サロメ(原田マハ) [日本の現代文学]
「サロメ」 原田マハ (文春文庫)
ビアズリーの挿絵で世間を驚かせた、ワイルドの戯曲「サロメ」にまつわる物語です。
作者一流の絵画小説で、今年5月に文庫化されたばかり。カバーのイラストが美しい。
1981年、18歳のオーブリー・ピアズリーは、画家バーン=ジョーンズを訪ねました。
そこにたまたま居合わしたのが、今を時めく36歳のオスカー・ワイルドでした。
ビアズリーの絵を一目見て、ジョーンズもワイルドも驚愕し、言葉も出ませんでした。
オーブリーがワイルドを見返したとき、ふたりの間には強い磁力が働き合い・・・
「君は芸術家になる。それも、不世出の。そして、もう決してあとには戻れなくなるだ
ろう。なぜなら・・・
――なぜなら、私が君をより遠いところまで連れていくことになるだろうから。」
(P98)
推理小説っぽく始まりますが、それを期待していると、軽い失望を覚えるでしょう。
名作「楽園のカンヴァス」のような、あっと驚くような展開は無いので。
そのかわり、十九世紀の世紀末の退廃的な雰囲気に、どっぷり浸かることができます。
特に、裏の主役であるオスカー・ワイルドの、妖しい雰囲気がたまらない!
「私は、とっくに覚悟している。罪人になることを。なぜなら、あらゆる芸術は不道
徳だからだ。
君がやるべきことは、たったひとつ。
地獄に落ちることだ。——この私と一緒に。」(P232)
一方、ビアズリーの挿絵の魅力については、こんなふうに書かれていました。
ほんと、こういう文章を書かせたら、原田マハは天下一品ですね。
「仄暗い沼底で妖しく揺らめく得体の知れぬ微光。ほのかな明滅に引き寄せられる迷
いびとが、ひと目その光を見たならば、またたくまに引き込まれ、沼底へと飲み込ま
れてしまう、抗いがたい魅力。」(P148)
なお、「サロメ」の挿絵には、ワイルドをデフォルメして描き込んでいると言います。
知らなかった。改めて、岩波文庫版「サロメ」の挿絵を、チェックしてしまいました。
「サロメ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2010-09-18
次は、ゴッホを描いた「たゆたえども沈まず」や「ゴッホのあしあと」を読みたい。
それから、ピカソを描いた「暗幕のゲルニカ」も読まなければ。
さいごに。(声をかけないでって?)
先日、陸上競技場に行ったら、娘の中学校が練習で来ていました。
ところが、娘にこういうときは「声をかけないで」と言われています。
近くで走っていたので、声をかけたり手を振ったりしたかったのですが、我慢しました。
思春期の女の子には、何かと気を使いますね。
ビアズリーの挿絵で世間を驚かせた、ワイルドの戯曲「サロメ」にまつわる物語です。
作者一流の絵画小説で、今年5月に文庫化されたばかり。カバーのイラストが美しい。
1981年、18歳のオーブリー・ピアズリーは、画家バーン=ジョーンズを訪ねました。
そこにたまたま居合わしたのが、今を時めく36歳のオスカー・ワイルドでした。
ビアズリーの絵を一目見て、ジョーンズもワイルドも驚愕し、言葉も出ませんでした。
オーブリーがワイルドを見返したとき、ふたりの間には強い磁力が働き合い・・・
「君は芸術家になる。それも、不世出の。そして、もう決してあとには戻れなくなるだ
ろう。なぜなら・・・
――なぜなら、私が君をより遠いところまで連れていくことになるだろうから。」
(P98)
推理小説っぽく始まりますが、それを期待していると、軽い失望を覚えるでしょう。
名作「楽園のカンヴァス」のような、あっと驚くような展開は無いので。
そのかわり、十九世紀の世紀末の退廃的な雰囲気に、どっぷり浸かることができます。
特に、裏の主役であるオスカー・ワイルドの、妖しい雰囲気がたまらない!
「私は、とっくに覚悟している。罪人になることを。なぜなら、あらゆる芸術は不道
徳だからだ。
君がやるべきことは、たったひとつ。
地獄に落ちることだ。——この私と一緒に。」(P232)
一方、ビアズリーの挿絵の魅力については、こんなふうに書かれていました。
ほんと、こういう文章を書かせたら、原田マハは天下一品ですね。
「仄暗い沼底で妖しく揺らめく得体の知れぬ微光。ほのかな明滅に引き寄せられる迷
いびとが、ひと目その光を見たならば、またたくまに引き込まれ、沼底へと飲み込ま
れてしまう、抗いがたい魅力。」(P148)
なお、「サロメ」の挿絵には、ワイルドをデフォルメして描き込んでいると言います。
知らなかった。改めて、岩波文庫版「サロメ」の挿絵を、チェックしてしまいました。
「サロメ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2010-09-18
次は、ゴッホを描いた「たゆたえども沈まず」や「ゴッホのあしあと」を読みたい。
それから、ピカソを描いた「暗幕のゲルニカ」も読まなければ。
さいごに。(声をかけないでって?)
先日、陸上競技場に行ったら、娘の中学校が練習で来ていました。
ところが、娘にこういうときは「声をかけないで」と言われています。
近くで走っていたので、声をかけたり手を振ったりしたかったのですが、我慢しました。
思春期の女の子には、何かと気を使いますね。
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