰 (岩波文庫)

不如帰 (岩波文庫)

  • 作者: 徳冨 蘆花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1938/07/01
  • メディア: 文庫



 浪子は海軍士官の武男と深く愛し合い、幸せな家庭生活を送っていました。
 しかし浪子は、風邪をこじらせて、肺結核になってしまいました。

 すると、二人に嫉妬する千々岩(ちじわ)が、なにやらひそかに動き出します。
 悪徳商人の山木もまた、それに便乗して、あることをたくらみます。
 この二人が、わるいヤツ!

 千々岩の話に乗せられた姑が、とうとう浪子の離縁を言い出します。
 夫の武男は抵抗しますが、しかし、彼が出陣しているうちに…
 この姑が、ひどいヤツ!

 浪子のはかない運命に、当時の読者は皆、涙しました。
 浪子の切ない言葉は、名セリフとして、広く知られました。

 「あああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ!」
 「ああ辛い! もう、もう婦人(おんな)なんぞに、生れはしませんよ。」

 会話文は、このように口語体ですが、地の文は文語体です。
 だから、最初は読みにくい。
 しかし、慣れてくると、文語調の美しいリズムに、はまってしまいます。

 内容は、はっきり言ってベタで、先の展開が見え見えです。
 それなのに、先へ先へと読ませる力があります。

 最後に浪子が死ぬだろうことは、分かりすぎるぐらい分かるのに、
 死んだらやっぱり、涙が出るほど悲しいです。すごい文章力です。

 徳富蘆花には、ほかに「自然と人生」という、随筆集があります。
 名文として知られていて、当時、多くの文人が手本としました。


自然と人生 (岩波文庫)

自然と人生 (岩波文庫)

  • 作者: 徳富 蘆花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1933/05/25
  • メディア: 文庫



 この本の中に、「蘆花」という文があって、筆名の由来が書かれています。
 次のように書かれています。(P83) ちなみに「蘆」はアシのことです。

 「蘆の花は見所とてもなく」と、清少納言は書きぬ。
 しかもその見所なきを余はかえって愛するなり。

 蘆花は学生の頃からトルストイに傾倒していました。
 のちに外遊して、老年のトルストイに会っています。
 その影響で、半農の生活を始め、日本のトルストイと呼ばれました。

 さいごに。(リズム発表会)

 午前中だけ休みをもらい、幼稚園の発表会に行って来ました。
 セリフの途中で笑い出す子がいたり、泣き出す子がいたり、
 舞台からママを見つけて手を振る子や、「ママ!」と叫ぶ子がいたり…

 うちの娘は、めちゃくちゃ緊張していて、見ている我々まで緊張しました。
 しかし、すべてのセリフを、上手に言えました。よかった。

nice!(1)  コメント(1) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 1

ike-pyon

ゆきママさん、ご訪問ありがとうございます。
またお越し下さい。
by ike-pyon (2012-12-17 05:54) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。