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獣の奏者Ⅰ闘蛇編 [日本の現代文学]

 「獣の奏者Ⅰ闘蛇編」 上橋菜穂子 (講談社文庫)


 霧の民の血を引く天涯孤独の少女エリンと、闘蛇や王獣などの獣たちとの物語です。
 2006年に「闘蛇編」「王獣編」が出て、2009年に「探求編」「完結編」が出ました。


獣の奏者 1-4 I-IV 完結セット (講談社文庫)

獣の奏者 1-4 I-IV 完結セット (講談社文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー:
  • メディア: 文庫



 ソヨンは、霧の民の掟に背いて大公領の男と結婚し、10年前にエリンを生みました。
 今、世話していた最強の「闘蛇」全てが死んだ罪で、処刑されることとなりました。

 娘のエリンは、闘蛇に食い殺される母を助けるため、闘蛇の群れの中に入りました。
 しかし、母は掟破りの「操者の技」を使って、エリンを闘蛇に乗せて逃がしました。

 真王領に流れ着いたエリンは、心優しい老人ジョウンに助けられ、育てられました。
 元教導師長のジョウンから、さまざまな知識や竪琴を学び、幸せに過ごしました。

 ある日、崖から落ちたジョウンを助けたとき、エリンは「王獣」の親子を見ました。
 それは、オオカミのような顔を持つ巨大な鳥で、「闘蛇」を餌食とする聖獣でした。

 エリンは、14歳のときにカザルム王獣保護場に入舎し、獣の医術師を目指しました。
 そこで、傷ついた王獣リオンと出会い、心を込めて世話しているうちに・・・

 この物語のテーマは、「闘蛇」「王獣」など獣と人間との関わり方にあるようです。
 特に、入舎試験のエリンの作文に、そのことがよく表れています。

 「生き物であれ、命なきものであれ、この世に在るものが、なぜ、そのように在るの
 か、自分は不思議でならない。(中略)自分も含め、生き物は、なぜ、このように在
 るのかを知りたい。」(P277)

 また、エリンが養蜂を通して抱いた、生物の世界のイメージも、印象に残りました。
 すべての生き物の命はどれも等しく、暗闇に浮かぶ一つの光の点のようなもの・・・

 「エリンはときおり、自分が小さな光の点になって、広大な星空の中に、ぽつんと浮
 かんでいるような心地になることがあった。——人も獣も虫も、あらゆるものが小さ
 な光の点となって、等しく闇の中に輝いているような、そんなものとして、この世を
 感じることが。」(P253)

 ところで、舞台となっている国はリョザ神王国で、真王という女王が治めています。
 真王の王祖は、はるか昔に神々の山脈の向こうから、王獣を従えて降臨したのです。

 しかし、四代目の王が隣国から攻められた際、「闘蛇の笛」を臣下に与えました。
 闘蛇で敵国を倒した臣下は、大公の称を得て、他の土地を治めるようになりました。

 これ以後、行政を司る真王の真王領と、軍事を司る大公の大公領に分かれました。
 そして、大公領の中には、真王の命を狙う「血と穢れ」のような集団も現れて・・・

 というように、途中から人間の権力闘争も絡まり、物語を面白くしています。
 そして、人間の最大の武器が王獣や闘蛇などの生物である点が、実に興味深いです。

 さらに、主人公エリンの背後には「霧の民」(戒めを守る者)という謎があります。
 このあと、エリンの運命はいかに? 「Ⅱ王獣編」も楽しみです。

 さいごに。(不毛な喧嘩)

 米大統領選で、私はトランプさんを応援しています。
 理由は、前の治世で戦争がなかったから。バイデンさんになって世は乱れました。

 しかし、妻はトランプ嫌いなので、米大統領選の話になると喧嘩になるのです。
 実にバカバカしい。投票権もない他の国のことで、わが家が戦争になるなんて。

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