鹿の王1 [日本の現代文学]
「鹿の王1~2」 上橋菜穂子 (角川文庫)
謎の病から生き延びて放浪する男と、謎の病の治療法を求める男を描いた物語です。
2014年刊行のファンタジー小説です。翌2015年に本屋大賞の第1位となりました。
ヴァンは、ピュイカ(飛鹿)に乗る軍団独角(どっかく)の頭で、物語の主人公です。
強大な東乎瑠(つおる)帝国と戦って敗れ、岩塩鉱で奴隷として労働していました。
あるとき岩塩鉱がオッサム(山犬)に襲われ、全員が咬まれて謎の病で死にました。
なぜかヴァンは生き延びて、つながれていた鎖を怪力で断ち切り、脱出を試みます。
岩塩鉱の建物で食べ物を漁っていると、泣き声が聞こえ、女の幼子を見つけました。
女児を背負って逃亡したヴァンは、自分の感覚が鋭くなっていることに気づきます。
交易都市カザンに向かう途中、トマという青年に出会い彼の故郷オキを頼りました。
ピュイカの扱いに慣れたヴァンは、トマの家族に歓迎され、ひと冬を過ごし・・・
ホッサルは、東乎瑠帝国に仕えるオタワル人の医術師で、もうひとりの主人公です。
岩塩鉱を全滅させた謎の病を調査するため、マコウカンを従えてやってきました。
彼は死体を観察して、この病がミッツァル(黒狼熱)ではないかと考えました。
それは、約250年前に大流行し、古オタワル王国を滅亡に追い込んだ伝説の病です。
また彼は、ひとつの壊された足枷を見て、生き延びた者がいることを知りました。
もし生き延びた者がいるのなら、ミッツァルの特効薬作りのヒントになります。
ホッサルは、「跡追い」の女人サエに、逃亡奴隷ヴァンの行方を探らせました。
サエはわずかな痕跡をたどりオキに向かいますが、途中多くの山犬に襲われ・・・
読みだしたら止まりません。さすが、本屋大賞になった作品です。
物語世界がとても緻密に構築されているため、その中にどっぷりと入り込めます。
たとえば、舞台となっているアカファ地方は、現在東乎瑠帝国領となっています。
しかし、以前はアカファ王国の地であり、今もゆるやかな自治が許されています。
以前アカファ王国は、繫栄していた古オタワル王国の一地方にすぎませんでした。
オタワル王国でミッツァルが流行したとき、アカファは被害を受けませんでした。
そこで、オタワル王国最後の王が、アカファの首都に遷都し王権を譲ったのです。
しかし、オタワル人はオタワル聖領にいて、その後のアカファを支え続けました。
そして、オタワル人は今も、アカファにおいて大きな影響力を持ち続けて・・・
という具合です。物語の背景だけ見ていても、とてもわくわくしてきます。
それだけでなく、アカファや東乎瑠の文化についても実に詳細に描かれています。
食については、目で見えるようです。作者は文化人類学者だそうで、さすがです。
私としては特に、ヴァンが獣に咬まれたあとに見た夢が、とても気になります。
それは、腕の傷口から木の根が生え、枝分かれして全身を満たすというものです。
ヴァンは、おそらくその時点で生まれ変わりました。理由はまだ分かりません。
しかし、人間離れした怪力や鋭い直感は、その日を境に発揮され始めたのです。
そして第2巻では、ヴァンは山犬と同調し、彼らの光る命の糸が見えたりします。
そのことを、謎の老人谺主(こだまぬし)は「裏返し」と呼びます。それは何か?
さて、ヴァンはなぜ生き残ったのか? ホッサルはヴァンを見つけ出せるのか?
ミッツァルはなぜ再び現れたのか? ミッツァルの特効薬はできるのか?
気にかかる点は多いのですが、私にはオタワル人の生き方が興味深かったです。
「他者を生かし幸せにすることで、自分も生き幸せになる」という価値観が。
「食われるのであれば、巧く食われればよい。食われた物が、食った者の身体と
なるのだから」(1巻P287)
さいごに。(「クソ野郎」訴訟に思う)https://news.yahoo.co.jp/articles/d5e1a03060af420f78b515f1a2581f65a80e9f4d
クソ野郎訴訟の大石晃子(れいわ新選組)が、まさか高裁で完全勝利するとは!
クソには色んな意味があるとはいえ、クソ野郎はとてもひどい侮蔑表現ですよ。
たとえば「大石晃子のクソ野郎」(良い意味)という表現は、許されるでしょうか?
私は絶対ダメだと思います。言葉が乱れると国も乱れます。嘆かわしいことです。
以前、れいわの山本太郎が、国会で首相を「増税クソメガネ」と言い放ちました。
れいわの「クソ」好きは分かりますが、もっと品のある言葉選びをしてほしいです。
謎の病から生き延びて放浪する男と、謎の病の治療法を求める男を描いた物語です。
2014年刊行のファンタジー小説です。翌2015年に本屋大賞の第1位となりました。
ヴァンは、ピュイカ(飛鹿)に乗る軍団独角(どっかく)の頭で、物語の主人公です。
強大な東乎瑠(つおる)帝国と戦って敗れ、岩塩鉱で奴隷として労働していました。
あるとき岩塩鉱がオッサム(山犬)に襲われ、全員が咬まれて謎の病で死にました。
なぜかヴァンは生き延びて、つながれていた鎖を怪力で断ち切り、脱出を試みます。
岩塩鉱の建物で食べ物を漁っていると、泣き声が聞こえ、女の幼子を見つけました。
女児を背負って逃亡したヴァンは、自分の感覚が鋭くなっていることに気づきます。
交易都市カザンに向かう途中、トマという青年に出会い彼の故郷オキを頼りました。
ピュイカの扱いに慣れたヴァンは、トマの家族に歓迎され、ひと冬を過ごし・・・
ホッサルは、東乎瑠帝国に仕えるオタワル人の医術師で、もうひとりの主人公です。
岩塩鉱を全滅させた謎の病を調査するため、マコウカンを従えてやってきました。
彼は死体を観察して、この病がミッツァル(黒狼熱)ではないかと考えました。
それは、約250年前に大流行し、古オタワル王国を滅亡に追い込んだ伝説の病です。
また彼は、ひとつの壊された足枷を見て、生き延びた者がいることを知りました。
もし生き延びた者がいるのなら、ミッツァルの特効薬作りのヒントになります。
ホッサルは、「跡追い」の女人サエに、逃亡奴隷ヴァンの行方を探らせました。
サエはわずかな痕跡をたどりオキに向かいますが、途中多くの山犬に襲われ・・・
読みだしたら止まりません。さすが、本屋大賞になった作品です。
物語世界がとても緻密に構築されているため、その中にどっぷりと入り込めます。
たとえば、舞台となっているアカファ地方は、現在東乎瑠帝国領となっています。
しかし、以前はアカファ王国の地であり、今もゆるやかな自治が許されています。
以前アカファ王国は、繫栄していた古オタワル王国の一地方にすぎませんでした。
オタワル王国でミッツァルが流行したとき、アカファは被害を受けませんでした。
そこで、オタワル王国最後の王が、アカファの首都に遷都し王権を譲ったのです。
しかし、オタワル人はオタワル聖領にいて、その後のアカファを支え続けました。
そして、オタワル人は今も、アカファにおいて大きな影響力を持ち続けて・・・
という具合です。物語の背景だけ見ていても、とてもわくわくしてきます。
それだけでなく、アカファや東乎瑠の文化についても実に詳細に描かれています。
食については、目で見えるようです。作者は文化人類学者だそうで、さすがです。
私としては特に、ヴァンが獣に咬まれたあとに見た夢が、とても気になります。
それは、腕の傷口から木の根が生え、枝分かれして全身を満たすというものです。
ヴァンは、おそらくその時点で生まれ変わりました。理由はまだ分かりません。
しかし、人間離れした怪力や鋭い直感は、その日を境に発揮され始めたのです。
そして第2巻では、ヴァンは山犬と同調し、彼らの光る命の糸が見えたりします。
そのことを、謎の老人谺主(こだまぬし)は「裏返し」と呼びます。それは何か?
さて、ヴァンはなぜ生き残ったのか? ホッサルはヴァンを見つけ出せるのか?
ミッツァルはなぜ再び現れたのか? ミッツァルの特効薬はできるのか?
気にかかる点は多いのですが、私にはオタワル人の生き方が興味深かったです。
「他者を生かし幸せにすることで、自分も生き幸せになる」という価値観が。
「食われるのであれば、巧く食われればよい。食われた物が、食った者の身体と
なるのだから」(1巻P287)
さいごに。(「クソ野郎」訴訟に思う)https://news.yahoo.co.jp/articles/d5e1a03060af420f78b515f1a2581f65a80e9f4d
クソ野郎訴訟の大石晃子(れいわ新選組)が、まさか高裁で完全勝利するとは!
クソには色んな意味があるとはいえ、クソ野郎はとてもひどい侮蔑表現ですよ。
たとえば「大石晃子のクソ野郎」(良い意味)という表現は、許されるでしょうか?
私は絶対ダメだと思います。言葉が乱れると国も乱れます。嘆かわしいことです。
以前、れいわの山本太郎が、国会で首相を「増税クソメガネ」と言い放ちました。
れいわの「クソ」好きは分かりますが、もっと品のある言葉選びをしてほしいです。
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