マクティーグ [19世紀アメリカ文学]
「死の谷(マクティーグ)」 ノリス作 石田英二・井上宗次訳 (岩波文庫)
巨漢で鈍重な歯科医マクティーグの、結婚生活とその後の悲劇を描いた物語です。
岩波文庫版は2020年2月に復刊されたばかり。初訳は1957年ですが分かりやすい。
愚鈍で従順で巨体で怪力のマクティーグは、無免許で歯科医を営んでいました。
彼には、たった一人だけ友だちがいました。同じアパートに住むマーカスです。
あるときマクティーグのところへ、マーカスが恋人のトリナを連れて来ました。
マクティーグは、治療を通じてトリナに惹かれ、友情と恋の板挟みになりました。
マクティーグの悩みを知ったマーカスは、男気を起こしてトリナを譲りました。
男同士の友情は、最高潮に達しました。しかし、トリナが富くじに当たると・・・
さて。幸運に見えることが、あとから振り返ると、不幸の始まりだったりします。
宝くじの当選によって、人生の歯車が狂い出すことは、世間でもよくあります。
最高の友だちが最大の敵になったり、最愛の妻が憎たらしい相手になったり・・・
そういう人間関係の変化が面白くて、前半からぐいぐい引き込まれました。
下巻に入ってからは、物語の展開がさらに面白くなり、まったく目が離せません。
訳は1957年と古いのに読みやすくて、私は物語にのめり込んでしまいました。
そして、「死の谷」での衝撃のラスト。二人の友は、いかにして破滅したか?
まったく、この二人ときたら! 悲しいと言うより、滑稽でした。
ところで、マクティーグの不幸の原因は、体に流れる血の中にもあったようです。
悲劇はすでに宿命として刻印されていたもので、彼の罪ではないのかもしれません。
「彼の内部におけるあらゆる善きものの美しい生地の下に、代々伝わる悪の忌まわ
しい流れが下水のように走っていたのだ。」(上巻P41)
そういえば、マクティーグが変になったのは、ウィスキーを飲んでからでした。
ならば、物語の最初に、彼の父について次のように書かれていることは重要です。
「二週間に一度の日曜日ごとに、彼は酒で気が狂ったようになり、無責任な動物、
獣、畜生になった。」(P11)
この物語には、ほかにも魅力的なわき役たちがいて、味わいを深くしています。
中でも、マリアとザーコフの「金の皿」をめぐる悲劇は、とても印象的でした。
さいごに。(コロナが懐かしかったりして)
予想はしていましたが、6月の残業時間は、余裕で過労死レベルでした。
コロナの頃が懐かしい、在宅勤務が懐かしい、と言ったら、怒られるでしょうけど。
巨漢で鈍重な歯科医マクティーグの、結婚生活とその後の悲劇を描いた物語です。
岩波文庫版は2020年2月に復刊されたばかり。初訳は1957年ですが分かりやすい。
愚鈍で従順で巨体で怪力のマクティーグは、無免許で歯科医を営んでいました。
彼には、たった一人だけ友だちがいました。同じアパートに住むマーカスです。
あるときマクティーグのところへ、マーカスが恋人のトリナを連れて来ました。
マクティーグは、治療を通じてトリナに惹かれ、友情と恋の板挟みになりました。
マクティーグの悩みを知ったマーカスは、男気を起こしてトリナを譲りました。
男同士の友情は、最高潮に達しました。しかし、トリナが富くじに当たると・・・
さて。幸運に見えることが、あとから振り返ると、不幸の始まりだったりします。
宝くじの当選によって、人生の歯車が狂い出すことは、世間でもよくあります。
最高の友だちが最大の敵になったり、最愛の妻が憎たらしい相手になったり・・・
そういう人間関係の変化が面白くて、前半からぐいぐい引き込まれました。
下巻に入ってからは、物語の展開がさらに面白くなり、まったく目が離せません。
訳は1957年と古いのに読みやすくて、私は物語にのめり込んでしまいました。
そして、「死の谷」での衝撃のラスト。二人の友は、いかにして破滅したか?
まったく、この二人ときたら! 悲しいと言うより、滑稽でした。
ところで、マクティーグの不幸の原因は、体に流れる血の中にもあったようです。
悲劇はすでに宿命として刻印されていたもので、彼の罪ではないのかもしれません。
「彼の内部におけるあらゆる善きものの美しい生地の下に、代々伝わる悪の忌まわ
しい流れが下水のように走っていたのだ。」(上巻P41)
そういえば、マクティーグが変になったのは、ウィスキーを飲んでからでした。
ならば、物語の最初に、彼の父について次のように書かれていることは重要です。
「二週間に一度の日曜日ごとに、彼は酒で気が狂ったようになり、無責任な動物、
獣、畜生になった。」(P11)
この物語には、ほかにも魅力的なわき役たちがいて、味わいを深くしています。
中でも、マリアとザーコフの「金の皿」をめぐる悲劇は、とても印象的でした。
さいごに。(コロナが懐かしかったりして)
予想はしていましたが、6月の残業時間は、余裕で過労死レベルでした。
コロナの頃が懐かしい、在宅勤務が懐かしい、と言ったら、怒られるでしょうけど。
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