SSブログ

ミドルマーチ1 [19世紀イギリス文学]

 「ミドルマーチ1」 ジョージ・エリオット作 廣野由美子訳 (古典新薬文庫)


 架空の町ミドルマーチに住む2人の男女を軸に、様々な人間模様を描いた作品です。
 1871年刊行です。作者の代表作であり、ヴァージニア・ウルフに激賞されました。


ミドルマーチ1 (光文社古典新訳文庫)

ミドルマーチ1 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 文庫



 ドロシア・ブルックと妹のシーリアは、幼い頃両親を亡くし伯父に育てられました。
 伯父のブルック氏はそこそこ良い家柄で、ふたりは何不自由なく育てられました。

 ドロシアは美しいので、魅力的な青年ジェイムズ・チェッタムが恋していました。
 ところが18歳のドロシアは、45歳の牧師エドワード・カソーボンに惹かれたのです。

 カソーボンは「全神話解読」の執筆に向けて、日々神話の研究に明け暮れています。
 そんな彼がドロシアには、立派な精神で自分を導いてくれるように見えたのです。

 「この方は、高貴な内面生活というものを理解しておられるのだ。この方となら、魂
 の交わりというものが可能かもしれない。」(P47)
 
 つまり、ドロシアは結婚に対して、高い理想(というより幻想)を持っていました。
 そして、カソーボンの求婚を即座に受け入れ、ローマへの新婚旅行に旅立ちました。

 理想的な結婚をしたにもかかわらず、ドロシアもカソーボンも幸せではなく・・・
 ローマのドロシアの宿に、カソーボンの甥ウィル・ラディスローの訪問があり・・・

 というように、このあとの展開が、もうなんとなく読めるような気がします。
 それでいながら、この物語から目が離せません。この先どうなってしまうのやら?

 第一巻は、第1部「ミス・ブルック」と、第2部「老いと若さ」から成っています。
 そしてこの巻は以上のように、カソーボン夫妻を中心として物語が進行しています。

 それと同時に、ミドルマーチにやってきた若き医者リドゲイトの物語も進行します。
 ほか、フェアブラザー牧師一家との交流、市長ヴィンシー氏の娘ロザモンドとの恋。

 さらに、ドロシアの妹シーリアとジェイムズ・チェッタムとの淡い恋や、フレッド
 ・ヴィンシーとメアリ・ガースとの微妙な関係などが、重層的に展開しています。

 ミドルマーチの人々を描くことにより、「人間」とは何かを考察した小説です。
 冒頭を飾る次の言葉が、そのことを象徴しているように思います。

 「人間の歴史とは何か? いろいろな要素が入り混じった人間という得体の知れない
 存在が、さまざまな時の試練を経ていかに振る舞うか?」(P6)

 多くの人々が登場するので、誰が誰なのか分からなくなってしまうこともあります。
 そういうときは栞が役に立ちます。主要登場人物がコメント入りで書いてあるので。

 ちなみに私は、ドロシアとシーリアの伯父アーサー・ブルックが気に入りました。
 ブルック氏は60がらみの愚かな男として描かれますが、いい味を出しているのです。

 「実を言うと、私は結婚の罠に掛かってしまうほど、誰かを愛したことはない。結婚
 というのは罠だからね。」(P87)

 このセリフは、独身を通したブルック氏が言うと、ちょっと滑稽で笑えます。
 ところが、のちの展開を考えると、この言葉は真実を言い当てているので驚きます。

 さて、私はこの作品がジェイン・オースティンの小説に似ていると思いました。
 文章が美しく、ユーモアがあり、先が読めて読みやすい、などの共通点があります。

 さらに、結婚をテーマとしている点でも同じですね。
 この先、ドロシアとカソーボンの結婚は、いったいどうなっていくのでしょうか?

 さいごに。(花博)

 仕事の引き継の忙しい中を縫って、先日の日曜日に、家族で花博に行ってきました。
 色んな色のチューリップに囲まれ、優雅な時間を過ごせたので、心が癒されました。

IMG_0710-2.png

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。