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月の満ち欠け [日本の現代文学]

 「月の満ち欠け」 佐藤正午 (岩波文庫的)


 女が何度も生まれ変わって、男に会いにいくという、転生を題材にした小説です。
 2017年の直木賞受賞作で、2019年に初の「岩波文庫的」として文庫化されました。


岩波文庫的 月の満ち欠け

岩波文庫的 月の満ち欠け

  • 作者: 正午, 佐藤
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2019/10/05
  • メディア: 文庫



 三角哲彦(みすみあきひこ)は20歳のとき、28歳の瑠璃(るり)と恋に落ちました。
 しかし、瑠璃は正木という男の妻であって、三角との関係はひどく危ういものでした。

 あるとき瑠璃は三角に、「いつでも、試しに死ぬ覚悟はある」と言うことを言います。
 「月のように死んで、月の満ち欠けのように、生と死を繰り返して会いに来る」と。

 そのわずか一週間後、瑠璃は地下鉄での不慮の事故で、本当に死んでしまいました。
 そして三角の頭には、「月のように死んで生まれ変わる」という言葉が刻まれました。

 その7年後、小山内瑠璃という7歳の少女が、高熱のあと記憶を取り戻し・・・
 18歳になった小山内瑠璃とその母は、三角に会いに行く途中で交通事故に遭い・・・

 その不幸な事故から7年後、小沼希美は原因不明の高熱のあと記憶を取り戻し・・・
 やがて正木は、希美がかつての◯であることに気づいて・・・

 さすが直木賞受賞作です。めちゃくちゃ面白いです。読み始めたら本を置けません。
 私は休日にいっき読みしました。久々に読書の楽しみを、心から味わいました。

 そして、感動のラスト。思わず涙が出てきます。
 ただ、もう少しふたりのその後を描いてほしかったです。(もう少しだけ)

 また、四代に渡る物語なので、人物関係が複雑で、なかなか頭が整理できません。
 出てくる順序も不規則なので、途中から人物関係図を書きながら読み進めました。

 そのほか、この小説については、「とにかく買って読んでみて」とだけ伝えたい。
 ついでながら、映画の方も見てみたいです。有村架純も出ているし!



 ところで小説中に、「前世を記憶する子どもたち」(角川文庫)が出ていました。
 2021年に出たばかりの本で、積ん読中の本です。この作品によって広まりそうです。


前世を記憶する子どもたち (角川文庫)

前世を記憶する子どもたち (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/08/24
  • メディア: 文庫



 また、転生ものの作品といえば、以前「前世への冒険」を紹介しました。傑作です。
 「前世への冒険」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2012-08-17

 転生と言ったら、三島由紀夫の「豊饒の海シリーズ」だろ、という人も多いです。
 しかし、私的には「春の雪」が傑作すぎて、シリーズで扱う気がしないので除外!
 「春の雪」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2015-12-23-1

 さいごに。(3月発売予定の気になる文庫本)

 3/7 「決定版 第二の性(1)事実と神話」 ボーヴォワール (河出文庫)
  → 「人は女に生まれない。女になるのだ。」 ボーヴォワールの代表作。
    以前新潮文庫で出ていた本の復刊か。新潮文庫版はプレミアがついて高値。

 3/14 「転落」 カミュ (光文社古典新訳文庫)
  → 今年ぜひ読みたいと思っていた小説の待望の新訳。とてもありがたい。

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