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ジョーカー・ゲーム [日本の現代文学]

 「ジョーカー・ゲーム」 柳広司 (角川文庫)


 スパイ養成学校の創設者結城中佐と、部下のスパイたちの活躍を描いた連作小説です。
 2008年に刊行され、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞した傑作です。


ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 文庫



 1年半前、佐久間陸軍中尉は武藤大佐に呼ばれ、D機関への出向を命じられました。
 D機関とはスパイの養成学校のことで、佐久間の任務は参謀本部との連絡係でした。

 佐久間は武藤大佐から、アメリカ人技師のスパイ容疑の証拠を探せと言われました。
 D機関の三好少尉一行は憲兵隊に偽装し、アメリカ人技師宅に踏み込みますが・・・

 まさか、それが罠だったとは! いったい誰が仕組んだ罠だったのか?
 そして、証拠のマイクロフィルムは、いったいどこに隠してあったのか?

 以上は冒頭のタイトル作「ジョーカー・ゲーム」です。
 ほか全5編、すべてD機関の活躍を描いたスパイ小説で、いずれもめちゃ面白い。

 「ロビンソン」もまた、実に印象的な作品です。 
 ロンドンで活動中の伊沢が、スパイ容疑で逮捕されたところから始まります。

 英国諜報機関に利用され、味方に偽情報を流したことで、どのような結果が?
 結城中佐が餞別として与えた「ロビンソン・クルーソー」には、どんな意味が?

 全5編を通して独特の味わいを醸し出しているのが、D機関の創設者結城中佐です。
 audibleの中でも、結城の静かだがドスの聞いた声は、とても印象的でした。

 さて、昭和12年、結城中佐の発案でスパイ養成学校(D機関)が開設されました。
 ここで鍛え上げられた者たちは、世界各地で「見えない存在」となって活動します。

 「スパイがその存在を知られるのは、任務に失敗した時—即ち敵に発見された時だけ
 だ。(中略)諸君の未来に待っているものは、真っ黒な孤独だ。孤独と不安。やがて
 自分自身の存在すら疑わしく思えてくる。そこでは、外部に支えられた虚構など、砂
 でできた城のように時間とともに崩れてゆく。」(P27)

 結城のこの言葉の中に、スパイというものの本質が表されていると思いました。
 この作品集は、スパイの活躍を描く以上に、彼らの深い孤独をも描いています。

 「とらわれないこと。しかし、それは同時にこの世界の何ものも信じないこと—愛情
 や憎しみを取るに足りないものとして切り捨て、さらには唯一の心の拠り所さえ裏切
 り、捨て去ることを意味している。」(P271)

 この作品には、続編「ダブル・ジョーカー」があります。
 タイトル作ほか全5編が収録されている、連作小説です。


ダブル・ジョーカー (角川文庫)

ダブル・ジョーカー (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 文庫



 「ダブル・ジョーカー」は、もう一つの諜報部「風機関」との戦いを描いています。
 「殺すな死ぬな」のD機関、「躊躇なく殺せ潔く死ね」の風機関。勝つのはどちらか?

 私的にもっとも興味深かったのが、「棺」です。若かりし日の結城が登場します。
 結城はどのようにして敵地から脱出したのか? どのようにして左手を失ったのか?

 続編も人気が出て、その後シリーズ化され、現在では4巻まで出ているようです。
 また、実写映画化やアニメ化もされれいます。


「ジョーカー・ゲーム」シリーズ【4冊 合本版】 (角川文庫)

「ジョーカー・ゲーム」シリーズ【4冊 合本版】 (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/24
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(どらやきの日)

 4月4日は4が合わさるので「しあわせの日」です。
 「どらやきを食べて幸せになろう」ということで、どらやきの日でもあります。

 「そんなのこじつけじゃないか」などと突っ込まずに、楽しくどらやきを食べたい。
 丸京製菓の「塩もち入りどらやき」がスーパーにあったら、私は必ず買ってしまう。

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