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群盗 [18世紀文学]

 「群盗」 シラー作 久保栄訳 (岩波文庫)


 盗賊団隊長となって社会の変革を目指す青年の、理想と苦悩を描いた戯曲です。
 ゲーテの「ウェルテル」と並んで、ドイツの疾風怒濤時代を代表する作品です。

 岩波文庫から2016年2月に復刊されました。手に入るのも今のうちです。
 1958年の訳なので、所々に分かりにくい箇所がありましたが、貴重な本です。


群盗 (岩波文庫)

群盗 (岩波文庫)

  • 作者: シラー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1958/05/05
  • メディア: 文庫



 モオル伯爵の嫡男カアルは、自身の遊蕩を悔いて、父に手紙で謝罪しました。
 しかし父からの返事は、カアルを廃嫡するという、信じられない内容でした。

 実はそれは、相続を狙う弟フランツの計略だったのです。
 事情を知らないカアルは、盗賊団の隊長を引き受けてしまい・・・

 この作品には、疾風怒濤時代特有の、感情の高ぶりと過剰な熱気があります。
 だいたい、父親に勘当されたからって、盗賊団の隊長になったりするか?

 「世界を暴虐の行いによって洗い清め、法律を無法によって正そう」(P209)
 カアルの言っていることはムチャクチャです。ひとりよがりもはなはだしい。

 それに、この結末! 「なんで?!」と叫びたくなります。
 カアルの考えが理解できません。ヤケクソになったとしか思えません。

 とはいえ案外そういうところに、人間の本質が表れているのかもしれません。
 時として人は、理性では割り切れない不条理な感情に従ってしまうものです。

 さて、この劇は冒頭から、若きシラーの情熱が随所に見られます。
 古典主義を克服して新しい時代を作るんだ、という意気込みが見られます。

 「何んのざまだ! 何んのざまだ、このだれ切った、去勢された一世紀は。
 前の時代の仕事を反芻したり、古代の英雄を、下手な注釈で苦しめたり・・・」 

 実際、劇が初演されたとき、反響がすごくて失神した人が出たそうです。
 それは1782年でフランス革命の7年前です。当時最も過激な劇の一つでした。

 もしカアルが自首せず体制に反抗し続けたら、革命を起こせたかもしれません。
 そしておそらくこの戯曲も、フランス革命に大きな影響を与えたことでしょう。

 ところでシラーの作品は、一時代を築いたのに、文庫でほとんど出ていません。
 岩波の「ヴァレンシュタイン」も「オルレアンの少女」も絶版。悲しすぎ る!

 「ヴァレンシュタイン」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-06-18
 次はぜひ「ウィリアム・テル」と「たくみと恋」を復刊してほしい。

 さいごに。(修学旅行のピンチ?)

 今の校長先生は、修学旅行でディズニーに行く意味がないと、言っています。
 そこで、来年の修学旅行はディズニー無しではないかと、話題になっています。

 うちの娘は、来年5年生。再来年の修学旅行のことを今から心配しています。
 ディズニーに意味が無いということに同感ですが、でも行かせてあげたいです。

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りんごあめ

お嬢さんの心配も無理ないことです!
大人にディズニーは(ファンじゃない限り)意味のないところのように思えます。
でも、キャストの接客のすばらしさ、夢の国であり続けるために払われているたくさんの努力、ここに主眼を置いてみたら…
接客業というものに対する、素晴らしい体験になると思うのです。
突然失礼いたしました…
by りんごあめ (2016-11-24 23:49) 

ike-pyon

りんごあめさん、コメントありがとうございます。
なるほど。ディズニーの接客を体験させることには、意味がありますね。そういう観点から、校長先生が考え直してくれるといいのですが。

by ike-pyon (2016-11-26 05:02) 

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