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夏子の冒険 [日本の近代文学]

 「夏子の冒険」 三島由紀夫 (角川文庫)


 突飛な行動をとる美しいお嬢様夏子と、仇討ちの青年との恋と冒険のドタバタ劇です。
 1951年に出ました。村上春樹の「羊をめぐる冒険」の元ネタという説があります。


夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: 文庫



 「あたくし修道院へ入る」
 夏子は絶望していたのです。情熱を宿している青年がひとりもいないことに。

 「まるで袋小路の行列だわ(中略)だってあの中どのの男のあとについて行っても
 すばらしい新しい世界へ行ける道はふさがれていることがよくわかるもの」(P15)

 こうして20歳の美しい松浦夏子は、修道院に入るため、家族と北海道に渡りました。
 ところが連絡船の中、猟銃を抱えた青年に出会い、その情熱的な瞳に惹かれました。

 夏子は、その青年井田が、仇の熊をつけ狙っていることを知り、魅力を感じました。
 そして、その仇討ちのともをするべく、宿に置手紙を残して失踪して・・・

 という具合に、北海道を舞台に、夏子の恋と冒険は始まります。
 ふたりはかたきの熊を倒すことができるか? 夏子は憧れの恋を手に入れられるか?

 さて、この小説は、夏子と井田の「熊をめぐる冒険」と言うことができます。
 そして村上春樹の「羊をめぐる冒険」は、この小説の書き換えだと言われています。

 たとえば「羊をめぐる冒険」第一章「1970/11/25」は、三島が自決した日だと言う。
 そう言われて、改めて興味が湧きました。「羊をめぐる冒険」も再読したいです。

 ところで私は、「羊をめぐる冒険」に対する興味から、この小説を読みました。
 では、そういう興味を抜きにして、「夏子の冒険」は面白かったか?

 正直に言って、微妙なところです。というのも、主人公のお嬢様が・・・
 夏子の思いのままふるまう姿を、魅力的だと思えれば、素敵な小説だと思います。

 1951年当時、男を屁とも思わない女性は、きっと珍しくて、新鮮だったでしょう。
 だから、夏子のような女性を描く意味は、大きかったのかもしれません。

 しかし、「春の雪」の綾倉聡子に魅了された私には、あまり響きませんでした。
 伯爵家の美貌の令嬢聡子に比べたら、夏子はただのつまらないお転婆娘ですよ。

 と、書いているうちに、今度は「春の雪」を再読したくなりました。
 あの世界こそが、三島由紀夫です。やっぱり、聡子ですよ。綾倉聡子ですよ!
 「春の雪」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2015-12-23-1

 「夏子の冒険」が興味深い作品であることは確かで、読む価値はあると思います。
 しかし、他の三島作品に比べて、一段も二段も落ちるような気がしてしまいます。

 さて、次は「金閣寺」を読みたいです。三島の最高傑作とも言われる作品です。
 だからこそ、これまで読み始められませんでした。もう何年も積ん読状態です。

 さいごに。(またしてもカラオケネタ)

 私の通っているカラオケ屋には、グッチ雄三の「一週間」がありません。
 しかし、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はあります。

 試しに「スモーク・・・」で、「一週間」を歌ってみたら、ちゃんと歌えました!
 ただし、曲が6分以上と長いので、途中で「演奏停止」ボタンを押しています。

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