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コンビニ人間 [日本の現代文学]

 「コンビニ人間」 村田沙耶香 (文春文庫)


 コンビニで18年間バイトを続ける、36歳で恋愛経験のない女性を描いた物語です。
 2016年に刊行されて、その年の芥川賞を受賞し、作者を一躍有名にした話題作です。


コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

  • 作者: 村田 沙耶香
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: Kindle版



 古倉恵子は、子供の頃から他人と感覚がズレていて、周囲に馴染めませんでした。
 トラブルを避けるため会話をしなかった古倉を変えたのが、コンビニだったのです。

 古倉は大学1年のとき、スマイルマートのオープニングスタッフとして働きました。
 店のマニュアル通りに動いたとき、初めて世界の正常な部品になれたと感じました。

 「私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確
 かに誕生したのだった。」(P25)

 以後18年間、36歳の現在まで店員を続け、世界の歯車となって回り続けてきました。
 周囲に合わせて笑ったり怒ったりし、なんとか普通の人のように振る舞っています。

 ただし、この年で結婚も就職もしていないことが、なぜおかしいのか分かりません。
 しかし、自分が周りから浮いてしまい異物となっている、と感じることはできます。

 「正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は
 処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。」(P84)

 あるとき、35歳で独身の白羽という、やる気のない新人が入ってきました。
 あっという間にクビになりますが、その後、古倉は白羽と再会して・・・

 サイテー男の白羽がいい味を出しています。こういうクズ野郎が話を面白くします。
 古倉と白羽の会話の場面が実に面白いです。古倉を前に白羽は急に饒舌になります。

 「この世界は、縄文時代と変わってないんですよ。ムラのためにならない人間は削除
 されていく。狩りをしない男に、子供を産まない女。現代社会だ、個人主義だといい
 ながら、ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはム
 ラから追放されるんだ」(P92)

 そういう白羽に、古倉はどのような提案をしたか?
 このときのやり取りが、また実に笑えます。ある意味、似たもの同士ですよね。

 とにかく、めちゃくちゃ面白い小説です。中編なので、あっという間に読めます。
 古倉が自分を「コンビニ人間」だと認識する結末も、良かったです。

 作者の村田沙耶香もまた、小説を書きながらコンビニで働いていたそうです。
 なるほど、だから描写が生き生きしているのかと、納得しました。

 さいごに。(今年もまた桜の季節が)

 年度末から年度初めにかけて、課長職の引き継ぎがあり、めちゃ忙しかったです。
 気が付くといつの間にか、今年も桜の咲く季節がやってきていました。

 18年前、自然に囲まれたこの土地を気に入って、家族でここに移り住みました。
 寝室から桜が楽しめるのですが、今年は開花に気付く余裕もありませんでした。

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