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ペスト2 [20世紀フランス文学]

 「ペスト」 カミュ作 宮崎嶺雄訳 (新潮文庫)


 突如ペストに襲われたオラン市で、人々が不条理と向き合う姿を描いた小説です。
 新潮文庫から1969年に出ています。訳は古いですが、不都合はありませんでした。


ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

  • 作者: カミュ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1969/10/30
  • メディア: ペーパーバック



 前回の記事「ペスト1」で、リウーとランベールの友情について書きました。
 そしたら今回は、リウーとタルーの友情について、どうしても書きたくなりました。

 「僕は今度の疫病に出くわすずっと前から、すでにペストに苦しめられていたんだ。」
 「誰でもめいめい自分のうちにペストをもっているんだ。」(P376)

 何か月か一緒に働いてきたあと、初めてタルーはリウーに思いを打ち明けました。
 この告白のあと二人に真の友情が芽生え、記念に海水浴をします。この場面が良い!

 「何分かの間、同じ調子で、同じ強さで、ただ二人、世間から遠く離れ、市とペスト
 からついに解放されて、彼らは進んで行った。」(P383)

 「100分de名著」最終回で、内田樹が「カミュの書く身体感覚は絶品」と言いました。
 まさにその通りで、私自身も二人と一緒に遊泳している、幸せな気分になりました。

 この海水浴の印象的な場面は、物語において大事な転換点となっています。
 というのも、このあとペストは、なぜか収束に向かっていくからです。

 ようやくペストの終焉を人々が感じるようになった頃、タルーの体に異変が・・・
 そして、リウーのもとにもたらされた一通の電報は・・・

 さて「ペスト」はリウーを中心に描きながら、時々タルーの覚え書きも紹介されます。
 物語は二人の視点で進行しています。解説によると、二人は表裏一体の分身だという。

 すると、二人が「共感」しあった海水浴の場面には、象徴的な意味があったのか?
 タルーは言っていました。心の平和に達するために取るべき道は、「共感」だと。

 人間同士の「共感」が、「ペスト」というえたいの知れない巨悪を消滅させる・・・
 さまざまな読み取り方ができる点も、この小説の大きな魅力となっています。

 ところで、カミュに「ペスト」を思い立たせたのは、メルヴィルの「白鯨」だという。
 「ペスト」も「白鯨」も、さまざまな象徴的意味が込められています。

 「白鯨1」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-03-20
 「白鯨2」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-03-29

 さいごに。(「ジェラシック・ワールド」見たい)

 娘が学校から、「ジェラシック・ワールド 炎の王国」のちらしをもらってきました。
 さっそくネットで、予告編を見たら、「絶対見たい」と思ってしまいました。

 娘に、「一緒に見に行かない?」と聞いたら、「どっちでもいい」と気のない返事。
 ああ、昔だったら、飛び上がって喜んでくれたものだが・・・一人で行くのもね・・・

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