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世界文学の流れをざっくりとつかむ17 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第4章≫ 中世ヨーロッパ

4 中世ドイツ叙事詩(「ニーベルンゲンの歌」)

 中世のヨーロッパでは、吟遊詩人が国をこえて至る所で活躍していました。宮廷や王侯貴族の屋敷では、詩人たちは丁重にもてなされました。朗誦するときは、上流階級はもちろん、一般民衆も集まりました。吟遊詩人は多くの人々に、戦争や騎士道や宮廷愛や妖精の伝承などを語って聞かせ、民衆は遠い昔の遠い国の物語を、ワクワクしながら聞きました。

 吟遊詩人を最も大事にしたのが、ドイツとオーストリアなどのゲルマン諸国だったようです。そのため、この地域には優れた詩人が多く現れました。12世紀から13世紀にかけて、ヴォルフラムは聖杯伝説に基づいた叙事詩など、多くの美しい詩を語りました。その一部が、ワグナーの「タンホイザー」に取り入れられています。またほぼ同じ時期に、ゴットフリートは叙事詩「トリスタン」を書き、これは後世のトリスタン伝説に大きな影響を与えました。

 中世ドイツ最大の叙事詩は、1200年頃に古ドイツ語で書かれた「ニーベルンゲンの歌」です。龍殺しの英雄ジークフリートの死と、その妻クリームヒルトの復讐を描いています。5~6世紀の事件をふまえているので、そのころから長く口承されてきた物語がもとになっているようです。特に中心となるジークフリートの物語は、北欧神話を起源としています。これらをまとめた作者は分かっていませんが、吟遊詩人が関わっているだろうと思われます。

 ところで、「ニーベルンゲンの歌」に類する物語が、アイスランドの「エッダ」や「サガ」などに残されています。アイスランドもまた、イギリスやドイツと同じように、多くのノルウェー人が進出して根を下ろした場所です。海によって隔てられた孤島なので、他の地域よりも純粋なノルウェー人の文化を残しました。

 929年にアイスランド共和国が成立しましたが、彼らはゲルマンの習俗を維持し、独自のアイスランド文学を成立させました。彼らには、「エッダ」というヴァイキング時代の詩群がありました。1220頃にアイスランドの詩人スノッリが、エッダをまとめました。これは「スノッリのエッダ」と呼ばれています。一方、「サガ」という散文群もありました。北欧における様々な出来事を扱っています。後期にはジークフリート伝説などを含むようになりました。

 さて、ついでながらロシアにも眼を向けてみましょう。800年代半ばから1200年代半ばには、キエフ・ロシア文化が発展していました。1000年前後には、口承叙事詩「ブィリーナ」 が成立しています。そして、1187年には「イーゴリ遠征物語」が古ルーシ語で書かれました。散文ですが、ある種のリズムを持つ韻律的散文で書かれています。遊牧民ポロヴェッツ人に対する、実際に会った遠征の物語です。 作者は詳しくは分かっていません。

 このように、中世を通じて、それぞれの民族は、自分たちの叙事詩を持つようになりました。吟遊詩人たちは、自分たちの英雄の活躍を、自分たちの言葉で歌い、それを自分たちの宝としました。さらに、詩人たちは様々な伝承を加えて、大切に育て上げてきたのです。

 さいごに。(猫は・・・)

 先日の「超ムーの世界R」で、「猫は宇宙人のスパイ」という話をしていました。
 なるほど。だから猫は、我々人間の会話に、じっと耳を傾けていることがあるのか。

 娘が「猫を飼いたい」と言った時、「猫は宇宙人のスパイだからダメだ」と言ったら、
 二度とこの話題を持ち出さなくなったけど、私を見る目が冷たくなったような・・・

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