マシアス・ギリの失脚1 [日本の現代文学]
「マシアス・ギリの失脚」 池澤夏樹 (新潮文庫)
南洋の小国ナビダード民主共和国大統領、マシアス・ギリが失脚するまでの物語です。
魔術的リアリズムの手法で描かれた独裁者小説で、1993年に谷崎賞を受賞しました。
舞台は、南洋のどこかにある、ナビダード民主共和国。人口7万人の小さな島国です。
かつて日本の統治領だったことがあり、そのため日本との深いつながりがある国です。
主人公は大統領のマシアス・ギリ。日本語堪能で、日本と太いパイプを持っています。
二代大統領の地位を滑り落ちた後、何か後ろめたい手段を用いて返り咲いたようです。
ある日、日本から来た慰霊団のバスが失踪し、ケンペー隊の捜査は難航していました。
一方、日本政府からの密使である鈴木が持ち掛けた提案には、何か裏がありそうです。
マシアス・ギリは、我が身に変化が起きつつあることを、なんとなく感じ取りました。
彼は問題に対処するため、霊力を持つ女エメリアナをそばに置きましたが・・・
読書仲間から「この作品は日本のラテンアメリカ文学だ」と聞き、興味を持ちました。
600ページ以上に及ぶ大作ですが、現在、半ばの300ページほどまで読みました。
ガルシア・マルケスに心酔していた池澤は、魔術的リアリズムの手法を用いました。
巫女的存在のエメリアナ、亡霊のリー・ボー、そして千変万化するバス・・・
南米的な幻想世界が広がっています。しかし、ただのファンタジーではありません。
この作品をさらに魅力的にしているのは、随所で述べられる歴史観や日本論です。
「われわれが住むこの大きな騒乱の世紀を開いた戦争が、その戦場をほぼヨーロッパ
に限定しながらもなお世界大戦と呼ばれるのは、まさにこの時になって一つの世紀と
一つの世界が重なるという現象が起こったからである。一つの時間意識と一つの空間
意識が同時にこの惑星の上のすべての人間を包み込んだ。」(P98)
「この国を本当に世界に冠たる国にするには、歴史のこの局面で一度は敗北というこ
とを味わうことが必要なのだ。これによって制度としての天皇制は、先の日の発展を
読み、最も強い機能を発揮する。」(P115)
一見物語と関係ないような文章ですが、実は奥深い所で有機的につながっています。
物語を読み進めながら、異文化問題や独裁制など、多くの問題を考えさせられます。
ところが、私によく理解できなかったのが、時々挿入される「バスリポート」です。
「バスが海を泳いでいたよ」とか、「バスが空を飛んで行ったよ」とか・・・
いったい何が面白いのか。シムラやカトちゃんが、言いそうなことではないか。
魔術的な雰囲気を出そうとして失敗し、単なる子供だましになってしまったようです。
一方「バスリポート」を「これぞ池澤ワールド」と評する人もいて、理解に苦しむ。
この先このバスが、どのように物語に絡むのか。あっと驚く展開を期待したいです。
さいごに。(我が地域でも緊急事態宣言)
我が社では、仕事の半分を在宅勤務とし、職場の人を半減するよう求められました。
それも、明日の月曜日から実施せよとのこと。
私は、午前をほぼ在宅勤務にし、お客さんが来る午後には出勤する予定です。
今は、みんなでがんばらなければならないとき。なんとかシフトを組まなくては。
南洋の小国ナビダード民主共和国大統領、マシアス・ギリが失脚するまでの物語です。
魔術的リアリズムの手法で描かれた独裁者小説で、1993年に谷崎賞を受賞しました。
舞台は、南洋のどこかにある、ナビダード民主共和国。人口7万人の小さな島国です。
かつて日本の統治領だったことがあり、そのため日本との深いつながりがある国です。
主人公は大統領のマシアス・ギリ。日本語堪能で、日本と太いパイプを持っています。
二代大統領の地位を滑り落ちた後、何か後ろめたい手段を用いて返り咲いたようです。
ある日、日本から来た慰霊団のバスが失踪し、ケンペー隊の捜査は難航していました。
一方、日本政府からの密使である鈴木が持ち掛けた提案には、何か裏がありそうです。
マシアス・ギリは、我が身に変化が起きつつあることを、なんとなく感じ取りました。
彼は問題に対処するため、霊力を持つ女エメリアナをそばに置きましたが・・・
読書仲間から「この作品は日本のラテンアメリカ文学だ」と聞き、興味を持ちました。
600ページ以上に及ぶ大作ですが、現在、半ばの300ページほどまで読みました。
ガルシア・マルケスに心酔していた池澤は、魔術的リアリズムの手法を用いました。
巫女的存在のエメリアナ、亡霊のリー・ボー、そして千変万化するバス・・・
南米的な幻想世界が広がっています。しかし、ただのファンタジーではありません。
この作品をさらに魅力的にしているのは、随所で述べられる歴史観や日本論です。
「われわれが住むこの大きな騒乱の世紀を開いた戦争が、その戦場をほぼヨーロッパ
に限定しながらもなお世界大戦と呼ばれるのは、まさにこの時になって一つの世紀と
一つの世界が重なるという現象が起こったからである。一つの時間意識と一つの空間
意識が同時にこの惑星の上のすべての人間を包み込んだ。」(P98)
「この国を本当に世界に冠たる国にするには、歴史のこの局面で一度は敗北というこ
とを味わうことが必要なのだ。これによって制度としての天皇制は、先の日の発展を
読み、最も強い機能を発揮する。」(P115)
一見物語と関係ないような文章ですが、実は奥深い所で有機的につながっています。
物語を読み進めながら、異文化問題や独裁制など、多くの問題を考えさせられます。
ところが、私によく理解できなかったのが、時々挿入される「バスリポート」です。
「バスが海を泳いでいたよ」とか、「バスが空を飛んで行ったよ」とか・・・
いったい何が面白いのか。シムラやカトちゃんが、言いそうなことではないか。
魔術的な雰囲気を出そうとして失敗し、単なる子供だましになってしまったようです。
一方「バスリポート」を「これぞ池澤ワールド」と評する人もいて、理解に苦しむ。
この先このバスが、どのように物語に絡むのか。あっと驚く展開を期待したいです。
さいごに。(我が地域でも緊急事態宣言)
我が社では、仕事の半分を在宅勤務とし、職場の人を半減するよう求められました。
それも、明日の月曜日から実施せよとのこと。
私は、午前をほぼ在宅勤務にし、お客さんが来る午後には出勤する予定です。
今は、みんなでがんばらなければならないとき。なんとかシフトを組まなくては。
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