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2020年10月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

 2020年10月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
 データは、出版社やamazonやhontoの、メルマガなどを参考にしています。


・10/5 「入門フリーメイスン全史 偏見と真実」 片桐三郎 (文芸社文庫)
 → フリーメイスンに関する百科全書的書物。単行本は絶版で高値。とても気になる。

・10/10 「ゴシック文学神髄」 東雅夫 (ちくま文庫)
 → 「オトラント綺譚」や「ヴァテック」などが読めるらしい。とても気になる。

・10/15 「日本人は何を考えてきたのか」 齋藤孝 (黄金文庫)
 → 日本語にこだわる著者による、日本思想1300年の分かりやすい解説。買い。

・10/22 「すごい宇宙講義」 多田将 (中公文庫)
 → たとえが分かりやすいと、単行本で評判だった宇宙論入門。とても気になる。

・10/23 「新訳 リア王の悲劇」 シェイクスピア (角川文庫)
 → 話題の河合訳。私は河合訳で、シェイクスピア作品をすべて読みたい。買い。

・10/28 「小説イタリア・ルネサンス(2)フィレンツェ」塩野七生(新潮文庫)
 → 「銀色のフィレンツェ メディチ家殺人事件」の改版か。とても気になる。


◎ 「ジュスチーヌ」復刊!

 9月に岩波文庫から、サドの「ジュスチーヌまたは美徳の不幸」が復刊されました。
 私が以前、気持ち悪くなって投げ出した「悪徳の栄え」と、対を成す作品です。
 「悪徳の栄え」→https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2015-06-02

 1787年にバスティーユ牢獄の中で、わずか15日間で書き上げられたのだそうです。
 様々な権威を否定しているため、フランス革命にも影響を与えたと言われています。

 5年ほど前、「悪徳の栄え」を読んだときには、もうサドは読まないと決めました。
 しかし今、怖いもの見たさから、「ジュスチーヌ」を読んでみたくなりました。

 修道院を出てから悪徳の限りを尽くし、伯爵夫人となった3歳上の姉ジュリエット。
 一方、美徳を守り抜いたがゆえに落ちぶれて、数々の辱めを受けるジュスチーヌ・・・


◎ 中田敦彦のユーチューブ大学

 中田敦彦は、オリエンタルラジオというお笑いコンビで、結構売れていたそうです。
 しかし私は彼を、「中田敦彦のユーチューブ大学」で知りました。

 これが、なかなか面白いのです。芸人さんだから、とにかく話がうまい。
 時々理解しがたいジェスチャーが入るけど、全体的にはテンポが良くて飽きないです。

 最近面白かったのは、「書店業界の危機」です。書店が抱えている問題が分かります。
 次のような疑問に、明確に答えてくれています。とてもすっきりしました。

 どうして書店は減ったのか? どうして書店はヘイト本を置くのか?
 どうして出版社は売れない新刊本を出すのか? どうして本屋大賞はできたのか?

 ネタ本となっている「私は本屋が好きでした」を、読んでみたくなりました。

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏

  • 作者: 永江朗
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




◎ 紹介したのを後悔している本

 すでに投稿した記事が、1200を超えています。
 実は、書いたことを後悔している記事も、結構多くなってきました。

 たとえば、「アミ 小さな宇宙人」。記事の中で、さんざんけなしています。
 ならば、書かない方が良かった。しかし、削除するのももったいない気がします。

 ならば、「無しにしたい記事」というカテゴリーを、作ったら面白いのではないか。
 さっそく、そのリストを作りたいと思います。


◎ さいごに。(ものまね番組がキライだ)

 ものまね番組で、妻と娘が盛り上がれば盛り上がるほど、私はみじめになります。
 というのも、誰のまねなのか分からないため。そもそも芸能人を全然知らないので。

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蜘蛛女のキス [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「蜘蛛女のキス」 マヌエル・プイグ作 野谷文昭訳 (集英社文庫)


 同じ監房にいるゲイの男と社会主義活動家の、信頼関係と悲劇を描いた小説です。
 ほとんどが2人の対話で書かれています。映画やミュージカルにもなりました。


蜘蛛女のキス (集英社文庫)

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/05/20
  • メディア: 文庫



 冒頭、男女の会話で始まります。女が話しているのは、映画のストーリーです。
 2人は、恋人同士なのだろうか? 場所は男の部屋だろうか?

 しかし、どこか違和感がある、と考えていると、いきなり不意を打たれました。
 女だと思っていたが、ゲイだった・・・そして、場所は監房の中だった・・・

 未成年者への性的誘惑で懲役を食らったモリーナは、オネエ言葉で話し続けます。
 やがて彼の思いやりは、社会主義活動家のヴァレンティンに通じていきます。

 ところが、モリーナがヴァレンティンの気を引くのには、ある目的があって・・・
 しかし、モリーナのヴァレンティンへの思いは、純粋なものになっていて・・・

 この小説の感動は、なんといってもモリーナの切ない思いにあります。
 そして、あの悲劇的な結末! 涙なしには読めません。

 この小説は、「ラテンアメリカ十大小説」で、9番目に取り上げられています。
 そして木村榮一は、次のように述べています。

 モリーナを警察は手先に使い、活動家は連絡係として利用し、死なせてしまった。
 ただモリーナだけが、純粋にヴァレンティンへの愛のためだけに生きた、と。

 ところがそれを台無しにしてしまうシーンがあります。監房の中の男同士の・・・
 このシーンのおかげで、所長の次の言葉が、私の頭に焼き付いてしまいました。

 「モリーナのような人間がどういう行動に出るかを予想するのは困難です、
 結局のところは変態ですから。」(P378)

 一方、ヴァレンティンはかっこいいです。彼もまた切ない。
 モリーナに、「男らしさとは何か」と聞かれて、こう答えています。

 「妥協しないこと、人にも、体制にも、金にも。まだ足りない、それは・・・
 自分のそばにいる人間に劣等感を持たせないこと、自分と一緒にいる人間に居
 心地の悪さを感じさせないことだ」(P103)

 この小説はベストセラーとなりましたが、映画もまた話題になりました。
 1985年にアメリカとブラジルで合作され映画は、数々の賞を受賞しました。


蜘蛛女のキス <HDニューマスター・スペシャルエディション> Blu-ray(特典なし)

蜘蛛女のキス <HDニューマスター・スペシャルエディション> Blu-ray(特典なし)

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: Blu-ray



 さいごに。(半沢直樹、明日最終回)

 「半沢直樹」が、明日最終回となります。政府との戦いは、いったいどうなる?
 特に「3人まとめて1000倍返し」をどのように達成するか、とても気になります。

 余談ですが、箕部幹事長のモデルは、一般に小沢一郎氏だと言われています。
 しかし私には、箕部幹事長の顔が、二階幹事長と重なって見えちゃうのですが・・・

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ローマ人の物語1ローマは一日にして成らず [日本の現代文学]

 「ローマ人の物語1・2 ローマは一日にして成らず」 塩野七生 (新潮文庫)


 ローマ建国から西ローマ帝国滅亡まで、1000年以上の興亡を描いた歴史小説です。
 1992年から毎年1巻ずつ出されました。全15巻の大作です。文庫は全43巻です。


ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

  • 作者: 七生, 塩野
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/06/01
  • メディア: 文庫



ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) (新潮文庫)

  • 作者: 七生, 塩野
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/06/01
  • メディア: 文庫



 第1巻(文庫本第1巻~第2巻)は、「ローマは一日にして成らず」です。
 ローマ建国からポエニ戦争の直前までの、500年ほどの期間を扱っています。

 第一章「ローマ誕生」では、ローマ建国から七代目の王までを描いています。
 初代ロムルス、ザビーニの女たち、七代の王たち、ユニウス・ブルータス・・・

 第二章「共和政ローマ」では、イタリア半島を統一するまでを描いています。
 プブリコラ、リキニウス法、ケルト族のローマ占領、サムニウム族、ピュロス・・・

 文庫本2冊、400ページほどに、初期ローマの500年の歴史が詰め込まれています。
 記述内容が幅広いので、当然ながら、面白い部分もあれば、退屈な部分もあります。 

 退屈なのは、たとえば政治や法律について、詳細に語っている部分です。
 執政官、護民官、元老院、市民集会、ラテ同盟、農地法、リキニウス法・・・

 面白いのは、やはり大きな変革や、大きな戦闘の場面です。
 ザビーニ族、ルクレツィア、ブルータス、蛮族のローマ占領、ピュロス王・・・

 特に、ローマとピュロスとの戦いは、全体のクライマックスです。
 ギリシア式ファランクス対ローマ式レギオン。ピュロスは象をいかに使ったか?

 また、ピュロスの講和の提案を、ローマが紳士的にはねつける場面は痺れました。
 ピュロスもローマの元老院も、お互いに敬意をもっていたことがよく分かります。

 ピュロスはローマに、講和締結の前祝いとして、600人の捕虜を贈りました。
 しかしローマは講和を受け入れないことにして、600人をそのまま送り返し・・・

 ピュロスの侍医がピュロス毒殺を申し出ると、元老院はそれを相手に伝えました。
 ピュロスは感謝して再び600人を返すと、ローマも捕えていたギリシア兵を・・・

 さて、時々本文中に、ドキッとする言葉を見つけます。 
 たとえば次の文は、今の日本のことを言っているように思えて仕方がありません。

 「ただ、自ら血を流してまで祖国を守った経験のないターラント人は、存亡の危機
 が迫っているのに、それを感知する能力も失っていたのだった。」(P181)

 自らの軍隊を持たない国が、長く栄えることはありえません。
 それは歴史的に見て、あまりにはっきりとした事実ですが、日本は未だに・・・

 「ひとまずの結び」において、塩野が述べていることは、とても興味深いです。
 たとえば、ローマについて次のように分析しています。

 「古代のローマ人が後世の人々に遺した真の遺産とは、広大な帝国でもなく、二千
 年経ってもまだ立っている遺跡でもなく、宗教が異なろうと人種や肌の色がちがお
 うと同化してしまった、彼らの開放性ではなかったか。」(P209)

 さいごに。(見に来るなと言う理由)

 娘はいつも、「陸上の練習を見に来ないで」と言っていますが・・・
 先日、自分の練習のために競技場に行ったら、偶然娘の中学校も練習していました。

 彼らは4人ずつ走っていたのですが、娘だけ他の3人から20mほど遅れていました。
 なるほど、そのような姿を見せたくなかったのかもしれません。

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ラモーの甥 [18世紀文学]

 「ラモーの甥」 ディドロ作 本田喜代治・平岡昇訳 (岩波文庫)


 世の全てを嘲笑し尽くす、ラモーの甥との対話を描いた、風刺文学の傑作です。
 初版は1940年。改版されたが読みにくい。2016年に復刊され、今また絶版です。


ラモーの甥 (岩波文庫)

ラモーの甥 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/08/29
  • メディア: 文庫



 「空が晴れていようと、いやな天気だろうと、夕方の五時頃パレ・ロワイヤルの公園
 へ散歩に出かけるのがわたしの習慣だ。いつもひとりぼっちで、ダルジャンソンのベ
 ンチに腰をかけて、ぼんやり考えこんでいる男がいたら、それはわたしだ。」

 このような魅力的な文章で、「ラモーの甥」は始まります。
 今でもそのベンチに行けば、物思いにふけるディドロに会えるような気がします。

 「わたし」(ディドロ?)は、あるときカフェで、ある男に話しかけられました。
 その男こそラモーの甥。有名な大作曲家ラモーを叔父に持つ男だったのです。

 ところが、彼自身は平凡な音楽家で、旧体制に寄生して生きるちっぽけな存在です。
 そのくせ旧体制についてペラペラと偉そうに論じ、批判し、嘲笑しているのです。

 たとえば彼は、時間が経つごとに、誰でも同じように蓄えがたまるのだと言います。 
 だから、自分も金持ちなのだと言うけど、では、いったい何がたまると言うのか?

 「肝心な点は、たやすく、自由に、愉快に、どっさりと、毎晩御不浄に行くことで
 す。『おお貴重な糞便!』これこそはどんな身分にも起こる生活の偉大な結果です。」
 (P37)

 こういうたわごとを、おもしろいと思うか、アホかと思うかは、微妙なところです。
 ただ、18世紀の革命前の時期、このような小説が珍しかったことだけは事実です。

 こういう平凡な小市民に大いに語らせたところに、この作品の値打ちがあります。
 時代を先取りしたのです。革命で活躍するのが、こういう名もない連中ですから。

 「この世の中にはなに一つ安定したものはありません。今日は車輪の上にいるかと
 思えば、明日は車輪の下にいる。数々のいやな事態にわれわれはひき廻され、あげ
 くはうんと悪いほうへ連れて行かれるんでさ。」(P148)

 「わしはしょっちゅう食う物がないなんてのは、良い世の中じゃないと思いますよ。
 なんといういやな世の中の仕組みでしょう!」(P150)

 ところで私は、この作品を、書かれた時期を考慮して、18世紀文学に入れました。
 しかし、この作品が日の目を見たのは、19世紀に入ってからなのだそうです。

 どうやらディドロはスキャンダルを恐れて、生前この作品を秘密にしていたらしい。
 たまたまこの作品の存在を知ったゲーテが、ドイツで訳出したのだそうです。

 ちなみに、ラモーの甥は実在の人物で、叔父の大作曲家ラモーも実在していました。
 今ではほとんど忘れられた存在ですが、当時は音楽会のスターだったそうです。

 さいごに。(解散総選挙だって?)

 菅内閣発足。と同時に、人々の関心は、解散総選挙に向かっているようですが・・・
 コロナ禍の大事な時期に、政治ごっこをやるほど、浅はかではないと信じています。

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夜のみだらな鳥2 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「夜のみだらな鳥」 ホセ・ドノソ作 鼓直訳 (集英社版 世界の文学)


 修道院に逃れてきたウンベルトが語る、狂気と妄想を余すところなく描いた作品です。
 世界の奇書とも呼ばれるこの傑作が、文庫化されていません。単行本も絶版状態です。


夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1984/07/01
  • メディア: 単行本



 後半に入ってさらに、目をそむけたくなるようなおぞましい出来事が語られます。
 それが怖いもの見たさの心理をあおるのか、逆に本から目が離せなくなりました。

 ボーイが誕生する辺りから、おどろおどろしさの度合いはどんどん増していきます。
 そして、ウンベルトが病に倒れたとき、彼はいったい何をされたか?・・・

 後半に入って、語り手ウンベルトの話は、加速度的に混乱していきます。
 頭の中に他人が入り込んでいるため、彼の言葉は色んな人の思考を反映しています。

 「そのうち教えてあげるわ。そうね、あんたがいま見ているものの裏っかわで起きて
 る、もっともっとややこしいことよ。時間やいろんな物の影も、そこではみんな歪ん
 でしまうのよ。」(P234)

 どうやら、ウンベルトの頭の中では、時間や空間が歪んでしまっているらしいです。
 いろいろと矛盾することが、当たり前のように書かれているため、面くらいます。

 最初、ウンベルトは教員の子とされていたが、のちに、イリスの子になっています。
 しかもそのイリスを孕ませたのも、どうやらウンベルトのようなのです。

 正直に言って、私にはほとんど理解できませんでした。
 理解できないものは、楽しむこともできないし、味わうこともできません。

 確かにこの作品は「世界の奇書」かもしれません。
 実際、読んでいる間は、魔術にかけられたみたいにのめりこみました。

 ところが、読み終わってみると、カタルシスはなく、もやもやだけが残りました。
 これは優れた文学でしょうか?

 人を煙に巻くようなことばかり述べられていて、真実がいっこうに分かりません。
 物語と関係のないたわごとばかりが、無意味に書かれているように思えました。

 もう少し無駄な部分を省いて、物語を整理したなら、分量は半分になるでしょう。
 そしたらもっと普遍的な作品となり、今頃は文庫として残っていたのではないか?

 さて、これで私はラテンアメリカ文学五人衆の代表作を、ほぼ読み終わりました。
 そこで、20世紀ラテンアメリカ文学の取り組みについて、思うところがあります。

 その多くに、読者を南米の密林に招いて迷子にさせるようなところがありました。
 わざと分かりにくく語って人を混乱させ、その混乱を味わわせるという手法です。

 これは、文学が行き詰ったときに、苦し紛れに編み出された手法だと思います。
 最初こそ斬新さが目を引きますが、そのうち飽きられ、振り返られなくなります。

 こうした手法(遊び?)は、決して文学の本流を行くものではありません。
 その証拠に、一時世界を席巻した作品も、多くはブーム後に廃れてしまいました。

 そういう意味で、ラテンアメリカ文学ブームは、あだ花だったと思っています。 
 もちろん例外として、「百年の孤独」のような絶対的な名作もありますが。

 と、また勝手なことを書いてしまいました。南米文学ファンの方々、ご容赦を。
 次は、「蜘蛛女のキス」や「精霊の家」などを読んでいきたいと思っています。

 さいごに。(聴覚低下)

 人間ドックでの聴力検査が、二年連続でひっかかりました。
 ヘッドホンをしても、なかなか検査が始まらないので、変だと思ったら・・・

 聞こえてなかったんですね。検査はちゃんと始まっていたのです。
 耳鼻科に行く時間はないので、家で耳に効くツボのマッサージをしています。

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世界文学の流れをざっくりとつかむ26 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第六章≫ ルネサンス期から十七世紀の文学

 6 フランス古典主義文学

 ブルボン王朝の二代目のルイ13世は、宰相リシュリューのもとで絶対王政への道を歩み始めました。1635年にリシュリューのもとに成立したアカデミー・フランセーズは、フランス語を純化し統一することで、フランスをまとめようとしました。1661年にルイ14世が即位すると、宰相マザランのもとで絶対王政がさらに強化されました。

 絶対王政が確立した17世紀は、文学史的には古典主義の時代と言われています。全体を統制して秩序を維持する絶対王政の思想が、三一致の法則など規則への服従を強いる古典主義と、相性が良かったためです。三一致の法則とは、同じ時間、同じ場所、一貫した筋と、三つのことを一致させる決まりです。そして、コルネイユ、ラシーヌ、モリエールの、古典劇三大作家が活躍しました。

 コルネイユは、男性的な作風の劇作家です。その登場人物の多くは、強い意志と理性を持つため、「あるべき人間を描く」と評されました。1637年に上演した悲劇「ル・シッド」が記録的なヒットとなり、一躍名声を得ました。これは、中世スペインの騎士エル・シッドの伝説に基づく劇でした。厳密な意味で三一致の法則を守らなかったため、論争が起きたことでも有名です。「ル・シッド」「オラース」「シンナ」「ポリウクト」の四大悲劇のほか、喜劇「嘘つき男」なども成功し、1640年代には絶大な人気を誇るようになっていました。

 ラシーヌは、女性的な作風の悲劇作家です。その登場人物の多くは、決断力に欠けて優柔不断なため、「あるがままの人間を描く」と評されました。古代ギリシア・ローマの出来事を題材にとった数々の悲劇で有名です。1667年に上演された「アンドロマック」や、1677年に上演された「フェードル」が代表作です。

 モリエールは俳優兼喜劇作家です。その特徴は、鋭い風刺を利かせているところです。ラシーヌとほぼ同時期に活躍し、1664年「タルチュフ」、1665年「ドン・ジュアン」、1666年「人間嫌い」、1668年「守銭奴」、1670年「町人貴族」、1673年「病は気から」など、数多くの傑作を残しました。モリエールは、演劇の基本は観客に喜ばれることだと考え、面白くするためには、「ドン・ジュアン」のように三一致の法則を無視する場合もありました。

 17世紀には、貴族の夫人らによって、サロンという社交場が開設されました。そこでは洗練された物腰が好まれ、知的な交流が生まれ、文学作品なども生み出されました。1678年には、「クレーヴの奥方」が、かつてサロンの花形だったラファイエット夫人によって書かれました。これは、クレーヴ夫人とヌムール公のかなわぬ恋を描き、「恋愛心理小説の祖」「近代小説の祖」として、文学史上に燦然と輝いています。

 次回は、東洋の文学の流れについて述べたいと思います。

 さいごに。(娘が菅さんを応援する理由)

 うちの娘は菅氏を応援しています。というのも、「かわいいから」だそうです。
 そうかなあ。出馬の仕方からして、実にしたたかな人のように思えるのだけど・・・ 

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ポポル・ヴフ [古代文学]

 「マヤ神話 ポポル・ヴフ」 レシーノス著 林家永吉訳 (中公文庫)


 グアテマラのキチェ族に伝わっていたマヤの神話が、16世紀に記録されたものです。
 中公文庫版には、所々に美しい挿絵が入っています。新版はカラーの口絵入りです。


マヤ神話 ポポル・ヴフ (中公文庫)

マヤ神話 ポポル・ヴフ (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/04/21
  • メディア: 文庫



 フン・フンアフブーとその弟に、地下の世界のシバルバーから、使者が来ました。
 二人はシバルバーで殺され、フン・フンアフブーの首は一本の木につるされました。

 すると一度も実らなかったその木に実が成りました。フンの首が実となったのです。
 そしてその実は、それを見に来たイシュキックという少女に、語りかけました。

 「この木にいっぱいなっている丸いものは、みなしゃれこうべなのだよ。」
 少女が差し出した左手に、しゃれこうべが唾を吐くと、少女は身ごもって・・・

 こうして生まれたのが、双子の英雄、フンアフブーとイシュバランケーです。
 二人がシバルバーで、父の仇を殺す場面は、ちょっと喜劇的で面白いです。

 この二人が、死んだり生き返ったりしている場面に、マヤ特有の死生観があります。
 次のような残酷な風習も、マヤ特有の死生観から生まれるものかもしれません。

 「トヒールは、彼の眼の前で、あらゆる部族の者たちの胸と腋の下を切り開き、心
 臓をひっぱり出して、供犠(いけにえ)にせよと言っていたのであった。」(P225)

 「捕まえてきた者は、トヒールとアヴォリシュの前ですぐ供犠にされた。
 そして彼らは、その血を道に撒き流し、首をひとつずつ道に並べた。」(P244)

 長い間口承されてきたマヤ神話「ポポル・ヴフ」は、1550年頃に文字化されました。
 スペインの宣教師からローマ字を学んだ誰かが、キチェ語で書き留めたようです。

 150年後にそれを発見した神父が、スペイン語訳したものの、埋もれてしまいました。
 紆余曲折があり、レシーノスがそれを再発見したのは、さらに250年後のことでした。

 現在「ポポル・ヴフ」を読めるのは、しかも文庫本で読めるのは、まさに奇跡です。
 原住民の神話の多くは、宗教に悪影響を及ぼすものとされ、焼き捨てられたからです。

 文庫本ではないけど、マヤとアステカに関するイラスト入りの興味深い本があります。
 芝崎みゆきの「古代マヤ・アステカ不可思議大全」「遺跡へっぴり紀行」の二冊です。 


古代マヤ・アステカ不可思議大全

古代マヤ・アステカ不可思議大全

  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



マヤ・アステカ遺跡へっぴり紀行 ――メキシコ・グアテマラ・ホンジュラス・ベリーズの旅

マヤ・アステカ遺跡へっぴり紀行 ――メキシコ・グアテマラ・ホンジュラス・ベリーズの旅

  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 さいごに。(シャインマスカット)

 今人気のシャインマスカットを食べました。
 娘が、誕生日にはケーキよりもシャインマスカットを食べたいと言ったので。

 たしかにおいしかったです。それ以上に、粒が宝石のようにきれいでした。
 でも、値段は高すぎですよ。私はケーキのほうがよかったなあ。

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図説 金枝篇1 [哲学・歴史・芸術]

 「図説 金枝篇(上)」 J・G・フレーザー著 吉岡晶子訳 (講談社学術文庫)


 イタリアのネミの祭司が、殺される宿命にあったのはなぜかを、追求した著書です。
 全13巻の大著「金枝篇」を、図で補いながら、読みやすく編集した簡約版です。


図説 金枝篇(上) (講談社学術文庫)

図説 金枝篇(上) (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/04/11
  • メディア: 文庫



 ネミの聖所には一本の樹があり、その枝は一本も折ってはならないとされていました。
 ただし、逃亡奴隷が一本折ったときには、祭司と一騎打ちをすることを許されました。

 戦いで相手の祭司を殺せば、逃亡奴隷は祭司に代わって「森の王」となるのです。
 運命を決するこの枝こそ、アイネイアスが冥界に旅立つときに手折った金枝なのです。

 ネミの祭司は、なぜ殺されなければならないのか?
 金枝を折ることには、どのような意味があるのか?

 これらの謎を解くため、フレーザーの推論が始まり、十三巻に及ぶ大著ができました。
 壮大さと難解さで知られるこの大著を、全て読むことはほとんど不可能でしょう。

 ここで紹介した「図説 金枝篇」は、分かりやすいので比較的すらすらと読めました。
 しかも原著の雰囲気や味わいはそのままです。フレーザーの入門者にはオススメです。

 最も面白かったのは、「聖なる結婚」で取り上げられている、いくつかの伝承です。
 神々と結婚することで、人間界に豊穣をもたらすことが約束されると言うのです。

 バビロニアの聖所には豪華な寝台があり、選ばれた乙女がそこに入って横たわり・・・
 その乙女は決して男と交われない代わりに、神の妃として皆から敬われ・・・

 ペルーのある先住民は、人型の石像を神とし、それを美しい乙女と結婚させ・・・
 その乙女は決して男と交われない代わりに、神として最高の敬意を払われ・・・

 そういえば、伊勢神宮に使える斎宮や、賀茂神社に使える斎院も、似ている例です。
 どちらも神々と結婚し、神々に仕え、引退後も生涯独身で過ごし・・・

 第三部「死にゆく神」に入ると、ネミの祭司の謎が、少しずつ明かされていきます。
 王を殺す習慣は、聖なる霊を、衰弱した体から活力ある後継者へ移すためだと言う。

 ディンカ族の雨乞い師は、自分が衰えたと感じたら、墓穴を掘って横たわり・・・
 インドの村の王は、12年経った後の祭で、自ら身体の部分を小刀で切り取り・・・

 フレーザー入門で、もうひとつのオススメは、ちくま文庫の「初版 金枝篇」です。
 全2巻にまとめられていて、しかも訳が比較的分かりやすいです。

 さいごに。(娘は今年も1m30)

 昨年、走高跳で大会デビューし、いきなり1m30をクリアして驚かせた我が娘。
 1年たって中2になった今も、記録は1m30のままでした。高跳びは難しい!

 しかし、それでも地区で8位でした。賞状をもらって、嬉しそうでした。
 しかも、県大会進出! 10月の県大会では、1m35を跳んでほしい・・・

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あしながおじさん [20世紀アメリカ文学]

 「あしながおじさん」 ジーン・ウェブスター作 岩本正恵訳 (新潮文庫)


 孤児院から大学生となったジュディが、支援者あしながおじさんに送った書簡集です。
 作者は、マーク・トウェインの姪の娘だそうです。新潮文庫版は2017年の新訳です。


あしながおじさん (新潮文庫)

あしながおじさん (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/05/27
  • メディア: 文庫



 孤児院を出て高校を卒業したジュディは、特別に大学に進学することを許されました。
 孤児院の評議員のひとりが、作家になる勉強をさせるためにお金を出すと言うのです。

 ジュディは一瞬垣間見た影から、支援者をあしながおじさんと呼ぶようになりました。
 その秋から大学4年間と数か月、ジュディはあしながおじさんに手紙を書き続けます。

 あるとき、同室の友人ジュリアのもとに、叔父のジャービスさんが訪れました。
 ジュディは、ジャービスさんといっしょに、短いながらも素敵な時間を過ごし・・・

 物語の魅力は、ジュディの手紙の生き生きした内容です。まったく飾っていません。
 時に喜び、時に悲しみ、おじさんを大好きだと言ったり、大嫌いだと言ったり・・・

 「わたしはほんとうにひとりぼっちでーー壁を背にして世の中と戦っていますーーそ
 のことを考えると、息が詰まりそうになります。けれども、それは頭から追い出して、
 ふりを続けているのです。おじさま、どうぞご理解ください。わたしは必要以上のお
 金は受け取れません。」(P126)

 こんなふうに、ひょいと本心が垣間見えるところもまた、味わい深いです。
 次のような言葉も、なかなか味わいがあります。

 「おじさま、わたしはしあわせの真の秘密を発見しました。それは、今を生きるとい
 うことです。いつまでも過去を後悔しつづけたり、未来に期待しつづけるのではなく、
 今のまさにこの瞬間を可能なかぎり活かすのです。」(P184)

 「たいていの人は、生きていません。競争しているだけです。」(P184)

 ところが、わたしは長い間、名作と言われたこの小説を、敬遠していました。
 「シンデレラストーリー」というより、「男の願望の作品だ」と言われるからです。

 いったいあしながおじさんは、いつからジュディを好きになっていたのでしょうか。
 好きになったから、大学入学を支援し、4年以上にわたってこっそり見守っていた?

 無垢で純情な少女を、陰で観察しながら、自分の好みの女性に育てていく・・・
 これは慈善事業というより、ヘンタイ趣味に近いですよ。

 あしながおじさんの正体を知ったとき、ジュディはどのように思ったのでしょうか?
 本当に、素直に喜んだのでしょうか? どこか気持ち悪く思わなかったでしょうか?

 さて、サリーを主人公にした「続あしながおじさん」も、新潮文庫から出ています。
 こちらも、たいへん読みやすく、評価の高い作品です。


続あしながおじさん(新潮文庫)

続あしながおじさん(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/11/24
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(「燃えよ剣」読み終わる)

 先日娘が、司馬遼太郎の「燃えよ剣」上下巻を、読み終わりました。
 学校の朝読書時間を中心に、半年ほどかけて少しずつ読み進めていたようです。

 長編小説を読み通したのは初めてです。読書の楽しみを知ってくれると嬉しい。
 ちなみに私は「燃えよ剣」を読んでいないので、感想の交換ができていません。

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夜のみだらな鳥1 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「夜のみだらな鳥」 ホセ・ドノソ作 鼓直訳 (集英社版 世界の文学)


 修道院に逃れてきたウンベルトが語る狂気と妄想を、余すところなく描いた作品です。
 作者はラテンアメリカ文学ブーム五人衆の最後のひとりで、本書はその代表作です。

 不思議なことにこの傑作が、いまだに文庫化されていません。いったい、どうして?
 しかも単行本はいずれも絶版。私は「集英社版 世界の文学」を中古で買いました。


夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1984/07/01
  • メディア: 単行本



 話はあちこち飛ぶし、語り手は少しヘンだし、まさにラテンアメリカ文学的作品です。
 木村榮一の「ラテンアメリカ十大小説」によると、筒井康隆はこう述べたそうです。

 「ここはまさに善悪や美醜や聖俗を越えた文学的カーニバルの異空間だ」と。
 この言葉をぴったりだと評したあと、木村榮一はさらにこう続けています。

 「この狂気と妄想の世界に一歩踏み込んだ読者は、戦慄を覚えつつも魔術にかけられた
 ように読み進み、読後に一種表現しがたいカタルシスを覚えることでしょう。」

 私もまた、気持ち悪うーと思いながらも、魔物にとり憑かれたように読み耽りました。
 たとえば作品は冒頭から、次のような不気味なエピソードで始まります。

 当時、月夜には、黄色い雌犬のあとを追って、恐ろしい首が空を飛ぶのが見られた。
 その顔は地主の娘の顔そっくりであり、不吉な鳥チョンチョンの声で歌っている・・・ 

 娘の乳母は魔女だと噂された。犬に変身していた乳母を、作男たちは捕らえて殺した。
 その魔女は娘の九つの穴をふさいで、ある化け物を造り出そうとしていたらしい・・・

 インブンチェという化け物は、どのようなものか?
 その娘が委ねられた修道院こそ、語り手のムディートがいる場所であり・・・

 さて、この物語は、ムディートという唖の男によって語られ(?)ています。
 ムディートは、かつてウンベルトと言い、ドン・ヘロニモの秘書だったようです。

 ヘロニモの妻イネスにもまた、ペータ・ポンセという魔女がついていて・・・
 イネスを身ごもらせるために、ペータ・ポンセはどのようなことをしたのか?

 そして、ヘロニモとイネスの間に誕生したボーイは、どのような子だったか?
 さらに、ヘロニモは我が子ボーイのために、どのようなことを企てたのか?

 小さい活字で、上下二段組みなので、ようやく半分ほどまでしか読めていません。
 それなのに、全く飽きません。ますますこの不気味な本に、のめり込んでいます。

 さいごに。(いくらでも寝てしまう)

 最近仕事がたいへんで、とても疲れます。夜は眠くて眠くて起きていられません。
 本を読みながら、うとうとしてしまうので、22時には寝てしまいます。

 「4時に起きて本を読もう」と思って寝るのですが、目が覚めるのはいつも6時。
 読書時間よりも睡眠時間を優先してしまう自分に、精神的な衰えを感じてしまう。

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