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ユリシーズ4 [20世紀イギリス文学]

 「ユリシーズⅢ」 ジェイムズ・ジョイス作 丸谷才一・永川玲二・高松雄一訳
 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ)


 1904年6月16日のダブリンでの一日を、さまざまな文体を駆使して描いた小説です。
 全四巻のうちの第三巻で、14と15挿話が収録されています。

 「ユリシーズ1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-28
 「ユリシーズ2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-05-31
 「ユリシーズ3」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-06-06


ユリシーズ 3 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ユリシーズ 3 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2003/12/16
  • メディア: 文庫



 夜の十時、ブルームは立ち寄った病院で、酒を飲む医学生たちと出会いました。
 その中にいたスティーヴンを見ると、ブルームは死んだ息子を思い出したのです。

 酒場で騒いだ後、スティーヴンらは娼家街に入り、ブルームはそのあとを追います。
 しかし、途中で彼らを見失い、突然ブルームはさまざまな幻覚に襲われて・・・

 14章「太陽神の牛」は、古代英語、中世英語、現代英語と、文体が次々と変化します。
 それに合わせて翻訳も、古事記風、源氏物語風、平家物語風と、次々と変化します。

 「南行保里為佐。南行保里為佐。南行保里為佐。
  いざ賜へ、光の神、日の神、角々先生様、胎動初感と胎の実を、いざ賜へ」(P13)

 「げに、才ある学生どもなればこそ。産婦と子のいづれをわきに救ふべうにやの品さ
 だめ、おのおのし給ふを、聞し召すに、・・・」(P23)

 「約メテ之ヲ申サバ、此ノ応酬ノ終ルヤ忽地、埃克爾斯街馬利亜病院ノ抽克遜殿、ニ
 コヤカニ笑ンデ若キ史梯芬ニ問ヒケルハ、」(P30)

 稀有な試みです。原作も翻訳も、この部分は、たいへんな作業だったと思います。
 その一方で、「そんなことをしてどんな意味があるのか?」と思ってしまいました。

 文体のパロディを入れることで、猥雑な感じは出ました。
 でも、「だから、何?」と言いたいです。

 これを文学と称していいのでしょうか。ただの「あそび」ではないでしょうか?
 とても手の込んだ「あそび」ではないでしょうか?

 正直に言って、作品にどのような効果をもたらしたのか、まったく分かりません。
 ついでながら、内容もほとんど分かりませんでした。

 とはいえ、「さすがジョイス、サイコー!」と思っている方もいるはずです。
 そのような優れた読解力をお持ちの方に、分かりやすい解説をお願いしたいです。

 さて、続く15章「キルケ」は断片から成っているので、最初はとっつきやすいです。
 しかし、幻覚が度々挟まれるので、話についていけなくなりました。

 いきなり裁判がはじまったり、ブルームが皇帝になったり、女になったり・・・
 そのうち、何が幻覚で何がリアルなのか分からなくなってしまいました。

 しかも、15章は400ページほどです。我ながら、よく投げ出さなかったと思います。
 ある意味、この第三巻が、最大の山場だったかもしれません。

 次はいよいよラストの第四巻です。
 いったいどんな結末を迎えるのか?

 さいごに。(古典だけは)

 高校に入って、娘の学習内容のレベルが、一段も二段も上がりました。
 他の科目はまったく分かりませんが、辛うじて国語だけなら教えることができます。

 古文の宿題を手伝ったら、「たまには役に立つじゃん」と上から目線で言われました。
 そんなふうに言われたのは、久しぶりだったので、不覚にも喜んでしまいました。

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