ブラス・クーバスの死後の回想 [20世紀ラテンアメリカ文学]
「ブラス・クーバスの死後の回想」
マシャード・ジ・アシス作 武田千香訳 (古典新訳文庫)
死んでから作家となったブラス・クーバスが、生涯を振り返って書いた回想録です。
作者はブラジルで最も有名な作家のひとりです。1881年に出た本書は代表作です。
「わたし」ブラス・クーバスは、1869年8月に自分の屋敷で息を引き取りました。
死後、どういうわけか作家となり、64年の生涯を160の断章で綴っていきます。
死んだ日のこと、死の直前の幻想、誕生、家族のこと、子供のころの思い出・・・
マルセーラ、エウジェニア、そして、自分と結婚するはずだったヴィルジニア・・・
この作品は「小説の常識を覆す小説」「小説に挑戦した小説」などと紹介されます。
というのも、各断章はユニークで、とりとめのないつながり方をしているからです。
「七十一章 本の欠点」では、前章までの話の流れは、どこかにいってしまいます。
そして「この本のことを後悔している」と話し始めますが、これがなかなか面白い。
「なぜなら、本書の最大の欠点は、読者よ、あなただからだ。
あなたは老いを急ぐが、本の歩みはのろのろしている。」
「百三十九章 いかに国務大臣にならなかったかについて」は、なんと、空白です。
理由は次章で「物事には沈黙で語ったほうがいいことがある。」と説明されています。
さて、この作品の命は、死者が生涯を語り出すという奇抜な発想にあります。
私はとても期待したのですが、しかし、彼の人生自体は、まったく普通でした。
ちょっとお金がある男が、結婚もせず、成功もせず、ぐだぐだと生きています。
人生唯一のヤマ場は、ヴィルジニアとの不倫話ですが、劇的な展開はありません。
自分が死霊となって出現することもなく、他の死者を蘇らせることもありません。
これでは、死者が作者となった意味が、ほとんどないのではないでしょうか?
ところで、この作品は細切れなので、読みやすかったです。訳も分かりやすいです。
章ごとにページが変わるので余白が多くて、分量が多いわりにサクサク進みました。
なお、マシャード・ジ・アシスの作品は、現在ほとんど出ていないので貴重です。
古典新訳文庫からは、さらにもう一つの代表作「ドン・カズムッホ」も出ました。
さいごに。(娘の大会)
中学2年生の娘の、陸上競技の大会が行われましたが、見に行けませんでした。
厳重なコロナ対策のため、3年生の保護者以外は、入場禁止となったからです。
これは、仕方ありません。高校の方は、無観客でやっていましたから。
ちなみに娘は、走高跳に出て記録なし。最初の1m25が跳べなかったのだそうです。
マシャード・ジ・アシス作 武田千香訳 (古典新訳文庫)
死んでから作家となったブラス・クーバスが、生涯を振り返って書いた回想録です。
作者はブラジルで最も有名な作家のひとりです。1881年に出た本書は代表作です。
「わたし」ブラス・クーバスは、1869年8月に自分の屋敷で息を引き取りました。
死後、どういうわけか作家となり、64年の生涯を160の断章で綴っていきます。
死んだ日のこと、死の直前の幻想、誕生、家族のこと、子供のころの思い出・・・
マルセーラ、エウジェニア、そして、自分と結婚するはずだったヴィルジニア・・・
この作品は「小説の常識を覆す小説」「小説に挑戦した小説」などと紹介されます。
というのも、各断章はユニークで、とりとめのないつながり方をしているからです。
「七十一章 本の欠点」では、前章までの話の流れは、どこかにいってしまいます。
そして「この本のことを後悔している」と話し始めますが、これがなかなか面白い。
「なぜなら、本書の最大の欠点は、読者よ、あなただからだ。
あなたは老いを急ぐが、本の歩みはのろのろしている。」
「百三十九章 いかに国務大臣にならなかったかについて」は、なんと、空白です。
理由は次章で「物事には沈黙で語ったほうがいいことがある。」と説明されています。
さて、この作品の命は、死者が生涯を語り出すという奇抜な発想にあります。
私はとても期待したのですが、しかし、彼の人生自体は、まったく普通でした。
ちょっとお金がある男が、結婚もせず、成功もせず、ぐだぐだと生きています。
人生唯一のヤマ場は、ヴィルジニアとの不倫話ですが、劇的な展開はありません。
自分が死霊となって出現することもなく、他の死者を蘇らせることもありません。
これでは、死者が作者となった意味が、ほとんどないのではないでしょうか?
ところで、この作品は細切れなので、読みやすかったです。訳も分かりやすいです。
章ごとにページが変わるので余白が多くて、分量が多いわりにサクサク進みました。
なお、マシャード・ジ・アシスの作品は、現在ほとんど出ていないので貴重です。
古典新訳文庫からは、さらにもう一つの代表作「ドン・カズムッホ」も出ました。
さいごに。(娘の大会)
中学2年生の娘の、陸上競技の大会が行われましたが、見に行けませんでした。
厳重なコロナ対策のため、3年生の保護者以外は、入場禁止となったからです。
これは、仕方ありません。高校の方は、無観客でやっていましたから。
ちなみに娘は、走高跳に出て記録なし。最初の1m25が跳べなかったのだそうです。
2020-07-16 04:00
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