群盗 [18世紀文学]
「群盗」 シラー作 久保栄訳 (岩波文庫)
盗賊団隊長となって社会の変革を目指す青年の、理想と苦悩を描いた戯曲です。
ゲーテの「ウェルテル」と並んで、ドイツの疾風怒濤時代を代表する作品です。
岩波文庫から2016年2月に復刊されました。手に入るのも今のうちです。
1958年の訳なので、所々に分かりにくい箇所がありましたが、貴重な本です。
モオル伯爵の嫡男カアルは、自身の遊蕩を悔いて、父に手紙で謝罪しました。
しかし父からの返事は、カアルを廃嫡するという、信じられない内容でした。
実はそれは、相続を狙う弟フランツの計略だったのです。
事情を知らないカアルは、盗賊団の隊長を引き受けてしまい・・・
この作品には、疾風怒濤時代特有の、感情の高ぶりと過剰な熱気があります。
だいたい、父親に勘当されたからって、盗賊団の隊長になったりするか?
「世界を暴虐の行いによって洗い清め、法律を無法によって正そう」(P209)
カアルの言っていることはムチャクチャです。ひとりよがりもはなはだしい。
それに、この結末! 「なんで?!」と叫びたくなります。
カアルの考えが理解できません。ヤケクソになったとしか思えません。
とはいえ案外そういうところに、人間の本質が表れているのかもしれません。
時として人は、理性では割り切れない不条理な感情に従ってしまうものです。
さて、この劇は冒頭から、若きシラーの情熱が随所に見られます。
古典主義を克服して新しい時代を作るんだ、という意気込みが見られます。
「何んのざまだ! 何んのざまだ、このだれ切った、去勢された一世紀は。
前の時代の仕事を反芻したり、古代の英雄を、下手な注釈で苦しめたり・・・」
実際、劇が初演されたとき、反響がすごくて失神した人が出たそうです。
それは1782年でフランス革命の7年前です。当時最も過激な劇の一つでした。
もしカアルが自首せず体制に反抗し続けたら、革命を起こせたかもしれません。
そしておそらくこの戯曲も、フランス革命に大きな影響を与えたことでしょう。
ところでシラーの作品は、一時代を築いたのに、文庫でほとんど出ていません。
岩波の「ヴァレンシュタイン」も「オルレアンの少女」も絶版。悲しすぎ る!
「ヴァレンシュタイン」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-06-18
次はぜひ「ウィリアム・テル」と「たくみと恋」を復刊してほしい。
さいごに。(修学旅行のピンチ?)
今の校長先生は、修学旅行でディズニーに行く意味がないと、言っています。
そこで、来年の修学旅行はディズニー無しではないかと、話題になっています。
うちの娘は、来年5年生。再来年の修学旅行のことを今から心配しています。
ディズニーに意味が無いということに同感ですが、でも行かせてあげたいです。
盗賊団隊長となって社会の変革を目指す青年の、理想と苦悩を描いた戯曲です。
ゲーテの「ウェルテル」と並んで、ドイツの疾風怒濤時代を代表する作品です。
岩波文庫から2016年2月に復刊されました。手に入るのも今のうちです。
1958年の訳なので、所々に分かりにくい箇所がありましたが、貴重な本です。
モオル伯爵の嫡男カアルは、自身の遊蕩を悔いて、父に手紙で謝罪しました。
しかし父からの返事は、カアルを廃嫡するという、信じられない内容でした。
実はそれは、相続を狙う弟フランツの計略だったのです。
事情を知らないカアルは、盗賊団の隊長を引き受けてしまい・・・
この作品には、疾風怒濤時代特有の、感情の高ぶりと過剰な熱気があります。
だいたい、父親に勘当されたからって、盗賊団の隊長になったりするか?
「世界を暴虐の行いによって洗い清め、法律を無法によって正そう」(P209)
カアルの言っていることはムチャクチャです。ひとりよがりもはなはだしい。
それに、この結末! 「なんで?!」と叫びたくなります。
カアルの考えが理解できません。ヤケクソになったとしか思えません。
とはいえ案外そういうところに、人間の本質が表れているのかもしれません。
時として人は、理性では割り切れない不条理な感情に従ってしまうものです。
さて、この劇は冒頭から、若きシラーの情熱が随所に見られます。
古典主義を克服して新しい時代を作るんだ、という意気込みが見られます。
「何んのざまだ! 何んのざまだ、このだれ切った、去勢された一世紀は。
前の時代の仕事を反芻したり、古代の英雄を、下手な注釈で苦しめたり・・・」
実際、劇が初演されたとき、反響がすごくて失神した人が出たそうです。
それは1782年でフランス革命の7年前です。当時最も過激な劇の一つでした。
もしカアルが自首せず体制に反抗し続けたら、革命を起こせたかもしれません。
そしておそらくこの戯曲も、フランス革命に大きな影響を与えたことでしょう。
ところでシラーの作品は、一時代を築いたのに、文庫でほとんど出ていません。
岩波の「ヴァレンシュタイン」も「オルレアンの少女」も絶版。悲しすぎ る!
「ヴァレンシュタイン」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-06-18
次はぜひ「ウィリアム・テル」と「たくみと恋」を復刊してほしい。
さいごに。(修学旅行のピンチ?)
今の校長先生は、修学旅行でディズニーに行く意味がないと、言っています。
そこで、来年の修学旅行はディズニー無しではないかと、話題になっています。
うちの娘は、来年5年生。再来年の修学旅行のことを今から心配しています。
ディズニーに意味が無いということに同感ですが、でも行かせてあげたいです。
お嬢さんの心配も無理ないことです!
大人にディズニーは(ファンじゃない限り)意味のないところのように思えます。
でも、キャストの接客のすばらしさ、夢の国であり続けるために払われているたくさんの努力、ここに主眼を置いてみたら…
接客業というものに対する、素晴らしい体験になると思うのです。
突然失礼いたしました…
by りんごあめ (2016-11-24 23:49)
りんごあめさん、コメントありがとうございます。
なるほど。ディズニーの接客を体験させることには、意味がありますね。そういう観点から、校長先生が考え直してくれるといいのですが。
by ike-pyon (2016-11-26 05:02)