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夜のみだらな鳥1 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「夜のみだらな鳥」 ホセ・ドノソ作 鼓直訳 (集英社版 世界の文学)


 修道院に逃れてきたウンベルトが語る狂気と妄想を、余すところなく描いた作品です。
 作者はラテンアメリカ文学ブーム五人衆の最後のひとりで、本書はその代表作です。

 不思議なことにこの傑作が、いまだに文庫化されていません。いったい、どうして?
 しかも単行本はいずれも絶版。私は「集英社版 世界の文学」を中古で買いました。


夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1984/07/01
  • メディア: 単行本



 話はあちこち飛ぶし、語り手は少しヘンだし、まさにラテンアメリカ文学的作品です。
 木村榮一の「ラテンアメリカ十大小説」によると、筒井康隆はこう述べたそうです。

 「ここはまさに善悪や美醜や聖俗を越えた文学的カーニバルの異空間だ」と。
 この言葉をぴったりだと評したあと、木村榮一はさらにこう続けています。

 「この狂気と妄想の世界に一歩踏み込んだ読者は、戦慄を覚えつつも魔術にかけられた
 ように読み進み、読後に一種表現しがたいカタルシスを覚えることでしょう。」

 私もまた、気持ち悪うーと思いながらも、魔物にとり憑かれたように読み耽りました。
 たとえば作品は冒頭から、次のような不気味なエピソードで始まります。

 当時、月夜には、黄色い雌犬のあとを追って、恐ろしい首が空を飛ぶのが見られた。
 その顔は地主の娘の顔そっくりであり、不吉な鳥チョンチョンの声で歌っている・・・ 

 娘の乳母は魔女だと噂された。犬に変身していた乳母を、作男たちは捕らえて殺した。
 その魔女は娘の九つの穴をふさいで、ある化け物を造り出そうとしていたらしい・・・

 インブンチェという化け物は、どのようなものか?
 その娘が委ねられた修道院こそ、語り手のムディートがいる場所であり・・・

 さて、この物語は、ムディートという唖の男によって語られ(?)ています。
 ムディートは、かつてウンベルトと言い、ドン・ヘロニモの秘書だったようです。

 ヘロニモの妻イネスにもまた、ペータ・ポンセという魔女がついていて・・・
 イネスを身ごもらせるために、ペータ・ポンセはどのようなことをしたのか?

 そして、ヘロニモとイネスの間に誕生したボーイは、どのような子だったか?
 さらに、ヘロニモは我が子ボーイのために、どのようなことを企てたのか?

 小さい活字で、上下二段組みなので、ようやく半分ほどまでしか読めていません。
 それなのに、全く飽きません。ますますこの不気味な本に、のめり込んでいます。

 さいごに。(いくらでも寝てしまう)

 最近仕事がたいへんで、とても疲れます。夜は眠くて眠くて起きていられません。
 本を読みながら、うとうとしてしまうので、22時には寝てしまいます。

 「4時に起きて本を読もう」と思って寝るのですが、目が覚めるのはいつも6時。
 読書時間よりも睡眠時間を優先してしまう自分に、精神的な衰えを感じてしまう。

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