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グアテマラ伝説集 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「グアテマラ伝説集」 M・A・アストゥリアス作 牛島信明訳 (岩波文庫)


 西欧的な合理主義とはかけ離れた、古代マヤの世界観を反映した幻想的な物語集です。
 1930年に出したことで、アストゥリアスは、魔術的リアリズムの開祖となりました。


グアテマラ伝説集 (岩波文庫)

グアテマラ伝説集 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫



 アストゥリアスはグアテマラにおいて、白人の父とインディオの母から生まれました。
 政権ににらまれた父が判事の職を追われたため、一家は祖父の住む田舎へ移りました。

 アストゥリアス少年は、そこでインディオたちと交流し、マヤ神話を知りました。
 この体験があったからこそ、のちにパリへ脱出した彼は、マヤ神話を研究したのです。

 そして、マヤの神話や伝説を取り入れて創作されたのが、「グアテマラ伝説集」です。
 フランス語版を読んだヴァレリーが、「熱帯の悪夢」と言って絶賛したのは有名です。

 「そして一人ぼっちになった時、彼はあの『言葉』—ある世紀に、幾世紀も続いた1日
 があった—を生きたのだ。
  終始真昼である1日、夕暮れも曙もなく澄みわたった、無垢の結晶の1日。」

 以上は、「火山の伝説」からの一節です。「幾世紀も続いた1日」という表現がいい。
 まさに、「魔術的」です。こういう不思議で魅力的な語句が、至る所で見られます。

 というか、こういう魔術的な文章ばかりが、「これでもか」と積み重ねられています。
 だから、読んでいて頭がくらくらします。結果、非常に難解な作品となっています。

 かろうじて大筋を理解したのは、「火山の伝説」と「大帽子の男の伝説」の二作です。
 しかしどちらも、「どうしてそうなるの?」「だから、何?」と言いたくなりました。

 一方、腹が立つほど分からなかったのが、「ククルカン――羽毛に覆われた蛇」です。
 これは戯曲ですが、そのひどさは言葉にできません。冒頭部は、こんな感じです。

 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:クワック?…クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごといもの!
 グワカマーヨ:アククワック、クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:あなたは太陽だ、アククワック、

 この冒頭で面喰い、私は結局この作品を投げ出しました。
 これと似たネタが一つあります。ドリフのコント、しむらの「耳の遠い神様」です。

 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:なんだって?
 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:なんだって?
 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:とんでもねえ! あたしゃ、神様だよ!

 (先日コロナによる肺炎で亡くなった志村けんさんの、ご冥福をお祈りいたします。
 私たち世代にとっては、笑いの神様的存在でした。)

 こういう具合なので、「グアテマラ伝説集」は誰にでも勧められる本ではありません。
 図書館で「『大帽子の男』の伝説」を読んで、興味を持ったら借りてください。

 アストゥリアスは、こののちグアテマラに帰り、「大統領閣下」を執筆し始めます。
 「大統領閣下」は、「グアテマラ伝説集」に比べて、とても読みやすくて面白いです。

 さいごに。(笑いの師匠Oさん)

 職場にOさんという人がいて、この人のダジャレが私の笑いのツボにはまっています。
 Oさんの言ったダジャレを、時々家で話すのですが、妻と娘は全く笑ってくれません。

 職場でも、本当に心から笑っているのは、私だけのようだと、最近気付きました。
 というか、本気で笑っている私を見て、笑っている人もいるような・・・

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